原発を再開する条件:もっとも危険な情報を伝えること | お手伝いさんたちのブログ

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中部大学 武田邦彦先生のブログの中で、音声収録のみのものをテキスト化して掲載しています。
テキスト化及び掲載にあたっては先生から許可を頂いています。

原発を再開する条件:もっとも危険な情報を伝えること (5/28)


なぜ、国民の受信料をとって中立的な放送をしているはずのNHKが「福島3号機の爆発映像」を徹底的に隠したのか? この問題が解決しないと原発再開は出来ません。民放はスポンサーとの関係がありますが、NHKは国民がスポンサーです。そのNHKが「最も危険なこと」は伝えないということになると、私たちは別の手段を普段から用意しておかなければならないからです。大晦日の紅白歌合戦を聞かなくても死ぬことはありませんが、原発の爆発を知らなければ家族は危機に陥ります。

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2011年の4月頃から、私はNHKに限らず日本の報道が3号機の爆発映像を流さないことに気がつきましたが、NHKとBBCなどが共同製作した国際映像でも、NHKだけが3号機の爆発の場面をカットして他の映像に切り替えています。



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これはNHKが放映した国際映像の表紙ですが、これを見ると国際的な協力のもとで映像を作り、それをNHKを始めイギリス(BBC)などで放映したように見えます。確かに全体の構成はほぼ同じですが、NHKが「日本国民には見せてはいけない」と判断したと思われる部分は別の映像に差し替えられています。この後はBBCの放送とNHKの画面を比較しながら話を進めます。



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(パソコンによっては順番が逆になったりします。自衛隊の指揮官の映像の下に英語の字幕がついている方がBBC、ついていない方がNHKです。)



福島原発で決死の作業をしていた自衛隊は、3号機の爆発に遭遇します。その時の状態を自衛官が述懐している場面ですが、ここまではほぼ同じ画像を使っています。自衛官は、3号機の爆発がかなり激しかったこと、上から瓦礫が落ちてきたことなどを話し、BBCの画像では爆発の映像が、NHKの画像ではその部分がカットされて自衛隊の撮影の画像が差し込まれていました。



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(これも左右が逆になることがあります。) 



爆発の映像がこのように加工されているのは、NHKの内部や報道関係者でこの3号機の映像を「日本国民には知らせない」という決定があったものと考えられます。またBBC、破壊された後の映像がNHKで、この部分だけ国際映像ではないので、NHKはその断りとして「撮影:自衛隊(JTF東北)」と入れたのでしょう。 福島中央テレビの映像という話もあり、著作権の問題(本当は命に関係するから無関係ですが)かも知れません。



3号機はプルトニウムの燃料をつかっていますから、もしかするとこの映像を詳しく解析するとプルトニウムが飛散したのがばれるということかも知れません。でも日本国は日本国民のものです。



原発再開にあたり、また同じように爆発映像など「肝心な映像」が日本で報道されないのかはとても重要で、事故の映像に対して著作権などが有効なら、原発の運転は出来ないと考えられます。災害においてどの程度の危険が迫っているかという情報は日本人の命に関係します。それより著作権が大切ということが報道機関にあるなら、報道のあり方自身を考えなければならないからです。


(平成24年5月28日)



--------ここから音声内容--------




えーっと、あの、原発を再開するって問題は、私は反対なんですが、これ民主主義ですから、多くの人が賛成すれば原発は再開されると思うんですね。しかしその時に、少し条件を付けたい訳ですよ。勿論「
安全」は条件なんですが、まあやっぱり人間のやる事ですから、また爆発する可能性は有るんです。





その時にですね、原発から早目に、原発の所長から早目に国民に知らせてくれるってのがあるんですが、もう1つはですね、やっぱりNHKがですね、やっぱり早く危険な事を知らせてくれるっていう事ですね。「大丈夫だ」って言うんじゃなくて。で、まあそれをですね、どのくらい、どうしなくちゃいけないか具体的な3号機の爆発の例でここに示したいと思うんですね。




ここにちょっと嫌味みたいに見えるんですけども、これは嫌味じゃなくて私言うんですけど、大晦日の紅白歌合戦を聞かなくてもですね、死ぬことはありませんが、原発の爆発を知らなければ家族が危険に陥る事があるんですよ。そのためにこそNHKがあるんですよね。えー、民放は色々なスポンサーとの関係があるんですけど、NHKは受信料は国民(が払っているん)ですからね。やっぱり国民に知らせてくれるっていう義務がある。これはもう民放と圧倒的に違うと思うんですね。





で、この例をちょっと示してですね、どうしなきゃいけないかっていう私の提案をここに示したいと思いますが。えー実は去年の4月頃からですね、NHKに限らず日本の報道が3号機の爆発映像を流さないという事が分かりました。しかしそれはですね、色んな問題があるので、どうかなと思っておりましたら、NHKとかBBCが共同制作した国際映像が出てきました。これは事件からかなり経った所ですから、まあ例えばパニックとかそういう問題はもうありません。





その証拠にですね、ここに一応貼りました。これが国際映像の表紙ですね。こういった国際映像っていうのはよくある訳で、国際的な共同放送局がですね、より品質の良い物を作って世界に提供すると…こういう訳ですね。ですから当然、あの、通常はですね、国際映像は「同じ物が流れる」んです。





