田 中 優 の “持 続 す る 志” 優さんメルマガ 第30号 2009.1.4
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田 中 優 の “持 続 す る 志”
優さんメルマガ 第30号 2009.1.4
http://tanakayu.blogspot.com/
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□◆ 田中 優 より ◇■□■□◆◇◆◇■□■□
「共感する感性とタフな行動力」
共感する勇気
心を落ち着かせて、ゆっくり構え、音楽と向き合う。すると音
の重なりの中からその人の感情が届いてくる。『そうか、こう感
じたのか』と対話する。書物も同じだ。筆致を追うようにしてリ
ズムを辿りながら言葉を味わう。『あの語ではなく、この言葉を
使ったのは、このイメージを避けたかったんだな』と。
音楽を聴いているときに外で大きな音がするとびっくりして、
次第に腹立たしく思えてくる。せっかく辿りかけていた気持ちの
糸が切れるように思えるからだ。同じ音楽を聴いているのに、先
ほどの文脈が辿れない。神経が鋭敏になっているとき、人はきっ
と奇跡的なほどの感受性を持つ。人の考えていることが分かると
いうより、共振現象のように同じ想いが湧き上がる。もちろん全
く同じではないにせよ、心を無にしていると同じように感じるこ
とができる。もししてみたいと思うなら、何も考えず期待せず、
ただ自分自身といるときのように隣に座ってみるといい。動物と
一緒にいると、その気持ちが伝わってくるのと同じだ。人は共感
する生き物だというのがよく分かる。
しかしその一方で思う。人は感性だけで生きていてはいけない
のではないかと。ぼくの友人たちの中にも、感性が非常に研ぎ澄
まされた人がいる。しかし彼らは多くの悲惨な事態に、耐え切れ
ないほどの苦しみを抱く。ダメージのせいでモノが食べられなく
なったり、眠れなくなったりすることは誰でもあるだろう。しか
し人によっては仕事に出られなくなったり、生きる意欲を失いか
けたりする。おそらくは感性が研ぎ澄まされる場所に長くいすぎ
たせいなのだろう。だがそれは一方で、日差しの強さに耐えられ
ない陰樹のようでもある。ときには真正面から日差しを受け、こ
の世界の現実から目を背けないように踏みとどまる勇気も必要だ。
「喜べない生存」
2008年の暮れから今もなお、パレスチナはイスラエルの一方的
な攻撃によって多くの死傷者を出している。何もしていないのに、
外に出ることも許されないパレスチナの中で上空から爆撃してい
る。それは運の悪い宝くじのように、不意に誰かが殺される。も
し対抗しようとするなら、『やっぱり過激派のハマスのメンバー
だ』と攻撃を正当化されてしまう。あなたがその場にいたらどう
するだろうか。逃げ道はない。近い友人や家族、子どもたちまで
もが無残に殺されていく。『その死が自分でなかったこと』を喜
ぼうものなら、たちまち自己嫌悪に襲われるだろう。殺されるの
は誰でもよかったのだから、自分が殺されなかったことは他者の
死に責任を感じなければならなくなるからだ。ぼくはインターネ
ットでその死の瞬間を目にする。そうしなければいけないような
義務感に襲われながら。
だからイスラエルに関係するコカコーラやマクドナルド、スタ
ーバックスのコーヒーのようなものは買わない。せめてもの抵抗
だ。友人たちはイスラエル大使館に抗議行動に出かけた。なにか
せずにはいられないのだ。『そこにいるのが自分だったら…』と
いう感性は、耐え難い苦痛を作り出す。
しかしそれでも目を向けていたい。人にとって最も屈辱的で悲
しいことは、誰からも忘れられてしまうことだ。自分がひどい目
に遭っているのに誰もが目を背け、誰もが知りたがらないとした
ら、これほど悲しいことはない。誰かがひ弱な小さな声でいいか
ら「もうやめておけよ」と言ってくれないものか、「それ以上す
