楽しい日々は続いていた。
二人とも朝の顔と夜の顔を使い分けながら、仕事もプライベートも上手に立ち回っていた。
しかし、ふとした瞬間に、このままではいけないと強い反応が出る。
分かっていても、体に刻まれてしまった大人の背徳感は消すことができない。
吹き出てくる迷いを全力で消し去ろうとする勢力が圧倒的な強さで支配してくるのだ。
それは彼女も同じだった。
二人でいる時は、お互いのプライベートな感情は一切出さない。
暗黙のルールの中で、静かに熱くその熟した果実を口に入れていくのだった。
しかしその裏には様々な感情がうごめき、自分の知らないところで様々な事象が芽を出していることに気づいてはいなかった。
そして、その時は突然やってきた。
いつもの朝、少し早く目覚めた私は、眠い目をこすりながらスマホを手に取った。
いつもより30分程早く起きてしまったようだ。
LINEの通知が来ていた。
その時間は夜中の2時。
誰だ夜遅くに。
メッセージを開くとその送り主は柿子だった。
ん?なんだこんな時間に。
酒でも飲み過ぎたのか、寂しくでもなったのか、不思議な時間帯に送られてきたLINEをすぐに開いた。
そして私は一瞬、目を疑った。
そこに書かれていたのは、よもや想像もできないくらい恐ろしい内容だった。
「彼に全てを話しました」
一瞬、全身の筋肉が硬直した。
動けなかった。
そして、声を出すこともできないくらい唇も固まっていた。
一つ、ゆっくりと深呼吸をした。
家族に悟られないように静かに部屋を出てトイレに向かった。
もう一度LINEを確認する。
「彼に全てを話しました。ごめんなさい。手に負えないほど怒っていて。ごめんなさい」
訳がわからなかった。
いけない関係性だとはしても、今まで暗黙のルールを守りながら、お互いに良い状態で進んできたと思っていた。
しかし、それは大きな間違いだった。
私の知らないところで、とんでも無い事が起きていたのだ。
この日から私の人生は奈落の底へと急速に落ちていく。
この後もなお、想像を絶する出来事が起こっていく。
この時はまだ良かった。この時はまだ。