序盤から一方的な攻撃を仕掛けられてきた。

 

サンドバックのようにその攻撃をひたすらに耐えてきた。

 

そして、自らの手で家族と会社に己の不適切な言動を暴露し、黒川に最後通告をつきつけた。

 

この最初で最後の攻撃をもって、この事件は終わると勝手に思っていた。

 

しかし、この闘いはそんな甘い闘いでは無かったのだ。

 

既に今まで自分が全く体験したことの無い未知の領域に足を踏み入れている。

 

何度も何度も襲ってくる恐怖を振り払って地獄の毎日を送ってきた。

 

もう心も体もズタボロである。

 

これ以上闘えないと思ったから、全てを告白してピリオドを打とうと思っていたのに、むしろそれが新たな始まりを生むことになってしまった。
 

どこまで続いていくのか・・・

 

終わりが見えないレースに参加してしまった自分自身に対する恨みは計り知れない。

 

正直、この状態で自分がどこまでこの生活に耐えられるかわからなかった。

 

ふと、黒川の言葉を思い出す。

 

「俺はな、何度もこんな経験をしている。やられたこともやったこともある」

 

その言葉通り、ヤツは明らかに慣れていた。

 

ただの男ではないことは、もう十分に分かっていた。

 

最初の段階で、黒川は用意周到なまでにありとあらゆることを想定し、完璧な攻撃態勢を整えてこの闘いに望んできたのだ。

 

甘かった。

 

全てが甘かった。
 

黒川が八代と会ってから、しばらく静かな日が続いた。

 

おそらく、黒川と八代のやり取りはその後もメールなどで続いていると思われる。

 

しかし、八代から逐一状況が伝えられることは無かった。

 

ここまで事が大きくなってくると、八代も今までと同じ精神状態ではいないだろう。

 

この後、黒川が暴走することも十分頭に入れているに違いない。

 

私も八代も、次に恐れているのは、私の家族に何かしらのアクションが取られることだ。
 

後から分かったことだが、予想通り、黒川と八代はコンタクトを続けていた。

 

黒川は丁寧に、そして静かに、八代に攻撃を仕掛け続けていた。

 

そして、新たな事件が幕を開けることになる。

 

その序章はゆっくりと、着実に、その歩みを進めていた。