るなよ」と諌めてくれないものかと願うだろう。それがない中で
の死は、陽の差さない真っ暗で絶望的な「漆黒の死」になってし
まう。
ぼくが欲しいのは感性を残したままのタフな神経だ。事実に目
を背けずにいたい。しかしその死の理不尽さにも、動揺しないで
見続けるタフさだ。耐えることで自分の存在を確認する、目を背
けない勇気をもって自分の存在を確認するような…。もちろん誰
もが耐えられる神経を持つわけではないことはわかっている。そ
れでも一人でも多くの人がそうならなければ、たとえばパレスチ
ナで殺されていく人たちを「漆黒の死」に追いやってしまうこと
になる。
カンボジアの「トゥールスレーン」という名の、ポルポトによ
る拷問・殺害の場となった元高校跡地を訪ねたときもそうだった。
アルゼンチンでピノチェトに爆撃・殺害されたアジェンデ政権の
パレスを訪ねたときもそうだった。あまりのショックとうんざり
したような気持ちに襲われて、数日は何もできなくなる。人には
きっと人殺しをなんとも思わない残忍さが隠されているのだ。し
かしその残忍さを拒否できるとしたら、きっと強い意志の力だろ
う。タフでありたい。最後の一時まで自分自身でいたい。感性は
絶対必要だが、それだけで生きようとするには、この世界は野蛮
すぎるのだ。
一人の人間が人を殺すときのほうがまだ理由がある。しかし国
家などに他人の命を勝手に奪う権利はない。どんな理由を持って
こようが許されることではない。誰もが国家に楯つくだけのタフ
さがあるわけではないのはわかっているが、それでもせめてイス
ラエルに「人を殺すな」と言ってほしい。
______________________
以下は、ぼくの信頼する江戸川の地域の仲間、大河内秀人の文章
です。ぜひお読みください。
___________
大河内秀人@パレスチナ子どものキャンペーン(CCP) です。
(転載転送歓迎。クロスポストご容赦下さい)
ガザ空爆に関して、様々な感想や意見が寄せられ、また耳にしま
す。パレスチナ側に同情的なもの、イスラエルの攻撃を支持するも
の、中立的・評論家的な分析、等々、立場や価値観も様々です。
戦争というのは、起こっている一つ一つが事実であり、その経験
や証言の一つ一つは重く受け止められるべきです。そして、加害者
に対する怒りと、被害者に対する同情も、人間として当然であり、
また必要なことです。
しかし忘れてならないことは、その個々の事実や経験は断片的な
ものだということです。その背景には様々なレベルでの原因や条件
があり、時間的(「歴史的」というとすぐ数千年遡られてしまうの
で避けますが)な経緯と社会(国際)的な環境や認識が大きく作用
しています。なので、紛争に対してコメントや判断するためには、
その原因とメカニズムを、現象面・意識面で、全体的・構造的に捉
え、さらにそれぞれを掘り下げる必要があります。
たとえば「イスラエル人の8割がガザへの空爆を支持している」
と報じられていることについて、考えてみます。
まず「イスラエル人」とは誰を指すのでしょうか? イスラエル
に住む人々ということでしょうか? イスラエルの選挙権を持つ人
々ということでしょうか? イスラエルには、ユダヤ人以外に、イ
スラム教あるいはキリスト教を信じるアラブ人も少なからず暮らし
ています。ハマスのロケット弾でアラブ系の住民も被害を受けたと
いう報道もありました。市民権を制限されているとはいえ、彼らも
イスラエル人です。また、イスラエルに住んでなくても、イスラエ
ル人として選挙権を持つユダヤ人が世界中にいます。そんな疑問を
もたれることもなく“8割”という数字が一人歩きします。
また別の視点から押さえてほしいことは、一般的なイスラエル人
(前述のことから矛盾する表現ですが・・・)が“ガザ”に対して
持つイメージがあります。彼らにとってガザは、テロリスト集団の
住む無法地帯であり、自分たちと同じ人間が住んでいるとは思って
