翌朝の通勤列車。

 

初めて訪れた警察署で話したことを振り返っていた。

 

1時間はいただろうか。

 

まさか自分が警察署に行って、こんな相談をするなんて夢にも思わなかった。

 

弁護士への相談も含め、1年前では想像もしなかったことが、今目の前で現実的に起きている。

 

完全に自分を取り巻く環境が変わってしまったようだ。
 

一定の安心感を覚えながらも、少しずつ変わる最近の感情の変化を感じていた。

 

ここまでこてんぱんにやられ続けてきたことへの怒り。

 

自分にもまだプライドは残されていた。

 

そして、それが黒川への怒りから次第に柿子への怒りに変わっていることもわかったいた。

 

これもあいつらの作戦なのかもしれないが、ひたすら黒川の影に隠れ、自分は何のリスクも背負わずに私や家族を攻撃する。

 

ともすれば黒幕的に後ろで動いているかもしれない柿子への怒りが日に日に増大してきていた。

 

そもそも、俺の敵は黒川ではなくお前なはずだ。

 

そう思うと、震える感情が芽生えてくる。

 

このままでは絶対に許さない。

 

そう思いながら、何かできないかを日々模索していた。
 

電車に揺られながら考えた。

 

柿子が今どこで何をやっているかは全くわからない。

 

自宅の住所も最寄りの駅さえも不明だ。

 

しかし、何でも良いから情報を掴みたかった。

 

こちらは職場、家族の情報、自宅住所、すべてを握られている。

 

このままではこちらが弱すぎる。

 

まっとうな戦いをするためには、一つでもヤツの個人情報を掴むことで、対等な立場になることが必要。


そんな時、ふとある時柿子が行っていたことを思い出した。

 

「父親は有名企業の役員で、実家が一等地にある」と言っていた。

 

そして、次の瞬間、もう一つの言葉が突然甦った。

 

「実家が有名政治家の隣で、よく人が集まってたよ」

 

これだ。

 

その政治家の名前を今でもしっかり覚えている。

 

早速、その政治家の名前と住所を検索してみる。

 

それなりの検索結果は出てくるが、すぐにヒットするようなサイトは無い。

 

さすがに出てこないか。

 

有益な情報がありそうなサイトはないか、1ページ1ページ開き、スクロールを重ねる。

 

有名な人間とはいえ、さすがに場所が特定できる個人情報が公にさらされている可能性は極めて少ない。

 

普通に考えてみれば当然のことだ。

 

特にそれらしい情報を得ることができないまま、最寄りの駅に着いてしまった。