右ポケットの中で何度も震えるスマホ。
着信相手がチャンミンだと分かってから、ずっと気づかないフリをした。
俺は・・・
ポケットの中でスマホが震えるたびにそれを上から押さえつけ、
平静を装いながらいつものようにクラブで友人たちと遊んでいた。
何も知らない。
何も気づかない。
何も…感じない。
そう、これでいい。
アクシデントならマネージャーからだって連絡が来るはずだし、
何よりチャンミンからの電話は慣れてない。
俺たち、もう冗談を言い合えるような仲じゃないことくらい
あいつだって分かってるはずだ。
そんな俺にいまさら何の用事があってこんなに電話をかけてくるのか分からないけど
俺はお前と向き合うのが怖い。
笑えるほど臆病な自分。
どれだけ真面目ぶったって自分までは騙せない。
他人は騙せても、自分は騙せないんだ。
俺はお前と向き合うことも
自分と向き合うことも怖くて、こうして今も逃げてる。
故郷の仲間とつるんで、昔話ばかりしながら先のことを考えないようにしてる。
昔に戻れるはずもなく、戻れたとしても今と同じ道を選ぶと分かっているくせに
今の俺は芸能人にも一般人にもなりきれないどこまでいっても中途半端な奴で、
こんな俺が・・・
チャンミン、お前に合わせる顔なんて本当はないんだ。
それなのに、いつまでもお前を縛り付けておきたいと思ってしまう。
ごめん。
自由にしてやりたいのに、1人になるのが怖いんだ。
いつも思うのは俺たちの未来のこと。
約束されたことなんて何もないけれど、不確かな未来に1人だけ連れて行くとしたら
チャンミン、お前だけだと思っていた。
なぁ。
今でもそう思っていていいのか?
チャンミン、お前は何て答えてくれるんだろうか。
昔のように片目を細めて
「仕方ないですね。」ってまた俺に笑いかけて頷いてくれるんだろうか。
我がままだけど、俺はお前がいないと何も出来ないよ。
ぐるぐると答えなどない問いが頭の中を回る。
騒がしいクラブの爆音。
酒とタバコの匂い。
今日会ったばかりの女たち。
この後どこに行くのかも分からない。
今日はどの女と寝るのかも分からない。
こんなくだらない毎日がいつまで続くのか。
その間も何度もかけ直されてくる電話が、まだポケットで震え続けている。
この電話が切れる前にここから出なくちゃ・・・
ふとそう思った。
今ここでこの場所から出て行かないと、きっと俺はこの先ダメになる。
チャンミンが呼んでる気がした。
「帰って来い」と。
「悪い、帰る。」
ポケットで震え続けるスマホを握りながら俺は急いでクラブの出口を出た。
蒸し暑い夏の夜、明るすぎて星1つすら見えない都会の真ん中で
俺はふと空を見上げた。
ここには何も無ない。
何も無いんだ。
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1年ぶりぐらいの更新です。
ずっと気になっていたので、このままラストまで書き上げてしまいたいです。
よろしければ読んでいただけると嬉しいです。