いません。ガザに行ってきたなどと言うと、「よく無事に帰って来
れたね」という反応が普通です。敢えて言えば、東京の人に「釜ヶ
崎に行ってきた」みたいな感じでしょうか。
つまり、差別や偏見が暴力を容認し、虐殺を引き起こすのです。
昨年3月、初めてエルサレムの「ホロコースト博物館」を見学しま
した。人々の中に差別や偏見を植え付け、暴力的政策を拡大してい
くプロパガンダに関して学習する場所でした。そういうメッセージ
を世界に発信している国が、現代のホロコーストと呼ばれるガザで
大虐殺をおこなっているのです。
私たちは、個人的にも社会的にも、その憎悪や憤りがどこから来
るものなのか、何によってもたらされたものなのか、感情を揺さぶ
る情報ソースと共に、揺さぶられる感情のあり様についても、冷静
に問いかける必要があります。「客観的」という見方は内面に向け
られて重みが増します。
次に時間的な流れを振り返ると見えてくるものがあります。シャ
ロン政権は2005年、西岸地区で“壁”や道路等を伴いつつ入植
地政策が拡充されている一方、一部の強硬な反対を押し切って、ガ
ザの入植地を撤退しました。それをハマスは、自分たちの闘争の成
果と宣伝し、2006年の選挙で勝利しました。その結果、国際社
会はハマス政権を嫌い、パレスチナサイドは混乱、分裂し、ハマス
の支配が続くガザはますます窮地に追い込まれています。
イスラエル国内だけでなく、パレスチナ社会や国際社会の世論と
ムードのコントロールを含め、シャロン政権のシナリオ通りに推移
していると言えます。入植地がなくなりユダヤ人がいなくなったこ
とで、心置きなくガザを空爆することができます。
当初、ガザからロケット弾を撃ち込んでいたのは、ハマスではな
い、ごく一部の過激派でした。しかし封鎖による欠乏や不満が極限
状況に達して、ハマスもついに正面切って参戦したところで、待っ
てましたとばかり、イスラエル軍が大規模な作戦を開始しました。
軍事力、情報力で圧倒し、実際の主導権を持ち続けていたイスラエ
ルに大義名分が与えられるよう、何年もかけて仕組まれたのは間違
いありません。
このような暴力を助長し、戦争に導くメカニズムについて、パレ
スチナだけでなくイスラエル側でも、冷静な視点を持つ市民やNG
O・平和団体は見極めています。“苦”の側に立ち、その苦の原因
を根本的かつ構造的に追求し、あるべき共存の未来を描く想像力の
ある人々が、その可能性を訴えつつ、地道な努力の積み重ねや対外
的なアピールも行ってきました。そして大惨事が予想される政策に
対して警鐘を鳴らしてきました。
そのような市民感覚、現場感覚を持ったNGOや市民団体の警告
や努力が踏みにじられ、“苦”への感性が“力”の側のプロパガン
ダに、人権が覇権に、負けたとき、国際社会の抑止力も効かず、ア
フガニスタンでもイラクでもレバノンでも、多くの人々の命が奪わ
れ、さらなる不安定がもたらされました。日本への原爆投下を含め
非人道的な攻撃は、仕組まれた憎悪が人権を否定することで成り立
ちます。
圧倒的強者が被害者の立場を大義名分に、差別と偏見を利用し、
嘘と情報操作でたぶらかし、乱暴な正義を振りかざして土地と利権
を貪る「対テロ戦争」の文脈が、日米の次の政権に引き継がれない
よう、人権と平和の実現に向けた様々なレベルでの活動を積み重ね
ていきたいと思っています。
参考▽「テロとの戦い」の本当の対立軸
http://www.juko-in.or.jp/Message2005.htm#051009vsterr
++++++++++++++++++++++++++++++
大河内秀人 Hidehito OKOCHI
hit@nam-mind.jp
CCP <http://ccp-ngo.jp/ >
ブログ<http://angel.ap.teacup.com/hitococi/ >
□◆ 新刊情報! ◇◆◇■□■□◆◇◆◇■□■□
<<速報!>> 田中優 新刊 2009年1月発売!
