このままどこかへ消えて無くなりたかった。

 

何者でも無い一握りのクズになって。

 

何でこんなことになったんだろう。

 

こんな時は反省も後悔もフワフワした状態で私の上に浮かんでいる。

 

それよりもこんな境遇に陥ってしまったことへの悲哀と絶望、それだけが私の心を取り囲んでいた。

 

家に戻らなければならない。

 

家族が待っている。

 

震える体を必死に起こしながら、実家へと戻った。
 

この日は終始暗かった。

 

おそらく顔色も悪かっただろう。

 

作り笑いをするのが必死。

 

みんなで食べた夕食の味など全く覚えていない。

 

それどころか、ほとんど飲み物しか口にできなかった気がする。

 

帰りの車の中で妻が家族旅行の話を始める。

 

子どももテンションMaxで行こう行こう!と言う。

 

いつもなら話を広げて車内でエア旅行を楽しむのだが、今日は全く違う。

 

何を言われてもだいたい上の空。

 

返事も空返事で、人間の形をしただけで中身はものけの殻だった。

 

「パパ、変なのー」

 

と子どもに言われたことだけはしっかり覚えている。

 

隣で楽しそうに喋る妻と目を合わすことはできなかった。

 

二人の声を聞いているだけで、いちいち心に鋭いトゲが刺さってくる。

 

逃げたかった・・・本当に逃げたかった。
 

家も実家も、いつもなら一番ホッとする場所。

 

私は旅行に行くのも出掛けるのも好きだが、それ以上に家が大好きだ。

 

何故なら、そこが唯一本当の自分でいられる場所だから。

 

でも、それがあの日から変わってしまった。

 

最もいたい場所から最もいたくない場所へと変わってしまった。

 

どういう顔で日々家族に会えば良いのかわからない。

 

苦しい。

 

とにかく苦しさだけが家に住みついてしまった。

 

外に出れば恐怖に襲われ、家にいれば何とも言えない感情に支配される。

 

もはや私の居場所はどこにも無くなってしまっていた。