短期留学のチラシを握りしめ、母に行きたいと言ってみた。
案の定、母は即刻反対した。
海外旅行に行ったこともなく、偏見が強い母は、
外国は危ないところ
という思い込みだけで反対していた。
いつもの私ならすぐに諦めていたはずだ。
でも、この時の私は違った。
なぜか今いかなければならない、と強く思っていた。
この環境を変えるには、海外に行くしかない、と思い込んでいたのだ。
そして、反対する母には内緒で、
私は父の資金源を頼りに短期留学に申し込んだのだ。
生まれて初めての反抗であり、強行突破だった。
母はしばらく口をきいてくれず、
もうあんたは死んだものと思う
と非情な言葉を吐き捨てた。
こうして私は大学生の夏休みを利用して、初めて海外への1ヶ月の短期留学へと旅立ったのだ。
母の反対を押し切り無理やり留学を決めたものの、
私は海外はおろか、人生で飛行機すら乗ったことはなかった。
空港へ行ったこともないし、海外旅行へ行ったこともない。
ドラマや映画で見る外国しか知らない自分。
英語だって、受験で少し文法をかじった程度で、
決して会話が流暢にできるレベルではなかった。
しかし、私は不安以上にワクワクしかなかった。
海外とはいえ、生まれて初めて誰も知り合いの居ない世界で自分一人で生活できるのだ。
普通なら不安なはずだが、楽しみで仕方なかった。
そして夏休みになり、私はある異国へと旅立ったのだ。
続きます。