酒が回ってきた。

 

吐き気は気づいたら落ち着いていた。

 

もう一杯、テキーラを頼んだ。

 

酔いが回ってきたら、自分の気分も高ぶってきた。

 

あの書類を読み始めた頃は恐怖に占拠されていたが、今はふつふつと怒りが込み上げてきた。

 

それは黒川に対するも怒りもさることながら、柿子への怒りのほうが強かったかもしれない。

 

それは何故か。

 

あそこまで具体的に生々しく書かれていたあの内容。

 

それは、黒川自身が調べ上げただけではあそこまで絶対に書けない。

 

つまり、内容のほとんどは、間違いなく柿子が黒川に暴露したことは容易に想像ができた。
 

途中までは、ずっと前から私達は探偵か何かに終われ、どこかでに盗聴器が仕掛けられていた可能性を考えた。

 

しかし、1回や2回ならそれも考えられる。

 

何十回もあった出来事に対して、その全てに探偵や盗聴器をつけることは不可能に近い。

 

それがどれだけの手間と金額になるのかくらい、ド素人の私でも判断ができた。

 

これは間違いなく、黒川と柿子の共同作業によるものに違いない。

 

それを思えば思うほど、柿子への怒りが次第に激しくなっていった。
 

気づけば三杯目のテキーラが運ばれてきた。

 

チェイサーで頼んだコーラを半分飲み干したところで、私は一つ冷静になった。

 

この書類の記録をしっかりと残しておこう。

 

宅急便の封筒から、全ての書類の写真を撮った。

 

そして万が一スマホを紛失しても残せるよう、クラウドにもしっかりと保存した。

 

ここまでやられると、もう落ちるべき奈落の底も無くなっていた。

 

後は這い上がるしかない場所まで落ちた。

 

そこには、今まで気づかなかった、私の中に微かに残っていたプライドがあった。

 

そこまでやるならこっちも黙ってはいられない。

 

今の自分に何ができるか、冷静になって考えた。

 

カバンからはみ出ていた書類が見えた時、ある文字が見えた。

 

それは、おそらく受取時に配達員が付けたであろう受け取った地名らしき文字が書いてあったのだ。
 

私の酔いは一気に冷めた。

 

三杯目のテキーラを一気に飲み干し、その地名を調べた。

 

すると、私の予想は的中した。

 

実際に存在する地名で、かつ黒川と会ったあの場所から程近い場所だった。

 

この近辺から黒川が書類を送ったことは間違いなかった。

 

それが自宅なのか、あるいは会社なのか、はたまたカモフラージュでここから送った可能性も高い。

 

この瞬間、私の行動スイッチが全てONになった。