ユノの家の近くには大きなクスノキがある。

そこから響く蝉の声が今年の夏はやけに耳につく。

夏の終わりはどうしてこんなに蝉が鳴くのだろう。

 

 

短すぎる命に後悔を抱えながら悲しさに暮れ鳴いているのだろうか。

 

生物学的な意味とかはどうでもよくて

ただ、どうしてあんなにも悲しそうに鳴くのかを知りたいと思った。

 

もう夏が終わる。

僕らは、何も変わらない。

 

蝉のように終わりがくるわけでもなく

かといって、何かが始まるわけでもなく

ただ今夜もユノが酔って帰ってくれば僕は恥ずかしげもなく身体を開くだけ。

 

 

二人でいても、一人のようなこの広い家に

僕らの交わる吐息とか、体温とかが充満して

そして翌朝にユノが不機嫌そうに、悲しそうに僕を見るだけ。

 

何も変わらない

僕らの日常。

 

この数年。

僕らはいつも一緒にいるようで、それでいて孤独だった。

そして孤独と共存しながらもその何処かに僕はあなたを感じていた。

 

それはあなたも同じだったと思う。

 

ゆらゆらと揺れる水面のように

独りの拠り所のなさを、心と身体の不確かさを

あなたが強く引き寄せてくれなければ保てなかった。

 

まるでコップにギリギリ注いだ水が

表面張力で何とか保たれているみたいに。

 

1人、先に帰ってきたこの広い家でユノを待つ。

夕暮れ時になると響く蝉の声がいっそう悲しく聞こえる。

 

窓を開けて思い切り空気を吸い込んだ。

蒸せるような暑さの中に少しだけ秋の気配を感じながら夏が終わるのを惜しむ

僕がいた。

 

夏が終わる。

それだけのことなのに

 

何かを失うような、そんな気がした。

それはあなたとのこの生活なのかもしれない。

 

 

酔ったあなたを玄関まで迎えに出る僕が内心嬉しかったことにあなたは気づいて

などいないだろう。

 

 

扉を開けた途端まっすぐ僕にもたれかかってくるあなたの体温は暑くて、

いつもどうにかなりそうだった。

 

逞しい背中をそっとさすってやると、こそばゆいのか少し丸まる背中が愛しかった。

時折り小さい声でゴメンと謝る声が、切なかった。

そのくせ突然激しく僕を抱くその力強さが苦しかった。

 

あなたは、無垢で浅はかで愛おしいほど愚かだ。

 

 

愚かなのは僕も同じか。

 

そう思うと堪らなくユノに逢いたくなった。

 

 

蝉が鳴く。

そうか、蝉は気づいて欲しくて鳴いているんだ。

ここにいるんだと。

 

僕と同じだ。

 

ふと、そう思った。

ならば僕も泣いてもいいのだろうか。

 

 

 

 

 

--------------------------------------------------------------------------

 

TOMORROW 発売日。

いよいよ今月末からツアーも開始。

楽しみですね。