http://tanakayu.blogspot.com/2008/12/blog-post_29.html
##””##””##””##””##””
「環境教育 善意の落とし穴」(大月出版)
田中 優 著 ¥1000+税
##””##””##””##””##””
「みんなの心がけ」で環境問題は解決する?
http://www.otsukishoten.co.jp/cgi-bin/otsukishotenhon/siteup.cgi?&category=1&page=0&view=&detail=on&no=425
環境問題に関する目からウロコの「落とし穴」話が満載。「みん
なの心がけ」だけでは解決できない問題の本質が見えてくる。地
球環境の本当の敵を見抜く力がつく一冊。教育誌『月刊クレスコ
』から誕生した「クレスコファイル」シリーズの第1弾! 現場
の教員や親からも環境問題を語るのに最適と好評だった連載をフ
ァイリング。
【刊行日】2009年1月20日
著者名 田中 優
本体価格/判型・ページ ¥1000/46判・96ページ
ISBN 978-4-272-40801-6
;・;・;・;・;・;・;・;
「目からウロコを落とされっぱなしでした」
「経済最優先の人間の行為が地球環境をこんなにめちゃくちゃにして・・・」
~教育誌「月刊クレスコ」連載時に寄せられた
読者からの感想より
;・;・;・;・;・;・;・;
□◆ 注目イベント! ◇■□■□◆◇◆◇■□■
Naked Loft 2009年環境問題プロジェクト
『温暖化の最大問題~電気からどう離れるか~』
新聞、メディアに載せられないあらゆるテーマの問題を絞りその
テーマの主旨に賛同して歌えるミュージシャンとその内容につい
て話せる表現者でお互いの LIVEを通してその問題についての解決
策を導く企画を開催します。
一回目となるテーマは『温暖化の最大問題~電気からどう離れる
か~』熊本出身、オーガニックシンガーソングライター東田トモ
ヒロさんの電力を使わないLIVEに環境、経済、平和などの様々な
NPO活動に関わる田中優さん の温暖化と電気についてのトークと
この問題に対して分かりやすく案内してくれます。是非、多くの
方の参加お待ちしています。
【出演】東田トモヒロ / 田中優(未来バンク事業組合理事長)
【会場】 Naked Loft (東京都新宿区百人町1-5-1百人町ビル)
http://www.loft-prj.co.jp/naked/
【日時】2009年1月14日(水)
OPEN18:30 / STRT19:30
前売¥2,000(飲食代別)当日¥2,500(飲食代別)
Naked Loft店頭にて前売チケット販売、電話予約受付けます。
ローソンチケットでも販売します(Lコード:32712)
問:tel.03-3205-1556(Naked Loft)
□◆ 今後の講演会予定 ◇■□■□◆◇◆◇■□■
1月
11日(日)神戸市勤労会館
12日(月・祝)岡山コンベンションセンター
14日(水)Naked Loft(東京都新宿区)
17日(土)全国大学生協連東北地域センター(宮城県仙台市)
20日(火)桐朋小学校(東京都調布市)
24日(木)~ ピースボート
シンガポール~ケニア
※定員に達していたり、非公開のイベントもございますので
詳しくは、こちらをご覧ください。
http://tanakayu.blogspot.com/2008/11/200812.html
◆◇◆◇■□■□◆◇◆◇■□■□◆◇◆◇■□■□
最後までお読みいただき、ありがとうございました<(_ _)>
2日前にメルマガを配信したところですが、今朝、優さんから「
パレスチナのことが一般には全然知られていないのに不安を覚
えているので、何とか紹介できませんか?」とメールをいただき
ました。
今、パレスチナで起きていることをどう受け止めるのかの指針と、
わたしたちに何ができるのかのヒントにしていただければ幸いです。
転送歓迎です。 ブログにも掲載する予定です。 (こはら)
