最初に会った時の印象とはもう違っていた。
気が強いのは変わらないが、一生懸命頑張っている姿と垣間見える優しさが見えてくる。
知れば知るほど、どこか応援したい気持ちになっていく。
この時点では女性としてではなく、あくまで最近入ってきた後輩社員として、純粋にサポートしたいという思いだった。
ある時、柿子と給湯室で2人になった。
「仕事はどう?」
という他愛ない会話から、既に色々な悩みがあることをポロっと喋ってきた。
強がっているのだが、本当は弱い女子。
このままでは早々に潰れてしまうと思った私は、思い切って提案してみた。
「話聞くから、今度飲みに行く?」
そう言うと、彼女は嬉しそうに「ぜひ!」と二つ返事で快諾してくれた。
何度も言うが、この時点で彼女に対する女性的な感情は無い。
あくまで同じ大学の後輩として、何か支えになってやれないかとピュアな気持ちで彼女のことを考えていた。
普通に酒を飲んでざっくばらんに話をするだけだから、店にオシャレさなど必要ない。
普通の居酒屋を予約し、仕事を早々に切り上げて店へと向かった。
店に入ると先に柿子が座っていた。
少し緊張した面持ちで「お疲れ様です」と爽やかに挨拶をする。
二人で飲むのは初めてだから、お互い様子を伺いながら仕事の話に花を咲かせる。
しかし、同世代の共通点が多い二人が盛り上がるのは時間の問題。
一時間くらいで酒が良い感じに回ったところで、柿子のトークは止まらなくなった。
過去の経歴から現在の仕事状況まで、堰を切ったように色々な話が出てくる。
やはり、内に溜まっていたのは相当なものだったのだろう。
あっという間に三時間が経っていた。
お互い酔っぱらいながらも、仕事からプライベートまで、同世代の話がとても楽しかった。
普段おとなしい私も、いつの間にかこの空間に飲み込まれたくさん喋った。
終わった時には気持ちの良い開放感に包まれていた。
この時点で二人の距離は急速に縮まっていたことを、我々はまだ知らなかった。