あの日から何日、いや、何か月が経ったのだろうか。

 

いまだなお、終わりの見えない道を歩き続けている。

 

いつか終わると信じてはその愚かさに打ちひしがれ、幾度となく繰り返される心の乱高下に疲弊していた。

 

それは私だけでは無かった。

 

あの日から、何気ない日常を送りながら溢れ出る怒りや悲しみを押し殺し、日々を過ごす妻がいた。

 

考えてもしょうがないと言わんばかりに、私の何倍も前向きに生きている彼女がいた。

 

自分とは違う彼女の強さに感服し、影から私をサポートし続けている状況に頭が上がらなかった。
 

雪子との修羅場以来、職場ではほとんど顔を会わせていない。

 

向こうもこっちも意識的に避けているのだろう。

 

そんな気持ちが現実を動かしているように感じる。

 

最近は八代とも会話をすることが少なくなった。

 

黒川が八代にいまだ攻撃をしているのかもわからない。

 

どこか、あの処分以来、八代も私も気まずい雰囲気になってしまったのかもしれない。
 

ある意味では穏やかな仕事場での職務遂行は久しぶりの感覚だった。

 

いまだに部署の電話がなるとドキッとするし、知らないメールアドレスから連絡が来ると緊張が走る。

 

その時、妻から一本のLINEが入った。

 

「朝から調子が悪いから病院に行く」と一言だけ書いてあった。

 

普段体調を崩さない妻だから、とても心配になった。

 

「大丈夫?わかった。また教えて」とだけ打って、連絡が来るのを待った。
 

夕方になっても妻からの連絡は無かった。

 

心配になりLINEを入れてみる。

 

今日は早く帰ろうと支度をしていると、突然携帯が鳴った。

 

知らない番号からだった。

 

誰からだ・・・。

 

基本的に知らない番号は出ない。

 

特にあの一件から、絶対に出ることは無かった。

 

しかし、なんとなく今日は違った。

 

よくわからない感覚の中で、いつもなら決して押すことの無い通話ボタンを押した。

 

「もしもし・・・」

 

「もしもし?」

 

男性からの声だった。

 

「はい」と言うと食い気味に話を続けた。

 

「実は奥さんが救急車で搬送されまして、今病院に向かっています」

 

え・・・

 

あまりに突然のことで頭が理解できなかった。

 

鼓動が高鳴るのを感じながら、自分に落ち着けと言って話を聞いた。

 

全ての話を聞いたところで一つ深呼吸をした。

 

状況はこういうことだった。

 

朝、病院に行くと言っていた妻は、自分の足で病院に行った。

 

しかし、病院に着いた後に体調が悪化し、しばらく休んでいたが、熱も上がり検査の結果も良くなかったことで、急遽大きな病院へと運ばれたということだった。

 

信じられなかった。

 

そして狼狽した。

 

ひとまず急いで会社を出て、妻が入院している病院へ向かった。