◆◇発行責任者 田中優の“持続する志”メルマガ担当 小原
◆◇公式ブログ http://tanakayu.blogspot.com/
◆◇お問い合わせ happykoara3@yahoo.co.jp
◆◇メルマガの登録・解除は、
http://www.mag2.com/m/0000251633.html
◆◇このメルマガは転送歓迎です。
◎田中優の“持続する志”
のバックナンバー・配信停止はこちら
⇒ http://archive.mag2.com/0000251633/index.html
このメールに返信すれば、発行者さんへ感想を送れます
田 中 優 の “持 続 す る 志”
優さんメルマガ 第30号 2009.1.4
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「共感する感性とタフな行動力」
共感する勇気
心を落ち着かせて、ゆっくり構え、音楽と向き合う。すると音
の重なりの中からその人の感情が届いてくる。『そうか、こう感
じたのか』と対話する。書物も同じだ。筆致を追うようにしてリ
ズムを辿りながら言葉を味わう。『あの語ではなく、この言葉を
使ったのは、このイメージを避けたかったんだな』と。
音楽を聴いているときに外で大きな音がするとびっくりして、
次第に腹立たしく思えてくる。せっかく辿りかけていた気持ちの
糸が切れるように思えるからだ。同じ音楽を聴いているのに、先
ほどの文脈が辿れない。神経が鋭敏になっているとき、人はきっ
と奇跡的なほどの感受性を持つ。人の考えていることが分かると
いうより、共振現象のように同じ想いが湧き上がる。もちろん全
く同じではないにせよ、心を無にしていると同じように感じるこ
とができる。もししてみたいと思うなら、何も考えず期待せず、
ただ自分自身といるときのように隣に座ってみるといい。動物と
一緒にいると、その気持ちが伝わってくるのと同じだ。人は共感
する生き物だというのがよく分かる。
しかしその一方で思う。人は感性だけで生きていてはいけない
のではないかと。ぼくの友人たちの中にも、感性が非常に研ぎ澄
まされた人がいる。しかし彼らは多くの悲惨な事態に、耐え切れ
ないほどの苦しみを抱く。ダメージのせいでモノが食べられなく
なったり、眠れなくなったりすることは誰でもあるだろう。しか
し人によっては仕事に出られなくなったり、生きる意欲を失いか
けたりする。おそらくは感性が研ぎ澄まされる場所に長くいすぎ
たせいなのだろう。だがそれは一方で、日差しの強さに耐えられ
ない陰樹のようでもある。ときには真正面から日差しを受け、こ
の世界の現実から目を背けないように踏みとどまる勇気も必要だ。
「喜べない生存」
2008年の暮れから今もなお、パレスチナはイスラエルの一方的
な攻撃によって多くの死傷者を出している。何もしていないのに、
外に出ることも許されないパレスチナの中で上空から爆撃してい
る。それは運の悪い宝くじのように、不意に誰かが殺される。も
し対抗しようとするなら、『やっぱり過激派のハマスのメンバー
だ』と攻撃を正当化されてしまう。あなたがその場にいたらどう
するだろうか。逃げ道はない。近い友人や家族、子どもたちまで
もが無残に殺されていく。『その死が自分でなかったこと』を喜
ぼうものなら、たちまち自己嫌悪に襲われるだろう。殺されるの
は誰でもよかったのだから、自分が殺されなかったことは他者の
死に責任を感じなければならなくなるからだ。ぼくはインターネ
ットでその死の瞬間を目にする。そうしなければいけないような
義務感に襲われながら。
だからイスラエルに関係するコカコーラやマクドナルド、スタ
ーバックスのコーヒーのようなものは買わない。せめてもの抵抗
だ。友人たちはイスラエル大使館に抗議行動に出かけた。なにか
せずにはいられないのだ。『そこにいるのが自分だったら…』と
いう感性は、耐え難い苦痛を作り出す。
しかしそれでも目を向けていたい。人にとって最も屈辱的で悲
しいことは、誰からも忘れられてしまうことだ。自分がひどい目
