昨日、弁護士と契約を交わし、いよいよ代理人として動いてもらうことになった。
そして、私がすぐにできること。
それは警察への相談だった。
この辺りから仕事をちょこちょこと休むようになった。
平日の時間でなければ弁護士と話すことができない。
ましてや警察ともなるとなおさらだ。
朝、警察署が開く時間を待った。
時間になるとすぐに電話を入れた。
全く知らなかったことだが、この手のことは生活課に電話するらしい。
もちろん、そんなことなど知る由もない。
40年以上、警察のお世話にならずに平和に生きてきたのだから。
「はい、生活安全課です」
低いトーンで声が聞こえた。
私は震える手を抑えながら、ゆっくりと切り出した。
「あ、すみません、ちょっと相談したいことがありまして」
そう切り出して、10分くらいかけて今までの話を必死に伝えた。
すると、「わかりました。では、一度警察署にお越しいただけますか?」
そう言われ、早速、今日の午後に面談の時間をもらうことになった。
そして、約束の時間。
妻に一言、「警察に行ってくるわ」とだけ言って、足早に家を出た。
最寄りの警察署だからもちろん知ってはいるけど、来たことなど無い。
そう思いながら玄関口に近づくと、なんとなく記憶が甦ってくる。
いや、来たことがある。
確か免許の更新で。
そんな記憶を辿りながら、恐る恐る玄関から入る。
制服に身をまとった警官達が一斉にこちらを見る。
別に犯罪者でも無いから堂々としていれば良いのだが、謎の恐怖に包まれている私は怯えながら、入口の案内図に目をやった。
4Fか。
生活安全課を目指して4Fに辿り着いた。
そして、受付で先ほど電話に出てくれた男性の名前を呼んだ。
すると、思ったよりも小柄でひ弱そうな男性がやってきて、「こちらにどうぞ」と言って個室に案内してくれた。
部屋に入ると、そこは取り調べでもできそうな狭い空間だった。
男性は真顔で目を合わすこともなく今回の経緯について改めて聞いてきた。
私は藁をもすがる思いで、事細かに今まで起きたことと、その時の感情を交えながら丁寧に説明した。
担当者はしっかりと話を聞いてくれた。
そして、端的に二つ伝えた。
「まず、この状況であれば被害届を受理するのは難しいです。もしできることがあるとすれば、男性に警告を促すことです」
なるほど、刑事事件は無理か。
警告を促す手段も考えたが、今は黒川を煽ることはしたくなかった。
ひとまず、何もせず自衛手段に勤めるということで話は終わった。
具体的な成果は無かったけど、警察に話ができた安心感は大きかった。
少し軽くなった肩を揺らしながら、家へと戻った。