知の侮辱(6)・・・温暖化すると南極の氷は増える (2/7)
地球温暖化はそのスタート自体がアメリカ農業団体の作戦で、学問とか環境問題ではないので、その中に知の侮辱があっても当然かも知れません。むしろ、世界中で日本がCO2を実質的に削減しようとしている唯一の国であることを考えると、「知の問題」として温暖化を取り上げること自体、知の侮辱のようにも思われます。
でも、人間の排出するCO2が地球の温暖化の主要な原因だと考えている科学者が日本に多いことも確かで、それが子供の教育や生活に大きな影響を与えていることも間違いはありません。
たとえば、NHKが映像を流したように「ホッキョクグマが暑いと苦しんでいる」とか「南洋の島、ツバルが沈みかけている」などというような「知の侮辱放送」は日本の子供に大きな影響を与え、結果的には「科学的事実など問題にしなくてよい」という思想を植え付けることになっています。
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温暖化報道では科学の基礎的な原理に反することが多かったのですが、その中でも特に「温暖化したら南極の氷が融ける」ということを聞いたとき、私は本当にガッカリしました。そして、「融ける」と思っている人にその理由を聞きましたら、「温度が上がったら氷は融けるんじゃない」と言われて、2度、ガッカリしました。
理科の時間に「融点」というのを教えるのですが、これは「物質は温度が上がったら融けるのではなく、融点で融ける」ということを理解させるのです。
ある意味では、この現象は常識外れでもあります。なんとなく普通に考えると「温度が上がると氷は融ける」と思いがちですが、水(氷)は0℃で、アルミニウムは660℃でというように物質によってある温度で融けるのであり、温度が上がっても融けないという基本的な概念だからです。
また、この場合はIPCCという国連の気候変動(温暖化)の機関が正式な報告書(わずか25ページぐらい)で、「南極の氷の温度は低いので(マイナス40℃)、温暖化しても融けない」と記載しているのに文献も見ないという二重の「知の侮辱」になります。
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私がある関西のテレビにでて「IPCCの書いてあることを紹介」したところ、「異端児・武田邦彦」と言われました。アナウンサーが「申し訳ないですね。異端児なんて言って」と謝ってくれましたが、私は「いえ、学者にとっては異端児はほめ言葉でもあります」と言いました。
しかし、「温暖化すると南極の氷が融ける」というのは、基礎科学から言っても間違いで、IPCCの文献でも否定されているのに、日本ではすでに「赤信号をみんなで渡ったので、それが正しい」ということになっているのです。恐ろしい社会ですね。
そしてやがて、科学的にも文献でも異なることが日本社会に定着すると、今度は科学的に正しいこと、知を尊重する人、文献をしっかり読んでいる人を「異端児」として社会から排斥しようとする・・・それが私がこのシリーズで言いたい「知の侮辱」なのです。
(平成24年2月7日)
--------ここから音声内容--------
ええと、地球温暖化っていうのはですね、もともとこれは科学の問題じゃなくて、政治の問題なんですよね。ていうのはあの、アメリカの農業団体が今から22年前に、農作物が出来が非常に悪かったんで何とか補助金貰いたい、と。それには工業が原因してて農業がやられてるってシナリオが必要だったんで、工業がCO2を出すから石油とかそういうの焚いて、だから農業が気候が不順になって不作になるんだ、とこういうシナリオを作ったのが、1988年6月23日なんですね、アメリカ発なんですよ。
もちろん、アメリカが今CO2削減全然してませんよ、京都議定書にも入ってませんが。ま、そういう問題なんです、だからまぁ政治ですからね、これは。まさかアメリカがですね、もうどんどんイラクとかそういうの攻めていってるアメリカがですね、環境のために自分たちが犠牲になろうなんて、そんなことはもちろん考えません。良い悪いは別にしましてね、アメリカっていうのはもっとドライな国であります。だからこれを「知」の問題と言うかどうか別なんですよ。
それからもう一つは現在でもですね、それは1988年ですから今から22年前ですけど、現在でも今、CO2を実質的に削減してるのは日本だけですからね、世界で。ですから、これも「知恵」の問題ってことないんですよ。温暖化の問題って日本だけですからね、これ。不思議なことに。だから世界のことを言えば、これ全然、温暖化の問題って今、無いんですよ、どこの国でも無いんです、日本以外は。無いんで、まったく不思議ですね。
ただNHKがですね、「ホッキョクグマが暑い、と苦しんでる」とか、「南洋の島、ツバルが沈んでる」なんていうもんですから、結局皆がそう思っちゃったんですね。NHK、一応正しいってことなってますんで。えー、まぁ自分が勉強した理科とかそういうの忘れちゃってですね、それでそう思っちゃったわけですね。その結果、更にですね、「科学的事実っていうのは、あまり問題にしなくていいんだ」と。実際に北極の氷が融けてるかどうかなんて、毎日のように見ることはできるんですけど、見なくていいんだという考え方を植えつけちゃったような気がするんですね。
それの一番ひどかったのは、「温暖化したら南極の氷が融ける」ってやつですね。私はこの話聞いたとき、ほんとにガッカリしたんですよ。融けると思ってる人に、その理由を聞いたらですね。「温度が上がったら、氷は融けんじゃないの?」って言われて、もう一回ガッカリしましたね。