に遭っているのに誰もが目を背け、誰もが知りたがらないとした
ら、これほど悲しいことはない。誰かがひ弱な小さな声でいいか
ら「もうやめておけよ」と言ってくれないものか、「それ以上す
るなよ」と諌めてくれないものかと願うだろう。それがない中で
の死は、陽の差さない真っ暗で絶望的な「漆黒の死」になってし
まう。
ぼくが欲しいのは感性を残したままのタフな神経だ。事実に目
を背けずにいたい。しかしその死の理不尽さにも、動揺しないで
見続けるタフさだ。耐えることで自分の存在を確認する、目を背
けない勇気をもって自分の存在を確認するような…。もちろん誰
もが耐えられる神経を持つわけではないことはわかっている。そ
れでも一人でも多くの人がそうならなければ、たとえばパレスチ
ナで殺されていく人たちを「漆黒の死」に追いやってしまうこと
になる。
カンボジアの「トゥールスレーン」という名の、ポルポトによ
る拷問・殺害の場となった元高校跡地を訪ねたときもそうだった。
アルゼンチンでピノチェトに爆撃・殺害されたアジェンデ政権の
パレスを訪ねたときもそうだった。あまりのショックとうんざり
したような気持ちに襲われて、数日は何もできなくなる。人には
きっと人殺しをなんとも思わない残忍さが隠されているのだ。し
かしその残忍さを拒否できるとしたら、きっと強い意志の力だろ
う。タフでありたい。最後の一時まで自分自身でいたい。感性は
絶対必要だが、それだけで生きようとするには、この世界は野蛮
すぎるのだ。
一人の人間が人を殺すときのほうがまだ理由がある。しかし国
家などに他人の命を勝手に奪う権利はない。どんな理由を持って
こようが許されることではない。誰もが国家に楯つくだけのタフ
さがあるわけではないのはわかっているが、それでもせめてイス
ラエルに「人を殺すな」と言ってほしい。
______________________
以下は、ぼくの信頼する江戸川の地域の仲間、大河内秀人の文章
です。ぜひお読みください。
___________
大河内秀人@パレスチナ子どものキャンペーン(CCP) です。
(転載転送歓迎。クロスポストご容赦下さい)
ガザ空爆に関して、様々な感想や意見が寄せられ、また耳にしま
す。パレスチナ側に同情的なもの、イスラエルの攻撃を支持するも
の、中立的・評論家的な分析、等々、立場や価値観も様々です。
戦争というのは、起こっている一つ一つが事実であり、その経験
や証言の一つ一つは重く受け止められるべきです。そして、加害者
に対する怒りと、被害者に対する同情も、人間として当然であり、
また必要なことです。
しかし忘れてならないことは、その個々の事実や経験は断片的な
ものだということです。その背景には様々なレベルでの原因や条件
があり、時間的(「歴史的」というとすぐ数千年遡られてしまうの
で避けますが)な経緯と社会(国際)的な環境や認識が大きく作用
しています。なので、紛争に対してコメントや判断するためには、
その原因とメカニズムを、現象面・意識面で、全体的・構造的に捉
え、さらにそれぞれを掘り下げる必要があります。
たとえば「イスラエル人の8割がガザへの空爆を支持している」
と報じられていることについて、考えてみます。
まず「イスラエル人」とは誰を指すのでしょうか? イスラエル
に住む人々ということでしょうか? イスラエルの選挙権を持つ人
々ということでしょうか? イスラエルには、ユダヤ人以外に、イ
スラム教あるいはキリスト教を信じるアラブ人も少なからず暮らし
ています。ハマスのロケット弾でアラブ系の住民も被害を受けたと
いう報道もありました。市民権を制限されているとはいえ、彼らも
イスラエル人です。また、イスラエルに住んでなくても、イスラエ
ル人として選挙権を持つユダヤ人が世界中にいます。そんな疑問を
もたれることもなく“8割”という数字が一人歩きします。
また別の視点から押さえてほしいことは、一般的なイスラエル人
(前述のことから矛盾する表現ですが・・・)が“ガザ”に対して
持つイメージがあります。彼らにとってガザは、テロリスト集団の
