自宅の駐車場に不審者が来てから5日は経っただろうか。
不思議なことに、あれからその不審者は一切姿を現さなかった。
これは作戦か。
どこかで誰かが我が家を監視しているのだろうか。
考えれば考える程に頭がおかしくなってきそうだ。
もしかしたらこれもヤツの作戦かもしれないと冷静になる。
もう考えてもしようがない。
覚悟を決めて、不審者が現れたら対応するしかなかった。
とある休日。
外に出て子どもと遊んでいると、右手から大柄な男がのっそのっそと歩いてきた。
見慣れない顔だ。
しかも随分と住宅街に沿って歩いてくる。
不思議に感じた私は、子どもを引き寄せ玄関先まで戻った。
その男はこっちを凝視しながら、家と道路の境界ギリギリのとこを歩いていった。
ピンと感じた私は、急いで家に戻り、妻を呼んだ。
走りながら外に出た妻は、ゆっくりと歩く男の後ろ姿を見てこう呟いた。
「あ、あの人だ・・・」
やはりそうだった。
先日我が家の駐車場に無断で座り込んでいた不審者だったのだ。
私は無言で玄関の階段を駆け降り、男の後を静かについていった。
正直、恐かった。
もし、この男が我が家に危害を加えるためにうろついているのだったら、攻撃を受ける可能性は大いにある。
しかも、それは私だけでなく、家族に対しても同様だった。
しかし、本人を見つけた以上、このまま黙って見過ごすわけにはいかなかった。
気づかれない様にゆっくりと後を追う。
男は振り返ることも周りを気にすることもなく、ゆっくりと歩いていく。
我が家から500mくらい離れた場所で右に曲がると、なんとその先にある家に入っていったのだ。
え?・・・
思わず目を疑った。
黒川の追手だという意識が強かったせいか、まさか近所に住んでいるなどとは予想もしていなかった。
しかし、間違いなくその家の中に入っていったのだった。
私は頭の整理が追いつかなかった。
いまだ黒川関連の人間であることは排除できなかったが、どこかで少し安心している自分がいた。
もしかしたら、これは黒川とは全く関係の無い人物かもしれないと。
だからと言って、駐車場に座り込んでいた理由はどこにも見つからない。
なぜ我が家の駐車場に入り込んだのか、目的は何なのか、引き続きその答えを探し出さなければならなかった。