柿子はバックオフィス系の部署に配属されていた。

 

こうも社員がぞろぞろと辞めていく現状に会社も焦ったのか、私達の部署特有のポジションをつくり、人事強化に取り組んでいた。

 

おそらくほとんどの社員は「こんな部署に入って大変だなー」と思ったことだろう。

 

それだけ、今の会社において人事とは苦労の多い仕事なのだ。
 

社員に関する仕事が主業務として入社したA子が最初にしたことは、部署にいる全社員との面談だった。

 

どんな社員がいて、どんな仕事をして、どんな事を考えているのかが分からなければ仕事にならない。

 

だから、1人1人丁寧に話を聞くのが彼女の最初の仕事だった。
 

私も漏れなくその面談を受けることになったが、特別何かを話すこともないから、きっとまだ馴染めていない彼女の話を逆に聞いてあげようかという感じだった。
 

先に待っている彼女の部屋をノックし、面談が始まった。

 

やはり、見た目は同年代の雰囲気があった。

 

肌艶や服装もさることながら、一通り社会人を経験したことのある余裕さが滲み出ている。

 

しかし、先日挨拶回りをしていたあの時の爽やかな雰囲気というよりは、どことなく威圧感のある空気を感じた。

 

緊張しているのか、それともなめられたくないから構えているのか。

 

初めが肝心だから、私も甘く見られない様にちょっと気を引き締めた。
 

話すこと1時間。

 

仕事のこと、部署のこと、会社全体のことを話した。

 

逆に色々質問もした。

 

だいたい1時間くらい話をすればどんな人間かがわかるが、案の定というか、思ったよりも爽やかさは無かった。

 

むしろ、とても気が強い女性だという印象に変わった。

 

これなら人事系でもやっていけるかなと思いながら、でもまた辞めちゃんだろうなと他人事のように心で呟きながら部屋を出た。

 

これが私と柿子との最初のコンタクトだった。