現地では、私はある一般家庭にホームステイをすることになっていた。



30代くらいの夫婦の家で、ドイツ人の女性が先にシェアメイトとして住んでいた。
彼女は私よりだいぶ年上だったし英語も堪能だったが、ホストファミリーの夫婦がほとんど家に在宅していないこともあり、私たち二人は助け合いながら暮らすことで自然と仲良くなった。



彼女は私の拙い英語にも一生懸命耳を傾けてくれて、私も少ない語彙力で意思疎通を図ろうと必死だった。



これまで同じ言語で話す家族ですら、私の話にこんなに熱心に耳を傾けてくれることはなかった。
いつも母に何か話しても否定されるか却下されるだけだったし、父に至ってはほとんどまともな会話すらしたことがなかった。



それなのに言語も違う異国の人が、自分を知ろうと、コミュニケーションを図ろうと、一生懸命になってくれている。
それが私には嬉しすぎて、私はこの短期留学を期に、異文化交流にすっかりハマってしまったのだ。



その後、私は何度か短期留学をさせてもらい、
ついには大学を休学してまで1年間の留学もさせてもらった。



資金を出してくれた父には今でも心から感謝しているし、母にも勝手して申し訳かなかったと思っている。



ただ、本当に行ってよかった。



あの時、不安ながらも一人で旅立った自分を褒めてあげたい。



親の言いなりで一人では何もできなかった自分が、
異国の地でも無事に生活し、ひとり時間を満喫出来たのだ。



普通なら異国の地での生活は大変なはずが、私にとっては日本での暮らしよりもずっとずっと快適で自由な環境だった。



誰の許しも必要もない環境で、なんの束縛もなくただ自分の意志だけで動くことができる。

自分の行動は自分で考え、責任をもち、
私の家庭環境や家族、何も知らない人たちと、ただ自分という人間だけをみて関係を築いてくれる喜び。



私は生まれて初めて身も心も自由になった気分で、
自分で自分の人生をしっかり生きている気がした。


私にとって留学は、本当に貴重で、自分の殻を破ってくれた素晴らしい経験だった。