住む無法地帯であり、自分たちと同じ人間が住んでいるとは思って
いません。ガザに行ってきたなどと言うと、「よく無事に帰って来
れたね」という反応が普通です。敢えて言えば、東京の人に「釜ヶ
崎に行ってきた」みたいな感じでしょうか。
つまり、差別や偏見が暴力を容認し、虐殺を引き起こすのです。
昨年3月、初めてエルサレムの「ホロコースト博物館」を見学しま
した。人々の中に差別や偏見を植え付け、暴力的政策を拡大してい
くプロパガンダに関して学習する場所でした。そういうメッセージ
を世界に発信している国が、現代のホロコーストと呼ばれるガザで
大虐殺をおこなっているのです。
私たちは、個人的にも社会的にも、その憎悪や憤りがどこから来
るものなのか、何によってもたらされたものなのか、感情を揺さぶ
る情報ソースと共に、揺さぶられる感情のあり様についても、冷静
に問いかける必要があります。「客観的」という見方は内面に向け
られて重みが増します。
次に時間的な流れを振り返ると見えてくるものがあります。シャ
ロン政権は2005年、西岸地区で“壁”や道路等を伴いつつ入植
地政策が拡充されている一方、一部の強硬な反対を押し切って、ガ
ザの入植地を撤退しました。それをハマスは、自分たちの闘争の成
果と宣伝し、2006年の選挙で勝利しました。その結果、国際社
会はハマス政権を嫌い、パレスチナサイドは混乱、分裂し、ハマス
の支配が続くガザはますます窮地に追い込まれています。
イスラエル国内だけでなく、パレスチナ社会や国際社会の世論と
ムードのコントロールを含め、シャロン政権のシナリオ通りに推移
していると言えます。入植地がなくなりユダヤ人がいなくなったこ
とで、心置きなくガザを空爆することができます。
当初、ガザからロケット弾を撃ち込んでいたのは、ハマスではな
い、ごく一部の過激派でした。しかし封鎖による欠乏や不満が極限
状況に達して、ハマスもついに正面切って参戦したところで、待っ
てましたとばかり、イスラエル軍が大規模な作戦を開始しました。
軍事力、情報力で圧倒し、実際の主導権を持ち続けていたイスラエ
ルに大義名分が与えられるよう、何年もかけて仕組まれたのは間違
いありません。
このような暴力を助長し、戦争に導くメカニズムについて、パレ
スチナだけでなくイスラエル側でも、冷静な視点を持つ市民やNG
O・平和団体は見極めています。“苦”の側に立ち、その苦の原因
を根本的かつ構造的に追求し、あるべき共存の未来を描く想像力の
ある人々が、その可能性を訴えつつ、地道な努力の積み重ねや対外
的なアピールも行ってきました。そして大惨事が予想される政策に
対して警鐘を鳴らしてきました。
そのような市民感覚、現場感覚を持ったNGOや市民団体の警告
や努力が踏みにじられ、“苦”への感性が“力”の側のプロパガン
ダに、人権が覇権に、負けたとき、国際社会の抑止力も効かず、ア
フガニスタンでもイラクでもレバノンでも、多くの人々の命が奪わ
れ、さらなる不安定がもたらされました。日本への原爆投下を含め
非人道的な攻撃は、仕組まれた憎悪が人権を否定することで成り立
ちます。
圧倒的強者が被害者の立場を大義名分に、差別と偏見を利用し、
嘘と情報操作でたぶらかし、乱暴な正義を振りかざして土地と利権
を貪る「対テロ戦争」の文脈が、日米の次の政権に引き継がれない
よう、人権と平和の実現に向けた様々なレベルでの活動を積み重ね
ていきたいと思っています。
参考▽「テロとの戦い」の本当の対立軸
http://www.juko-in.or.jp/Message2005.htm#051009vsterr
++++++++++++++++++++++++++++++
大河内秀人 Hidehito OKOCHI
hit@nam-mind.jp
CCP <http://ccp-ngo.jp/ >
ブログ<http://angel.ap.teacup.com/hitococi/ >
□◆ 新刊情報! ◇◆◇■□■□◆◇◆◇■□■□
<<速報!>> 田中優 新刊 2009年1月発売!
