言っても課長だから、中間管理職はとにかく忙しい。
隙を見せたら全ての仕事がうまくいかなくなるから、それだけは許されない。
何とか冷静になりながら、何とか集中力を保ちながら、一つ一つ仕事をこなしていく。
一つ仕事を終える度に、例の事がまた脳内を占拠していく。
それを必死に振り払ってまた次の仕事へと移る。
全く仕事が手に付かない状態である。
休憩の時間も昼休みも、絶対に彼女に会わないように細心の注意を払う。
とりあえず今は彼女を刺激しないこと。
その時が来れば色々と話す必要はあるけど、今はその時じゃないことをわかっていた。
一方、向こうは話をしたいのか、それとも近づいてほしくないのか、それも全くわからない。
それがまた私にとっては不気味だった。
なんとか午前中を終えて、昼休みに入る。
誰よりも早く会社を出て喫煙所に向かう。
今日の朝から数時間、全く生きた心地がしなかった。
唯一、この喫煙だけは心が休まる場所だった。
食欲など出るはずもないから、昼食はタバコと決めて、冷静に考えることにした。
柿子がこのタイミングで全てを話したということは、私が知らないところでその前兆があったに違いない。
一つ目の可能性はパートナーによるトリガー。
彼が我々の関係性に気づいていて、それを問い詰められたことで突然あの告白になったのかもしれない。
もう一つは彼女が耐えられなくなった可能性。
二人でいる時はそんな素振りは一切見せないが、知らず知らずに本気の感情へと変化していったのかもしれない。
それが現実にならないとわかって、どうしようも無いその感情を自らパートナーに暴露することで全てをリセットしたくなった。
その可能性も捨てきれない。
いづれにしても、私が恐れることは二つ。
柿子が暴走して社内にそれを言うこと。
そして、パートナーが私もしくは家族や会社に対して攻撃をしてくること。
それがとにかく恐怖でしかなかった。
1時間の休憩を何も食べず、ひたすらタバコだけを吸い続けた。
彼女と出くわしたくないから、終了時間ギリギリでオフィスに戻る。
憂鬱な状態で午後の業務に入る。
まさか、こんなに早くも恐れていたことがやってくるとは思わなかった。
あのメールを受け取るまでは。