不思議でしょうがない。

 

今まで一度も無かったことが立て続けに起きていることが、あまりに不思議だった。

 

いきなり近所のおじさんが桜の枝をくれないかと言ってくる。

 

急に家の近くに不審な車が停車する。

 

そして、突然我が家の駐車場に不審者が座っている。

 

この家に何年も経つが、今までこんなことは一度も無かった。

 

それが、この数か月間の間に一気に起こったのだ。

 

本当にたまたまだったのか。

 

それともどん底に落ちているメンタルがそれを引き寄せたのか。

 

はたまた、神のいたずらか。

 

どれを取っても明確な説明はできなかった。
 

とりあえず不審者が危険人物ではないことがわかってホッとしていた。

 

そして、妻への恐怖の書類が送られてきてからもう1ヶ月くらいが経とうとしている。

 

この間、不思議な出来事は立て続けに起こったものの、黒川からのアクションは何も無い。

 

毎日毎日、いつ攻撃が来るかと緊張感の中で生活をしてきた。

 

仕事中も電車の中も家の中でも、気が休まることは全く無かった。

 

それが、黒川の作戦なのかもしれない。

 

あれだけの攻撃を受けた後に、急に静けさの中に身を置けば、どうしたって恐怖心や不安が生まれてくる。

 

実は、物事が動いているほうが私の心は安定を保っているのかもしれないと気づく。

 

終わってほしい気持ちとは裏腹に、どこかで何かを待っているこの時間が地獄なのだ。


しかし、この攻撃がこの先ずっと続くことも正直きつ過ぎる。

 

きっと相手だって楽な状態ではないだろう。

 

攻撃される方も攻撃する方も、お互いにそれなりのパワーを要することはわかっている。

 

向こうだってどこかで終わらせたい気持ちはあるだろう。

 

しかし、思いも寄らない私の言動に対して、一度振り上げた拳を下ろすにもまた簡単なことではないだろう。
 

冷静になって今の状況を考えた。

 

ヤツが望んでいることは、当初は金だった。

 

しかし、それが叶わなくなった時、会社に知らせること、妻に知らせることに変わったはずだ。

 

それが思わぬ形ではあるが、私の手によって実現した。

 

となれば、もう黒川の望むことは終わったはずだ。

 

そう思うと、この闘いが終わりに近づいてくることは時間の問題かもしれないと感じた。

 

少し心が落ち着いてきた。

 

もう少しで必ず終わる。

 

あと、ちょっと頑張ろう。

 

そう自分を鼓舞した。

 

そして、この時は全く気付かなかった。

 

その考えが極めて甘い考えだったということを。