黒川の職場を突き止めた後も、ヒマさえあれば黒川について調べた。
そして柿子についても数少ない情報を頼りに調べ続けた。
仕事以外の時間にリサーチするのが私の日課になっていた。
この日も昼休みになるやいなや会社を出て喫茶店に向かう。
相変わらず食欲もないから、サンドイッチとコーヒーを頼む。
今朝、鏡で見た自分の姿はだいぶやつれていた。
体重計には乗っていないが、おそらく5kg痩せてしまったのではないかと思う。
日々降りかかる恐怖と積み重なっていくストレスにより、体も心もみるみる削られていた。
そんな中にあって、黒川の会社を突き止めたことが唯一、自分を鼓舞するパワーになっていった。
毎日食い入るようにスマホを眺め、どんな小さな情報でもヒントになるものは徹底的に調べた。
この作業が心の安定剤になっていたのかもしれない。
丁度、サンドイッチが運ばれた時、一本のLINEが入った。
そのLINEは妻からのものだった。
おもむろにメッセージを開くと、その内容に目を疑った。
明らかに焦った様子でこう書かれていた。
「やばい。駐車場に誰かいる」
一瞬、全く状況が掴めなかった。
何度も妻からのメッセージを見直した。
どういうことだ・・・。
駐車場に誰かがいるなんてことは、いまだかつてないこと。
私が考えているうちに続けてLINEが入った。
「車で帰ってきたら、知らない人が駐車場に座ってた。とりあえず家を通り越してきた」
妻が車で帰ってきた時に、見ず知らずの人間が駐車場に座っていたとのこと。
子どもと一緒だった妻は、猛烈な焦りを覚えながらも、車を止めずそのまま家を通り過ぎて走り去ったようだ。
賢明な判断だ。
誰が何の目的で何をしているかはわからないが、人の敷地に無断で入りこむなんて極めて危険な状態だ。
そう思っている矢先に、心臓がドキッとした。
そして一瞬にして血の気が引いた。
まさか、黒川か・・・いや、でもそんなことがあるだろうか・・・。
今日は平日でヤツも仕事もしているだろう。
ましてや、自ら我が家に乗り込んで駐車場に居座るなんて、犯罪に近いことをするだろうか。
私の頭はこの数分で大混乱に陥っていた。
とにかく今は妻と子どもの安全を確保することが最優先だ。
冷静にこう伝えた。
「とにかく車から出ないでもう1周してみて」
妻の帰りを待っていたのか、それとも一時的な何かなのか。
まったくもってわからないが、心臓の鼓動がますます激しくなってくることは感じた。