ダービーファンタジー 1 | モコモコフワフワ~~子供の心傷つけない無害なファンタジー

ダービーファンタジー 1

 ある国の、ある街の、ある大きな屋敷に、ダービーという羊がいました。名づけ親は、人間のトーイです。トーイはもともと軍人でしたが、退役してからは色々な事業に手をつけ、ことごとく成功をおさめました。おかげで60歳を越えた今や、知る人ぞ知る大富豪です。そんな彼の趣味は、ペット収集でした。そうです、ダービーもご自慢のコレクションのひとつだったのです。


 何度もトーイは言いました。「おまえの毛はまるで天使の羽のように美しい」それがダービーの誇りになりました。この頃は、まわりのペット達からも評判のふたりでした。しかし、ダービーが、ラムからマトンへと成長すると、漠然とした疑問を抱くようになったのです。


 どうしてトーイは上からものを言うんだろう? たしかに、僕は彼のペットかもしれない。だけどそれは、僕が頭を下げてお願いしたわけじゃない。かの戦国大名が力で敵を従わせたのとはわけがちがう。たしかに、僕より彼のほうが年上だ。だけどそれは、長く生きているほうがよくものを知っているだろうという推測による上下関係でしかない。もしも彼が正論に沿ってちゃんと物事を捉えているのなら、僕のほうが物知りになった場合、あんなふうには接してくることもなくなるだろう。


 ダービーは気難しく、羊としては異例の理屈屋でした。人間で言うところの、絡み辛いヤツでした。


 それからダービーは、ひとり書斎にこもりっきりで勉強するようになりました。兼ねてから興味のあった戦国や幕末を重点的に。ダービーはたちまち大和魂のとりこになりました。散歩中、運悪く、野生のグリズリーと遭遇した時なんて、仲間の誰よりも震えながらも、「死のうは一定よ」とこぼすほどでした。


 ダービーは度々、侍、富士山、忍者、芸者について、他のペット仲間に熱っぽく話してやりました。話すのが遅いせいで、彼を取り巻く仲間達の半分以上は睡魔に倒れましたが、結果的には、比較的知識欲のあるペットからは興味深い話、不眠症のペットにとっては最高の子守唄となりました。