http://tanakayu.blogspot.com/2008/12/blog-post_29.html
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「環境教育 善意の落とし穴」(大月出版)
田中 優 著 ¥1000+税
##””##””##””##””##””
「みんなの心がけ」で環境問題は解決する?
http://www.otsukishoten.co.jp/cgi-bin/otsukishotenhon/siteup.cgi?&category=1&page=0&view=&detail=on&no=425
環境問題に関する目からウロコの「落とし穴」話が満載。「みん
なの心がけ」だけでは解決できない問題の本質が見えてくる。地
球環境の本当の敵を見抜く力がつく一冊。教育誌『月刊クレスコ
』から誕生した「クレスコファイル」シリーズの第1弾! 現場
の教員や親からも環境問題を語るのに最適と好評だった連載をフ
ァイリング。
【刊行日】2009年1月20日
著者名 田中 優
本体価格/判型・ページ ¥1000/46判・96ページ
ISBN 978-4-272-40801-6
;・;・;・;・;・;・;・;
「目からウロコを落とされっぱなしでした」
「経済最優先の人間の行為が地球環境をこんなにめちゃくちゃにして・・・」
~教育誌「月刊クレスコ」連載時に寄せられた
読者からの感想より
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□◆ 注目イベント! ◇■□■□◆◇◆◇■□■
Naked Loft 2009年環境問題プロジェクト
『温暖化の最大問題~電気からどう離れるか~』
新聞、メディアに載せられないあらゆるテーマの問題を絞りその
テーマの主旨に賛同して歌えるミュージシャンとその内容につい
て話せる表現者でお互いの LIVEを通してその問題についての解決
策を導く企画を開催します。
一回目となるテーマは『温暖化の最大問題~電気からどう離れる
か~』熊本出身、オーガニックシンガーソングライター東田トモ
ヒロさんの電力を使わないLIVEに環境、経済、平和などの様々な
NPO活動に関わる田中優さん の温暖化と電気についてのトークと
この問題に対して分かりやすく案内してくれます。是非、多くの
方の参加お待ちしています。
【出演】東田トモヒロ / 田中優(未来バンク事業組合理事長)
【会場】 Naked Loft (東京都新宿区百人町1-5-1百人町ビル)
http://www.loft-prj.co.jp/naked/
【日時】2009年1月14日(水)
OPEN18:30 / STRT19:30
前売¥2,000(飲食代別)当日¥2,500(飲食代別)
Naked Loft店頭にて前売チケット販売、電話予約受付けます。
ローソンチケットでも販売します(Lコード:32712)
問:tel.03-3205-1556(Naked Loft)
□◆ 今後の講演会予定 ◇■□■□◆◇◆◇■□■
1月
11日(日)神戸市勤労会館
12日(月・祝)岡山コンベンションセンター
14日(水)Naked Loft(東京都新宿区)
17日(土)全国大学生協連東北地域センター(宮城県仙台市)
20日(火)桐朋小学校(東京都調布市)
24日(木)~ ピースボート
シンガポール~ケニア
※定員に達していたり、非公開のイベントもございますので
詳しくは、こちらをご覧ください。
http://tanakayu.blogspot.com/2008/11/200812.html
◆◇◆◇■□■□◆◇◆◇■□■□◆◇◆◇■□■□
最後までお読みいただき、ありがとうございました<(_ _)>
2日前にメルマガを配信したところですが、今朝、優さんから「
パレスチナのことが一般には全然知られていないのに不安を覚
えているので、何とか紹介できませんか?」とメールをいただき
ました。
今、パレスチナで起きていることをどう受け止めるのかの指針と、
わたしたちに何ができるのかのヒントにしていただければ幸いです。
転送歓迎です。 ブログにも掲載する予定です。 (こはら)
◆◇発行責任者 田中優の“持続する志”メルマガ担当 小原
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