次に示すものはですね、これはまあ、画面の流れをちょっと理解していただく為なんですが、ある程度イントロダクションがあった後ですね、自衛官の、自衛隊の指揮官が出て参りまして、3号機爆発の前、それから爆発した後の様子を話します。これをちょっとここに貼っておきました。





って言うのはですね、片方の映像はですね、NHKのものでこれは字幕が付いておりません。日本語で話してますから。もう1つが日本語で話してるので英語の字幕が付いています。この様に片方がNHKの映像で、片方がBBCの映像で、少し違って見えますけども、これは私が映像を切り取る時ですね、全く同じ瞬間を切り取れなかったものですから、ちょっと1秒か2秒ずれた映像でですね、自衛官の顔の傾きがちょっと違いますけど、これは同じ映像なんです。




ところがですね、その次に3号機の爆発映像が出てきます。この爆発映像は非常に大切なんですね。とにかくプルトニウムが燃料に使ってた原発ですからね。ドーンといったら当然プルトニウム出てくる訳ですね。まあそういう状態の物ですね。それで、NHKはですね、ここにですね、これはBBCの方を先に貼った方が良いと思うんですがBBCの方は3号機の爆発映像がそのまま貼られてるんですよね。





ところがNHKの方はですね、この3号機の爆発映像がすっかり無いんですよ。それで爆発後のですね、残骸の写真が出てくるんです。これはやっぱり国際映像で同じ物を流さなきゃいけないって事があるんでしょう。ちょっとそこはハッキリしませんが。そこでNHKはここは、自衛隊提供っていう「提供」(のテロップ)を入れてます。違う画像を入れましたよという事を一応言い訳か何かのために入れたんでしょうね。





で、実はあの、これはどういう事かって、2つ考えられますね。1つは日本国民には3号機の爆発を知らせないという事が1つと、もう1つは、えーこれはもしかすると福島中央テレビの著作権のある物ではないかという風にも思うんですけど、分からないですね。





っていうのは、分からないのは、この頃ですね、原発の付近にはもう報道陣は全部いなくなって、30キロ地点に定点カメラがあったと言われているんですね。で、この定点カメラには多分、NHKと福島中央テレビがカメラを置いていたという風に聞いてるんですが、この時にNHKのカメラは撮影に失敗したのかどうか、それは分からない。それかもしかすると30キロ地点のカメラ…自動カメラはですね…定点カメラは、報道陣の共同の物だったかも知れないんですね。まあこれ明らかになっておりません。





何れにしても、撮影した物ですから日本国民に出した方が良いっていうか、出さざるを得ない、出さなきゃいけない。つまりこれ、事件ですからね。台風映像でも何でも。例えば人が死んでる写真とか、そういう人道上許されない写真でも全くない訳ですし、事故直後に万が一ですよ、この映像を出すとパニックになるっていう事でしたら、勿論3か月も経てば良いわけですから。





えー、それから1番重要なのは今後ですね。例えば原発を再開して事故が起こる。事故の形は今みたいな爆発だけではありませんから、色んな事故の形がある。その時にその映像を早くテレビで映してくれればですね、皆も逃げ方も分かるし、危険の程度も分かる訳ですね。





今度、皆が本当に不安に思ったのは、どういう事が起こってるのか分からないし、HNKも政府も『安全だ、安全だ』と言ってると。官房長官も『直ちに危険はありません』と言ってると。だけどもそりゃ誰でも当たり前ですけども、被曝による癌の発生なんかは、直ちにじゃなくて、少し時間が経ってからって皆知ってますからね。その意味ではまあ、国民は子供扱いになっちゃった訳ですね。





で、私はね、もう最近ではNHKが嘘を言うっていう事は、皆もそう思ってる訳ですけど、私はねえ、回復できるんじゃないかと思うんですよ、NHKが考え直せば。えーNHKの首脳部はですね、やっぱりちょっとマズかったと、1回謝って、できるだけ国民に素直にデータを提供するようにしようっていう風にNHKの中で申し合わせれば、それで終わりですからね。その方がずっと前向きなんで、是非、そういう風にして貰いたい。





で、原発再開までにですね、NHKは少なくとも原発事故が次に起こったら、「この前の3号機のようにデータを隠したりせずに、情報を隠したりせずに、そのまま出します」と、まあ、(そう)いう事を言って欲しいと思いますね。まあ、そういう事が原発再開の非常に重要な1つの条件ですから、政府もですね、『原発再開ありき』じゃなくて、「原発再開のために国民を安心させる報道もちゃんとします」という事をやっぱり言うべきですね。





政府が…NHKが報道しなきゃ政府が言えば良いんですから、記者会見で。どっちでも良いんですからね。そういう事をやってですね、やっぱりあの、今はですね、原発再開にあたって『反対する人は良くない人だ』っていう言い方をしてますけど、そうじゃないんですよ。そりゃあね、原発再開したい人もいるでしょう。だけども爆発しても教えてくれないっていうんじゃ、嫌だって人もいますからね。そこの所は前向きに考えてもらいたいと思います。


(文字起こし by まあ)