押井守監督のアニメ映画「スカイクロラ」があまりにも印象的で、原作小説を読んでみることにした。
作者の森博嗣氏の作品は、今回の「スカイクロラ」が初めてだったが、多くを語らない、無駄のない文章で、淡々と話が進んで行く。推理小説を多く発表している作家と言うことを後で知り、何となく納得。
本作を読んだだけでは、設定がいつ頃の時代かは分からないが、おそらく近未来なのだろう。
少しだけ、非現実な世界。でも、ある意味現実。
その世界の人間は大体、戦争と宗教に支配されている(ようだ)。
また、その世界には「キルドレ」という、老いることのない種の人間が少し存在し、大体の場合、空上での戦闘を職業にしている。
彼らキルドレは、少年少女の容姿を保ち続け、寿命がない。
要するに、事故や殺人などの外的要因以外では死なない。
肉体的な成長もなく、(人工的に操作され得る)長い長い記憶は、はっきりしないものも多く、思い出に依存することもなく、永遠に今を毎日生き続けていく。
そんな、話。
何て暗い作品だ!と思いながらも、最後まで読むと、淡々と断片的に伝えられた情報がつながり、納得する。そして少し切なくなる。
プロローグ中の、
「世の中のほとんどの差は、直接か間接かの違いなのだ」
の1文が、私には最も印象的だった。
ストーリーは、虚無的を通り超して鬱小説とでも言いたくなるようなものだが、
戦闘機の飛行シーンの描写は、青くて広い空が目に浮かぶ、爽快感のあるものだ。
この対比が何とも言えない雰囲気を作っていて、淡々延々した日常と、澄んだ美しい空で繰り広げる戦争がセットになると、私は、答えのない問題を傍観するような状況になってしまった。
(映画では、立体的なCGの飛行シーンが、非常にリアルでよく出来ている一方、それ以外のシーンは平面的な絵で描かれていて違和感を感じたが、今思えばその対比を狙ったのかと。)
この作品、連作で他もあるようで、次は「ナ・バ・テア」を読んでみたいと思う。
が、その前に、何か明るい作品を挟んで、気分の平衡を保ったほうが良いのだろうか。
各章に引用のあったサリンジャーのナインストーリーズを読むのも良さそうだ。
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