あれから何度彼女と飲みに行っただろうか。

 

毎回話すネタは尽きず、回数を重ねれば重ねるほど楽しくなっていく。

 

お互いにこの時間が最もストレス発散できる場になっていった。

 

そうなると、体にはその時の良い思い出が鮮明に刻まれ、その頻度はますます加速していく。
 

この日も仕事を早々に切り上げて、居酒屋で飲むことになった。

 

大衆居酒屋は結構うるさいので、せめて落ち着いて話せるように個室を予約した。

 

彼女はどんなに仕事が忙しくても遅刻することは絶対にしない。

 

そういう真面目な部分も惹かれる部分があったのだろう。
 

今日は金曜日。

 

お互い大きな仕事を終えた後だったから、酒が進む進む。

 

それに加えて話も尽きないから、あっという間に時間が過ぎていった。

 

何時間いただろうか。

 

さすがにもう終電が近づいてきたので、帰る準備を始めた。

 

だいぶ酔っぱらった彼女はトイレに行き、私は大急ぎで会計を済ませた。
 

トイレから戻ってきた彼女は、もうフラフラで目もうつろ。

 

典型的な酔っぱらいの千鳥足で部屋に戻ってきた。

 

自分の席には戻らず、おもむろに私の隣に座ってきた。

 

「大丈夫か?」と声を掛ける。

 

「うん、大丈夫ー」目を瞑ったまま顔をこちらに向けてくる。

 

何とも健気な表情だ。

 

気づけば彼女の両足は私の膝の上にあった。

 

「大丈夫か?帰るぞ」と笑いながら、私は無防備なままこちらに顔を寄せてくる彼女を見つめた。
 

その瞬間、彼女が突然顔を近づけてきた。

 

そして全ての音が消えた。

 

艶のある彼女の唇が静寂の中で私のそれに触れた。

 

そして全ての音が戻った。

 

もう止めることはできなかった。

 

泥酔の中で、夢中になって二人だけの時間に火をつけていく。

 

時間も場所も関係ない。

 

酒に溺れた40代の男女が、二人だけの危険な海に溺れていく。

 

これが禁断の果実の味か。

 

店を後にした私は、何とも言えぬ後悔と興奮の狭間で揺れ動いていた。

 

電車と酒がさらにその揺れを激しくしてくる。

 

冷静になれと自分に言い聞かせ、家路を辿る。

 

ふぅっ、と一つ深呼吸をして静かに家のドアを開けた。