だって、私もあの大学で物理を教えてるわけで理科の先生なんですけど。理科の時間にですね、小学校ぐらいですかね、「融点」っていうのを教えるんですよ。融点っていうのはですね、「物質っていうのは、温度が上がっても融けないよ」って言って、教えてるわけですね。融点になったら、一気に融けるんですよ。「不思議ですねー」と。普通だったら温度が上がったらこれ融けそうなもんだけど、融けないんですよ。
-40℃の氷が-10℃になっても変わんないんですよ、全然。氷のままなんですよね。30℃上がっても、氷のままなんですよ。ところが-1℃の氷がですね、+1℃にたった2℃変わっただけで、全部融けちゃうんです。これが、温度と物が融けるっていうものの関係なんですね。まぁだから、水は0℃で融けますし、アルミニウムは660℃になんなきゃ融けない。アルミニウムを使ってるうちにちょっと熱くなったから、アルミニウムが融けちゃったなんてことないんですよ。1円玉が融けちゃったとか、そういうことないんですね。温度が上がって融けるわけじゃないんです。アルミニウムは660℃になんないと融けない、ま、600℃ぐらいになると柔らかくなってきますけどね、だけど融けはしない。
これはもう、ほんとにこう…世の中の不思議なことの一つとして、「融点」という意味で教えるんですね。もちろんあの、理由はよく分かってます。難しい物理を使えば、なぜ融点があるかっていうのは、もちろんちゃんと説明できますが。ま、普通一般的にはちょっとね、理解できませんから「融点」ということを教えるんですね。
この南極の氷にはもう一つあるんですね。それはあの、文献にちゃんと書いてあるってことなんですね。IPCCっていう国連の報告書っていうのは、たった25ページしかないんですが、そこにハッキリと、「南極の氷は温度が低いんだ」と…-40℃ですからね。温暖化しても全然融けませんよ、ってこと書いてあるわけですよ。ということは、文献を見なかったってことなんですね。だから物理的な原理も、小学校で習った原理も考えず、25ページの報告書も読まず、日本中が間違ったことを言ってるってのがすごいもんですよね、これ。
えー、これ私、いろいろ経験しましてね。関西のテレビで、IPCC、国連の文献を…報告書を紹介したら、「異端児!」って言うんですね。異端児って言うのは、学者にとって良いことなんですけども、ちょっとどうかなと思いましたね。えー、このことはものすごく変なことだったんですよ。
もちろんNHKの科学記者は全部知ってるでしょうね、まさかこんな「融点」知らないで科学記者やってるわけいきませんからね。恐ろしい社会ですねー、つまり意図的だっていうことが恐ろしいですね。
えー、「温暖化する、そんなウソどうして言うの?」
よくね、講演会で質問受けるんですけど、そんときはですね、「お金の儲かる人がいるよ」ってこう言うんですがね。まぁ、しかしそういうこと…今日はちょっと言いたくないですね。人の批判になりますから、ええ。ま、人の批判ていうのは嫌なもんで、しかし何か納得できませんよね。えー、白いご飯とめざしがあれば十分に生活できんのに、何を考えてるのか? 分かっててウソを言う人いるんですね。こんな簡単なことはね、もしかしたら日常生活だけしてる人にはね、やっぱりすぐには・・・私みたいに物理教えてるとかそういう人はですね、ほんとに良く判ることなんですよね。
まぁ私はですね、小学校の先生から一回質問を受けたことありますよ。「科学的に考えてきちっとしたことを児童に教えると、児童の父兄から文句が来る」と。
「いや、これはちゃんと正しいことですよ。」と言うと、児童の父兄がですね、「いや、NHKが言ってることと違う」って言うんですね。NHKの言ったことは物理の原理に反してもね、言わなきゃいけないっていう、つらいところあるわけですよ。
えーまぁ、子どもたちが可哀想かなぁと僕なんか思うんですね。私がまぁ若い頃、ちっちゃい頃ですね、やっぱりいろいろ、理科の時間なんか、一所懸命勉強したんですけど、やっぱりね、先生とか大人が、ほんとのことを言ってると思ってました。そんなこと疑ってないですよ。そんなお金をね、欲しいために、自分にウソを教えてくるなんて思ってなかったですよ。雪の結晶なら雪の結晶、全部素直にね、「太平洋高気圧」 「あぁ、太平洋高気圧か」と、こう思ってましたね。
それを一つ一つの中に、こんなハッキリとしたウソが入ってるというふうには全く思いませんね。これあの、ちゃんとした児童なら、児童というか中学生ぐらいなら判っちゃうですよ。“南極の氷融けるったって、そりゃ解けないだろうなぁ”と。“おかしいなぁ”と、思うはずですね。ですから、ほんとの理科の心を持ってる子どもがですね、やっぱりそういう子どもにはほんとのこと教えてあげたいですね。そうしないと、そういう子どもが育たないですよ。
だからまぁこの辺でですね、実は私思うんだけど、もうそろそろお止めになったらいかがですか?って感じなんですね。このごろ、講演でですね、ときどき南極の氷の話をしますとね、多くの人が、温度が上がったら氷が融けると思ってるんですよね。やっぱりここら辺は直さないと、原発事故なんか起こるんじゃないかと、私はこう思いますけどね。えー、東日本の大震災もそうですよ。私がちょっと書いたように(※1)、地震が東海に来るって言うのは、これお金の問題なんですよね。だからそういうことでね、亡くなった方はほんとに残念だと思いますね。悔しいと思いますよ、ほんとのことが判ったら。だからまぁほんとに「知を侮辱する」ことは、まずいことだと思いますね。
-------ここまで音声内容--------
※1 まとめシリーズの「地震の避け方、かわし方(1)・・・東海地震がなぜ注目されたか?」の中で詳しく述べられています
(文字起こし by danielle)