帰り道


ミィちゃんと

涙のお別れを終えると

わたし達は

5年生に進級しました。


小声の東山先生は

めでたく勇退され

新たにクラス担任になったのは

新卒の若い男の先生でした。


新担任の安田先生は

声も身体も大きく

勢いがあり

おばあちゃん先生しか

知らなかったわたしは

困惑しました。


誰にでも気さくに接してくれる

安田先生はたちまち

クラスの人気者になり

最初は警戒していたわたしも

しだいに安心感を

おぼえるようになりました。


新しいクラスと安田先生は

ミィちゃんがいなくなって

抜け殻になっていたわたしの気持ちを

再び学校へ引き戻してくれました。


一学期が終わる頃には

ミィちゃんがいない学校生活にも

寂しさを感じなくなりました。


ただ

帰り道だけは別でした。

友達と別れ1人になると

ミィちゃんと

笑いながら歩いた

楽しい日々が蘇るのでした。


何度となく開け閉めした玄関

「気を付けて帰ってね。」

という優しい声

暗くなるまで遊んだ広い庭

2人で忍び込んだ

里見さんの部屋の窓など

何処を見ても

泣きそうになりました。


そんな時は決まって

zeroの曲が

繰り返し繰り返し

頭の中を巡るのです。


歌詞もメロディーも声も

何も覚えていないはずなのに

脳の一番奥から

滲み出してくるようでした。

薄暗い階段と

どんよりした視線と

泣きたくなるような

あの時の気持ちと一緒に。


そこを通るたびに

懐かしさと

寂しさと

言いようのない

心の乱れが

わたしを包みました。


ミィちゃんの家の前を

通らなければならない通学路が

卒業するまでずっと

嫌いでした。