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<井崎脩五郎の予想上手の馬券ベタ>福島第1原発事故の収束作業で









◇ビルドアップがやっていた社名に反する行為

 もう30年以上も前の話だが、香港競馬を見学に行った際に、現地のオーナーと会食する機会を得た。

 いわゆる精力剤で莫大な資産を築いた立志伝中の人物で、聞けば、いま走っている馬には「精力増進」という名前を付けているという。

 香港では、競走馬に、漢字名と英語名のふた通りを付けるのが普通なので、その精力増進という馬の英語名は何ですかと聞いたら、「ビルドアップ・ヴィム」だという。アルファベットで書くと、「BUILD・UP・VIM」。

 持っていた辞書で引いたら、ビルドアップには「増進する」「強くする」という意味があり、ヴィムは「精力」「活力」を指すとあるから、ビルドアップ・ヴィムはたしかに、精力増進ということなのだろう。

 ところでそのビルドアップ・ヴィムの競走成績はどうなんですかと尋ねたら、「それが、精力絶倫すぎて……」と笑うばかり。同席していた秘書の方が教えてくださったのが、ビルドアップ・ヴィムは、せん馬だというのにいつでもその気十分で、パドックで牝馬を見かけると馬っ気を出すというのである。「社長の精力剤には、競馬施行上の禁止薬物が入っていないので、ビルドアップ・ヴィムにもカイバに混ぜて与えているのですが、あの馬っ気を見ると、効き目ありという宣伝にはなりますよね」と笑っていらした。

 ビルドアップは景気のいい言葉なので、日本でも馬名に使われており、出世頭は1995年に北海道浦河で生まれたビルドアップリバー。

 父ジェイドロバリー、母プリンセスヨーコ、祖母に桜花賞3着馬トウフクサカエを持つこの栗毛の男馬は、デビュー3戦目に未勝利戦を勝つと、それまで1200メートル以下の経験しかないのに、4戦目にいきなり1800メートルの札幌3歳Sにぶつけた。しかも、連闘というハードスケジュール。

 いくら何でも、これだけキツい条件では息切れだろうと、印などまるでつかない9番人気。

 ところがこのビルドアップリバーが、悪条件を克服し、先行して2着に粘ってしまったのである。まさに名前どおりの脚力“増進”ぶりだった。

 以上のような、ビルドアップにまつわる話を思い出したのは、他でもない、東京電力福島第1原発事故の収束作業で、被ばく隠しを指示した建設会社の名前が「ビルドアップ」だったからである。

 線量計に鉛カバーを勝手に取り付けて、線量が蓄積しないようにズルをしたという違反行為。

『新英和大辞典』(研究社)を引いたら、ビルドアップには「蓄積する」「たまる」という意味もあるそうだから、蓄積しないようにするとは、まさに社名に反した行為。

 これでビルドアップという言葉にはケチが付いてしまったから、しばらく馬名には使われないかもなあ