太陽と地面がくっついてるんじゃないかってほどの暑い夏が過ぎて

空が徐々に高くなり秋がやってきた。

 

僕らの夏は、あれっきり・・・だった。

 

以前より連絡を取り合うようにはなったけど、休暇を合わせるのは簡単ではなく

それは僕よりユノの方が難しいようで。

無理は言えないし、言いたくない。

いつも僕の余計なプライドが僕らの関係を足踏みさせていることは

僕だって分かっている。

 

 

ユノはあの性格だからか、ひとつのことをやり遂げなきゃ気が済まないようで

軍隊でも物凄いことをやってのけたそうで。

電話の向こうで嬉しそうに僕に報告してくれた。

 

充実しているみたいで良かった。

そう思う反面、確かにあの夏に満たされたはずの心に小さな空白が生まれたみたいだった。

 

そして、

僕はといえば、自由と不自由の狭間みたいな生活にはそれなりに慣れて

ぽかんと空いた時間にユノを思い出すことが日課になった。

 

特にユノと電話した後は思い出す。

それはあの蒸し暑い雨の降った昼間の情事のことだったり

ユノと初めて出会った日のことだったり

初めて抱かれた夜の月のことだったり

 

忘れかけていた思い出を辿るように

記憶の引き出しを丁寧に開けて、そっと手に取る。

 

僕らは絡みあいながら互いに不足している何かを補い満たしあった。

それを思い出すとき、

サイダーをいっきに注いでコップから泡が弾けるようなそんな期待と不安が

入り混じったような不思議な気持ちになる。

 

 

いつから、とか

どうして、とか

どんなきっかけで、とか色々なことを考えてみるけど

自分でも分からないことだらけのユノへの想いの答えはいつも見当たらない。

 

ただ甘酸っぱい胸の痛みと

慣らされてしまった身体の疼き、

それだけが真実だと思う。

 

きっと、僕はあなたがいれば他の何もいらない。

 

そしてそんな夜は当然のように、自分を慰める。

あの日あなたがしてくれたように。

 

 

 

そうしてる間に、肌を突き刺すような厳しい冬がやってきた。

季節は誰の許可も得ずに勝手に進んでいく。

僕の気持ちはまだあの夏から一歩も動かずにじっとしたままなのに。

 

ユノの気持ちはどうだろう。

最近は電話もろくにできなくて、忙しいのだろうとは思うけど心のどこか隅っこ

のほうで燻る不安を僕は持てます。

 

 

燻るのは・・・

僕がまだその火種をどこかに隠し持ってるからなのだろうか。

 

いつになれば、僕はあなたのことを信じられるようになるのだろう。

 

 

堂々巡りの自分の思考回路に何度嫌気がさしただろう。

いいことだけを考えようと何度決めただろう。

 

そしてまた、一人きりの休暇を過ごす。

仲間に誘われてもどこかに行く気分にはなれなくて、

クリスマスの嫌味すぎるイルミネーションが楽しげに町を照らす中、僕はフードを深く被り歩く。

こんな日は全てがまるで偽物みたいに見えて堪らない。

 

そして、こんな日は無性にあなたに会いたいと思ってしまう。

だからついかけてしまった。

5回コールして出なかったら諦めると決めている僕のルール。

 

4回目のコールが終わって、5回目が鳴った瞬間

聞こえるユノの声。

 

「もしもし?チャンミン?」

 

寒空の下、耳の奥に響くあなたの声だけが暖かかった。

 

 

「逢いたい・・・」

 

あなたの全てを僕は欲しいと願ってる。

だけど、負担になりたくないのも本心。

でも、口から勝手に出てしまった言葉の責任は僕にあって

紛れもなくそれが今の僕の本音で

 

「ユノ、逢いたい。」

 

逢いたくて苦しい。

僕はあなたさえいれば他の何もいらない。

伝えたいけど、伝えられない僕の本心。

まだ言えない。

言えば重荷になってしまうから。

 

 

「・・明日行く。待っといて。」

 

 

それだけ言うと、プツっと切れてしまった電話に僕は呆然としながら、LEDを巻きつけられた

桜の木を見上げた。

 

そこにチカチカと規則的に点滅する光が

僕の心臓の音と重なる。

 

明日、会えるのかもしれない。

そんな期待だけで、さっきまで嫌味に思えたイルミネーションが急に僕の世界を明るく

照らし出したような気にさえなる。

 

 

それでも、思うんだ。

やっぱりこれは偽物なんだと。

無理やり光を放つように飾られた桜より、春になると自然に色づくあの薄いピンクの

花びらのほうが何倍も美しいと。

 

僕らが生きる世界はこのイルミネーションの世界と同じ。

華やかで煌びやかで、ため息が出るほど美しいものでも

光が消えてしまえば同じ。

 

 

だけど、ユノは違う。

偽物の光なんて必要ない。

こんな偽物だらけの世界で見つけた、たった一つの本物だと思うから。

 

 

そして僕は願う。

どうか、僕もあなたにとってそういう存在でありますようにと。

 

 

さっきまで重かった足取りが急に軽くなる。

明日を迎えにいけたらいいのに、そんな馬鹿なことを考えながら

僕は小走りで家へ帰った。

 

 

 

 

 

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お久しぶりです。

少しストックがあったので、少々手直しして久々にUpしました。

ビギアゲツアーもいよいよ日産の申し込みが開始し

ますます熱気が高まってきましたね。

 

無事に当選しますように。

そしてみなさんも無事に当選しますように。

 

このお話もあと2~3話で終了の予定です。

それまでもう少しお付き合い下さると嬉しいです。