その書類が送られてきた時、家に帰ってすぐに中身を確認するつもりだった。
しかし、何故か、すぐに開けることはしなかった。
いや、むしろ恐怖で開けられなかったというのが本音だろう。
書類が自宅に送られてきてから2日が経過した。
仕事も一段落するタイミングだったから、この日に文書を確認しようと決めていた。
とてもじゃないが、家で読む気にはなれない。
妻に今日は会食があると言って、私は一人でカラオケに入った。
アルコール飲み放題を注文して2時間コースで入った。
2日間温めていた書類を出す。ヤマトの宅急便で送られてきたようだ。
宛先にはしっかりと自宅の住所が書かれ、妻の名前も間違いなく書かれていた。
何故、自宅の住所も妻の名前も、そして妻の誕生日も知っているのか。
想像するだけで恐怖に包まれる。
黒川の不適な顔が脳裏をよぎる。
ここまで来るとヤツの所業はプロに近い。
あらゆる手を使って私のことをジワジワとなぶり殺していくつもりなのだろう。
私は深呼吸を一つして書類を再び開けた。
そして、1ページ目から読み始めた。
丁度、その時、ドアが開いた。
とっさに書類を隠して入ってくる人間を睨みつけた。
それはビールを運んできた店員だった。
ついビックリしてしまった。
何も悪いことをしていないのに、怪しい挙動だったに違いない。
注ぎたてのビールを口いっぱいに含み、おもいっきり息を吐いた。
文章はとても穏やかなに書かれていた。
でも、節々に抑えられない怒りが伝わってくるかのような静かなる熱きものを感じる。
そして、そこには何が書かれたいたのか。
それは、私と柿子が何度にも渡る逢瀬を重ねてきた、ほぼ全ての細かなやり取りが記載されていたのである。
この日、この時間にこの居酒屋に入ったこと。
ここでは終始穏やかに飲み会をし、特に何も無かった。
そして、二人の関係が段々とエスカレートしていく流れも鮮明に書かれ、熱く燃え上がる二人の言動も全て刻まれていた。
この店で体の接触があり、その行為がその後に何度なく繰り返されてきた事実が、事細かに書かれていたのだ。
私は思わず、読む手を止めて目を瞑った。
そして半分以上残っていたビールを一気に飲み干した。
なんてことだ。
なぜ、ヤツはここまでの細かい情報を全て知っているか。
私とて全てを覚えているはずがない。
むしろ、私よりも詳しく事情を把握しているくらいだ。
再び書類を読み端得ようとした時、猛烈に吐き気が襲ってきた。
私は急いで書類をカバンにしまい、トイレに駆け込んだ。飲んだビールが全て逆流した。