死にかけていた魚が、ほんの少しの水を得てようやく息を吹き返した。
ここ数日の私を表現するのにはピッタリな言葉だ。
ここまでひたすら攻撃を受けながら瀕死の状態で生きてきた。
しかし、ここに来て潮目が変わってきた。
復活の狼煙を上げる時が来たのだ。
完全に息を吹き返した私は、今までに無い気持ちの強さを持ち始めていた。
しかし、そんな時、忘れていた重大なことを認識させられる。
ある日、LINEが続けて飛んできた。
その相手は、同期の雪子からだった。
「ねえ、体調は良くなった?久しぶりに会えない?」
少しイライラしているようにも取れるLINEだった。
雪子は年齢は下だが、同期入社の1人でとても気が合う仲間だった。
数年前からよく仕事の相談をし合いながら、プライベートでも出掛ける仲だった。
最初は仲の良い友人のような存在だったが、ある時、酒の勢いで過ちを犯したことがあった。
それ以来、ずるずると慢性的にその関係性を続けていた。
しかし、最近のゴタゴタの中で、ここ最近は全く会っていなかった。
もちろん、雪子にはそのことは伝えていない。
そんなことを雪子が知ったら大変なことになることは分かっていた。
むしろ、この状況で雪子との関係が万が一黒川に知れ渡ったとしたら、その何倍も大惨事になることくらい容易に想像がついていた。
雪子には、体調不良であることと、家庭的な問題で会えないと言い訳を並べてしばらく会うことを拒んでいた。
しかし、ここに来て雪子の我慢も限界に近づいてきたのかもしれない。
連日送られてくるLINEに、私もこれ以上嘘をつくことができなくなっていた。
私は決断を迫られていた。
この状況で雪子との関係を続けることなどできない。
全てのことを正直に吐露し、謝罪をした上で、関係性を断つことを考えていた。
想像するだけで目の前が霞む。
人一倍気が強く感情的な雪子が、突然その事実を目の前に突きつけられたら、何をするかわからない。
暴走して職場の誰かにリークすることも考えられるし、最悪、家族に何かをする可能性だってある。
今更ながら、自分の起こしてきた一連の不適切な行動に後悔の念しかなかった。
ここまで来たら中途半端なことはできない。
スマホを取り出して、静かにLINEを打った。
「ちょっと話したいことがあって。明日の夜会えないかな」