寝返りを打って、隣にいるチャンミンを見た。

 

まだ気だるい余韻を引きずって、体の奥にかすかに残っている冷めない熱を

持て余している自分とは正反対に静かに眠るチャンミン。

 

 

その綺麗な横顔は、無防備であどけなくて、

初めて出会った中学生の頃のままで

急に申し訳なさがこみ上げた。

 

 

同じ男として、抱いた俺と抱かれたお前に罪の差ってあるんだろうか・・・・

 

もしあるとすれば、きっと俺のほうが重いはずだろう。

そう、思った。

 

誰よりも幸せになって欲しいと願っていたのに

不純なものになど目もくれず、清らかに男らしくなっていくお前を

誇らしく思っていたのに

 

俺が壊した。

 

お前がこうなることを望んだとしても、俺はその手を払いのけるべきだったのに。

あの時頬を撫でたお前の手の平の温度が、焦がれるような視線が俺には熱すぎて

どうしようもなかった。

 

なんて・・・・言い訳がましい男だろう。

自分でもうんざりする。

 

相手がどこかの女なら、「抱いた責任を取る」なんて簡単に言えたと思う。

だけど、お前にはそんなこと言えない。

 

 

責任とか

約束とか・・・

 

言えないだろ。

 

 

空が白み始め、夜明けが近づいてくる。

まだ静かな町には車のエンジン音さえよく響き、自分の心臓の音さえ

耳を澄ませば聞こえそうな気がした。

 

今日から離れ離れに暮らしていくのに、お前に何て声をかければいいんだろう。

 

元気で、とか

無理するな、とか

頑張れ、とか

どれもありきたりだけど

 

だけど・・・

頭の中で何度も繰り返し唱えた言葉は決して口には出来ない。

 

 

そんな言えるはずのない言葉を飲み込んで、その代わりに少し癖のある柔らかい髪の毛に

そっとキスをして部屋を出た。

 

 

 

 

リビングには昨夜の仲間たちがイビキをかいてまだ寝ていた。

何も悩みのなさそうな間抜け面が羨ましかった。

そして冷蔵庫からペットボトルを取り出してひと口含み、タバコを咥えベランダへ出た。

 

 

明け方の風はまだ涼しくて、深く息を吸い込んだ。

 

 

しばらく禁煙だろうな・・・

恋しくなくなる日は来るんだろうか、タバコも、この生活も、そしてチャンミンのことも。

少しずつ明るくなる空に煙を吐き出した。

雲がたなびき、それはまるで自分が吐いた煙のように流れていく。

 

その先に金星が少しだけ霞んで見えた。

夕暮れ時と明け方にしかその姿を見せないなんて、

何となくチャンミンみたいだ、と思った。

 

本当のお前って、

どこにいるんだろうな・・・

 

 

そんな事を考えて、いつのまにか短くなったタバコの火を消した。

 

 

ふと後ろに気配を感じて振り向くと、チャンミンが立っていた。

寝癖でお世辞にも整っているとはいえない姿が、やけにリアルで昨夜の事を

思い返させる。

 

 

くるりと跳ねた襟足から覗く細く長い首に寄せた唇の感触が急速に戻ってきて

不純にもまた腹の奥の熱が疼きだしそうになり、急いでチャンミンから目をそらした。

 

 

「ユノ。」

「あぁ・・」

 

「タバコ、1本頂戴」

「吸うのか?」

 

「うん」

「吸ったことあるのか?」

「昔ね、少しだけ」

 

重ねた身体の余韻を確かに感じながら

それには触れず、俺たちはただ黙って並び白む空を眺めた。

 

 

見慣れないチャンミンのタバコ姿。

慣れない手つきで火を灯し、その時少し傾けた首にはお前も知らないだろう小さなキスマーク

が覗く。

どうしても、残したかった印。

お前は気づかなくてもいいよ、俺の我が侭なんだから。

 

 

紫色に変わっていくこの空がやけにチャンミンによく似合う。

タバコを咥えるその綺麗な横顔から柔らかく白い煙が吐き出されていく。

その時風が吹き抜けて、一瞬で煙は流されていった。

 

 

そして、それを追いかけるように目を細め遠くを見つめるチャンミンが

とても綺麗で、いつまでも忘れないように目に焼き付けたいと思った。

 

 

 

明けの明星をお前とまた見れる日がいつか来るんだろうか。

そんなことを思いながら、ただじっとお前が見つめるその先を俺も一緒に眺めていた