八代から黒川に送られた最後通告のメールにはこう書かれていた。

 

そこには今までの募った怒りを露わにする八代の言葉があった。

 

ビッグイベントである学会を控えた精神状態もそこに拍車を掛けたのだろう。

 

「何度も言いますが、処罰をするかどうかは私が決めます。前原も会社と家族に誠意ある対応をし、お二人にもしっかりと謝罪をした認識です。ご自身が理不尽な対応をされていることを分かっていますか?これ以上、私達に連絡を続けるようでしたら、次の手段を講じますのでご留意ください」


短い文章だったが、普段は決して見せない八代の感情的な部分が出ている文面だった。

 

私は心強かった。

 

数日後に行われる学会本番を前に、こんな対応をさせていることが本当に申し訳無かったが、自分の代わりに闘ってくれていることが嬉しかった。

 

しかし、このメールを受け取った黒川がどんな対応をしているのか。

 

ヤツのしつこさがここで終わるのか、それともまた新たな攻撃を仕掛けてくるのか、見えない不安が押し寄せてきた。
 

そこから数日返事は無かった。

 

八代からの最後通告が効いたのか、それとも次の作戦を考えているのかはわからない。

 

しかし、何も音沙汰が無いのは不気味な時間だった。

 

私も仕事のボリュームがピークに達していて、八代もいよいよ明日が学会の本番日だった。

 

お互い目の前の業務に忙殺されながら、黒川のことは頭の中から薄れていっていた。
 

そんな時に、学会の現場に入る八代からメールが入った。

 

それは黒川からの返信を知らせるものだった。

 

「黒川からこういう返事が来ました。これでようやく落ち着くでしょう」

 

そう締めくくられたメールの下に、黒川からの返信内容があった。

 

そこにはこう書かれたいた。

 

「お忙しい中、ご返信有難うございす。ご迷惑をお掛けて申し訳ございません。仰る通りです。八代さんのご判断にお任せします. 何度も何度も申し訳ございません」

 

予想をしていなかった返事だった。

 

ヤツの性格からすれば、何がしかの取引をしてくる可能性が高いと思っていた。

 

しかし、思いのほか下手に出ながら謝罪を繰り返すという予想外の内容だった。

 

もしかしたら、八代の言う通り、これで本当に終わるかもしれないという期待が頭をよぎった。

 

改めて黒川の文面を読み返してみた。

 

しかし、改めて読んでみた時に、私はそこにある違和感を感じざるを得なかった。