2人の男の子と女の子が
屋根の上に座り、空一面に広がる星を眺めて
楽しそうに話していました。
私は遠目に見えるその子たちの姿に、微笑ましくなり、
わたしの心にほんのりと温かさを感じたんです。

そして、自分も星が見たくなったのか、
それともその温かさを感じたくなったのか、
しばらくして屋根の上にひとり登ってみることにしました。

二階の窓を開けて、下を見下ろすと目をつむりたくなる怖さに
足がすくみそうになりながらも、
勇気を出して屋根の上に身を投じてみようと思ったんです。

家の一階からは、窓を開けてテレビを観ている音が聞こえてきて、
一部屋では時代劇の格闘シーン刀のぶつかる音が。

別の部屋からは、一家団欒のなかで、
夕食を済ませている家族の声が聞こえて来ます。

そんな中、私は集中して、両手を屋根の上に置き、
必死につかまりながら、左足を屋根瓦の上に置いてみたんです。

すると瓦から冷たさと、デコボコとした瓦の感触、
ザラザラとした手触りを感じました。

屋根の上に上がり、真ん中までゆっくり這いながら進んでいき、
やっとの思いで腰を落ち着けてみる。
すると、空には、満点の星空が広がっていました。
暗闇のなかで、美しく光る数々の星たちに息を飲んだんです。


下の階では思い思いの時間を過ごしている人がいて、私は同じこの空間なのに、
全く別の次元に存在するかのよう。
下から聞こえてくる音たちに耳をすますと、その世界にタイムスリップして、
私もその現実を見ることが出来ます。
でも、星の広がる音のない世界に耳をすますと、自然のせせらぎと鈴虫の鳴く声、
ゆっくりとした特別な時間がそこに存在していたんです。

同じ世界のようで、まるで異なる世界にわたしは存在している。

ふと、そんなことを思っていました。

夜の星空を見上げながら、
わたしは自分の世界をこの星空の美しさのようにしたくて、
そっと星に手を伸ばしてみたくなりました。

この星をどうやったら、掴めるのだろうか?

風が吹き、サラサラという音を立てながら草木が揺れる中、
私はずっとこの星を眺め続けていたんです。

きっと、手の中につかまえたくて、自分のものにしたくていたこの星は、
手の中に入れずとも常に私と共にいてくれている。

そんな言葉がふっと頭に浮かび、
2人の男の子と女の子がたわいもない話をしながら笑い合う
この屋根上の情景を思い出していました。

いつからか、私は、どこか遠くにあるものを求めていたのか。
それとも、本当は、私の中に既にあるものを確かめたかったのか。
今になるとそれは、どちらなのか分からないが、
そのどちらでも同じような気がしていたんです。

だって、私の目に移るこの星空は、たえずいつもここにあるのだから。