ユノと初めて身体を交えた翌朝。
あの日は、とても寒かった。
暖房が壊れていたのか捲られた布団に入り込む風の冷たさに驚いて
飛び起きた僕に少し怪訝そうな、そのくせひどく申し訳なさそうな顔をしながら
ユノがベッドから出て行く瞬間だった。
「ごめん・・・何か・・悪かった。」
それだけ言って足早に自分の部屋に戻っていくユノ。
僕はというと、初めて感じる身体の違和感を何故か他人事のように思いながら
やけに重く感じる身体を引きずってシャワーへ向かった。
改めて鏡でじっと自分の姿を見つめた。
さっきまでここにユノが・・・・
鏡に映る自分の姿は今までの自分とどこか違っているように思えた。
途端になんとも言えない気持ちになって、昨日の熱が一瞬ぶり返り
すっかり緩くなっているそこを自分の人差し指で触れてみたけれど、
それ以上をするのが怖くなって、やめた。
結局その後はいつも通り一緒に仕事へ向かい、
全ていつも通りを振舞った。
ユノはどこかよそよそしかったけど、僕は何故かユノの弱みを握ったみたいで
気分が良かった。
もしかしたら僕ら、なにか変わるのかも。
なんて訳の分からない甘い期待がプクプクと僕の心に小さく芽生えた。
なのに。
それからユノはますます外泊や朝帰りが増えて同じ家に住んでいても
仕事でしか顔を合わせないようになった。
僕がいるから帰ってこないのか
それとも、ほかに会いたい人がいるから帰ってこないのか
ただ、ユノが僕を避けていることだけは分かった。
だから。
自分が抱いていた気持ちが果たして
何だったのかも考えることはしなかった。
きっとこのまま自然に任せて
あなたはあなたの道を
僕は僕の道を
歩くのが一番いいとも思った。
それが普通だから。
あの時芽生えた期待も、そのうち自然と枯れていくはずだと思った。
そんなある日。
また、ユノが現場に遅刻してきた。
「おい、チャンミン。ユノはちゃんと家に帰ってきてるんだろうな?」
マネージャーが僕に聞いてきた。
「朝方に帰ってきてるみたいだけど。」
「どこに行ってるのか知ってるか?」
「知らない。寝てる間に出て行くから・・・」
「お前たち、会話はないのか?」
「家ではほとんど喋らないから。」
本当に知らないんだ。
僕に気づかれないように静かに出て行ってるようだけど。
「何の為の同居か分かってんのか?」
避けられてるんだ、仕方ないだろ・・・・
「じゃぁ、マネージャーが同居したら!?」
「ユノが・・・チャンミンとじゃなきゃ同居はしないって言ったんだよ・・。」
「・・は?」
ユノの気持ちが分からない。
僕には、ちっとも分からなかった。
それなのに。
それから間もなくして、僕らは2回目の関係を持った。
その時もユノは酔っていた。
そしてその後はユノが酔って帰ってくるたびにそれは決まりごとのように
なっていった。
相変わらず酒とタバコの匂いのキス。
時々、女物の香水の香りも。
僕を抱く前に女を抱いてきたなら、もう僕なんて抱かなくてもいいだろって
思うのに。
結局、抵抗することもなく僕はユノに身体を赦す。
ユノは躊躇いもせずすぐに僕の足元へ顔を埋める。
そうすると簡単に汗ばみ湿っていく身体は、ひとつの羞恥心もなくなって
僕は甘い声で啼くようになる。
そうやって繰り返していくうちに
理性とか道徳とかの境界線が曖昧になって
僕がユノとしている行為には何の意味もなく
ただ快楽を求めるひとつの手段にすぎないのかもしれないなんて
思ってしまう。
そう、これには何の意味もないんだ。
自分に言いきかせた。
それでも、心の奥底に秘めた名前のつけられない感情が
ずっと僕の中に燻っている。
普通に暮らすことの困難さを痛いほど実感しているくせに
もっと生きづらいことに足を突っ込む自分を愚かだと思いながら
それでも、普通という言葉には何の意味も持たないことを
知っているから。
僕は、何度でもあなたに身体を開くんだ。
その瞬間だけは、僕らふたりだけの世界のような気がしていたから。
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とってもとってもお久しぶりです。
また読んでいただけると嬉しいです。