新興宗教パンドラ教 | ふぇいばりっとしんぐinピルケース。

新興宗教パンドラ教

2009年、ゼロ年代の終わりに僕は一本の映画に出会った。


J・キャメロン監督の「アバター」。


世界興行収入歴代1位に、僅か一ヶ月で到達した歴代最高の観客を集めた作品

なのでこれを読む人も名前くらいは聞いたことがあるだろう。

だから詳しい説明は省略するけれど、僕はその中に出てくる

人間と他の惑星の生物“ナヴィ”のDNAを合成して作られた“アバター”に心惹かれたんだ。


その当時の僕は何をやっても上手く行かず、人生を諦めかけていた。

もし、そんな僕にアバターを手に入れるチャンスがあれば

僕の意識を持ったまま全く違う、新しい人生を手に入れられるような気がした。


何度も映画館に通ううちに僕は半ば冗談、実は本気でアバターを手に入れたくて仕方なくなった。

『人間なんてやるのはもう終わりにして、ナヴィになりたい・・・・もう人間は嫌なんだ・・・。』

そう呟きながら、時間があれば「アバター」を見続けた。


そんな何度目かの映画館で隣に座った優しい笑顔の男が突然僕に話しかけてきた。

「こんにちは。キミ、毎週ここでこの映画を観ているね。」

男は見たことも無いような澄んだ目をして僕を見つめ、語りかけた。

「・・・・はい。」同じ男なのにちょっとドキドキしながら僕は答えた。

すると、男は一枚の小さな名刺をそっと差し出し、小声で囁いた。

「僕はこの団体の手伝いをしている者なんだ。・・・キミのように真実に気が付く能力のある若者を

世界中から集めるのが僕の仕事なんだけれど・・・。」

僕は名刺を受け取り、視線を移す。

そこには「新興宗教パンドラ教」と書かれていた。


「・・・パンドラ・・・?」

「そう、パンドラ教。キミはこの作品がどのような意図、意味を持って作られたか、その真実を

知っているかい?」

「え、ええ、まぁ。キャメロン監督が3D映画の・・・」

僕がそこまで言うと男は綺麗な人差し指をそっと僕の口に当てて首を振った。

「そう、世間ではそういう事になっているが事実は違うんだ。・・・知りたいかい?」

ぼくは自分の口元の男の指を意識して顔を真っ赤にしながらコクリと首を縦に振った。


「そう。やはりキミも僕達の仲間なんだね。では、教えてあげよう。

実は僕達のこの体、人生の苦しみや悲しみ全ての始まり、原因である肉体、

コレ自体がアバターなんだよ」


僕は一瞬、男が何を言っているのか理解できなくなった。


「・・・驚くのも無理は無い。実はキミの体は惑星パンドラの生物、ナヴィがヴァーチャルマシンで操作している

アバター、つまり人形なんだよ。

キミは今までの人生で本当に楽しかった事、嬉しかった事、悲しかった事がひとつでもあったかい?

今までに本当の友人と言える人間が一人でもいたかい?

家族はキミを愛していると実感できた?

恋人は?

いつもキミは自分自身に違和感を感じ続けて生きてきたはずだ。」


僕は今までの自分の人生を全て男に言い当てられた気がしていた。


「だろ?その違和感、自分が周りの人間に馴染めない感覚、自分自身をこの世界から消し去りたいと

願う心、それら全ての答えがコレなんだ。『我々の肉体は作り物、ただのアバターである』 」


男は勢いをつけて一気に捲くし立てる。


「そう、僕達はナヴィが操作しているただのアバター、人間の形をした人形でしかないんだ!

だからこそ、本物の人間とは感じ方も、生き方も、価値観も全く違う。

でも、キミは一人じゃない。そして、救われる道は残されている・・・・。」


「そ、それ・・・・・ど、どうすれば・・・・・」


「簡単さ、自分を操作しているナヴィに“起きて”もらうのさ。

そうすれば、僕らの精神はこの下らない人間の形の人形から開放され、本来の姿、

ナヴィの姿に戻り、惑星パンドラで幸せに暮らせるんだよ。素晴らしいだろ?

知ってたかい?人間の言う「天国」とは惑星パンドラの事なんだよ。

さあ、キミも僕達と一緒に修行して自分自身に「起きて」貰い、人間からナヴィの姿に戻らないか?」


・・・・・・こうして僕は新興宗教パンドラ教に入信した。


毎晩、僕は辛い修行の後、夢の中でパンドラでネイティリみたいな美人のナヴィと幸せに暮らす夢を見ている。


いつか本当の僕が目を覚まし、この人の形のアバターから僕の心を開放してくれる日がくるのを願いながら。



ハイ、おしまい!!(笑)


いやぁ、下書きもしないで一気に書きましたけどね

「タクシードライバー」「マトリックス」「ファイトクラブ」「ナチュラルボーンキラーズ」とか

「アバター」とかあまりに魅力的な「現実逃避映画」を観ると

「こんなことになったりしてなぁぁぁーーーー」とか想像するデスヨ。


実際になったらイヤだね!w


では、疲れたのでこの辺で。


この作品は実際の人物、作品、団体とは一切関係ありません

完全にフィクションです。

マネして宗教立ち上げたり、信じたりしないでねw。