ここしばらく、貧乏な暮らしをしていますが
節制する部分は節制しの中で珍しく衝動買いをしてしまいました。

楽器です。6弦ベースというものでオーソドックスなエレキベースは
E,A,D,Gの4弦なのですが、これにEの下になるB、それとGの上になるCの二線を足したものがいわゆる6弦ベースというものになります。
普段は4弦にBを加えた5弦を愛用し、十分にチューンアップしてそれはもう
十分に満足がいく仕上がりになっています。
ここまでチューンバランスの良いものは、なかなか手に入れる事が難しく
自分には欠かせないものとなりましたが、絶えず何か新しい事にも興味を持ち
好奇心を忘れないのも音楽家にとっては大事な心得と。

さて、今回購入した一番の理由は値段と全体形状の良さで
このまま、手を加えずに使うつもりではなく改造ベースに適したもの
そう判断し、某オークションで購入しまいた。

安かろう、悪かろうなどという言葉もありますが、ある程度の事は覚悟していました。
取引は非常にスムーズに進み、無事に手元にベースが届きその日、スタジオで音出し。

思ったのは物には限度がある。安価であるから許される限界もある。
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まぁ、見た目はそれなりに綺麗です。そしてスルーネックというのもCP的にかなり高いと。
ただ、非常にルーズな加工で楽器としては最低である。これに尽きる。
「この値段のものだし、12時間ぐらい使ったらブチ壊してもいい…
それから改造して…」などと考えていたのですが、12時間弾く程の価値もない。
あくまで主観ですが、値段を無視して楽器として他社のものと比べると
これほど乱雑な作りの楽器には久しぶりにお目にかかりました。

一応、気になる部分を。
まずネック。6弦にしては若干、幅の狭い53㎜ぐらいのナット幅。
このぐらいでもまだ許容範囲。しかし、ナットがネックに対して
ちゃんと取り付けられていない。加工の段階からミスしている。
音は鳴るが不安を感じる。

ネック全体はやや厚みがあり、形状も丸太をぶった切ったような感じ。
指板はアーチも少なく平べったいが、それなりに弾き易い。
ただ、ハイフレットとローフレットで少しビビるノイズが出る。これは調整が必要。
フレットは平均的な太さ。すり合わせなどもしていないのだろう。
トラストロッドは二本入っているが、これがどのぐらい効力があるのかは現状不明。

ボディは厚くて重たい。なんでこの厚さ?と思えるほどの厚みは理由がわからん。
木材のスペックなど気にもしてないが、これは長いステージでは大変だろう。

ピックアップは電池にて本体のプリアンプと連動してるアクティブタイプ。
しかし、ものすごく出力が小さい。貧弱というかなんともパサパサした音だ。
しかも高さを調整しようとネジを緩めても、うんともすんとも動かない。
まるで無理やり押し込んだみたいな様子だ。
プリアンプも全く輪郭がなく、ぼやっとした感じで困惑する。

ブリッジ。ここが一番の問題で弦と弦との間が16㎜とブリッジの中でも
かなり幅が狭いものを使っている。交換をしてもネックエンドもこの幅なので
ハイフレットでは弦がネックからはみ出してしまう。
これが一番参った。事実、自分の5弦と比べても5弦は十分な幅を持ち
ピッキングやスラップもやりやすい。
何故、この幅ののものを採用したのか全く分からない。

多弦ベースの創世記に、このような幅の狭いもの。4弦からもあまり抵抗なくスイッチ出来ると想定し何社かがこの幅の5弦や6弦を制作、販売してる。
しかし演奏しやすいとは言い難く今は18㎜~19㎜が殆どで、狭すぎるものに感じる。
強いては今使ってるベースから持ち替えると、非常に弾きにくい。
外見はそれなりに美しく良さそうに見えるが、陳腐なほど安い素材と
仮に違うブリッジに交換としても、好みのものが乗せられない。
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ただ、初めて買うのがこのベース。ここから初めたいという人にはいいかもしれない。
他のベースを持つ事がなく違和感も感じないでしょう。しかし、今後もう一本
新たに別のベースを持つと、これがいかに問題が多いか納得するだろう。

つまり、弦楽器がこの程度のものだと思って欲しくない。

外見は十分だが、制作過程に丁寧さがない。なによりこの楽器の最大の問題はここ。

昭和の頃にいわゆるコピーモデルというものが国内で沢山売られていた。
だが、これは値段以上の音があり(勿論、個体差もあるが)次のステップに進むに
十分なクオリティを兼ね備えていた。30年以上前に購入し
今でも大事に使ってる方が大勢いる。理由は純国産である事が一つあるだろう。

当時、あまりに高価でフェンダーやギブソンは買う事が難しい状況で
国産のギターはそれを不満を満たしてくれた。そこまでにはメーカーの試行錯誤もあり
時に厳しい批判もあった。それを肥やしにして現状に至るメーカーもある。
コスト面で大幅に安くするために、外国にて生産、組立をし国産のギターとして
販売してるメーカーもあるが、こういう機体は何かしらの問題があるケースが多い。
国や国民性、技術を批判するのではなくまだ経験が少ない事を指摘しているので
その辺は誤解のないように。以前の日本にも同じ状況はあったと思う。
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さて、これをブチ壊して粗大ゴミの引き取りに出すか、あるいはオークションなどで
個人売買するのも後腐れなく気持ちも楽になるだろう。
しかし、現状で整備すれば改善出来る部分は、どこまで良くなるか試してみたい。
ブリッジ、弦の幅の問題は非常に大きいが、それ以外で丁寧にセッティングすれば
随分と変わる部分もあるだろう。これをメインで使う事は少ないと思うが
正確なメンテナンスをする事で何処まで改善されるか。興味がある。

今回、手元に届きスタジオから帰ってから、まず弦を取り替えた。
さほど演奏はされてなかったのだろうが、前オーナーが一年以上は交換していなかった弦。
これを交換し、とにかく一番太いゲージのセットを張った。
ネックが反ってしまう事もあるのだが、太い弦にしただけで随分と変化した。
ナット部分もネックとの接地面をしっかりとすれば、チューニングも安定すると思う。
ピックアップも弦幅の狭さのお陰で、5弦のサイズが簡単に流用出来そうだ。

こういう事も勉強のひとつと考え、今後のために何かしてみれば
それが自分に帰ってくるだろう。

かつて、圧倒的に性能が劣る機体で対戦国の、高高度爆撃機の迎撃を任せられた軍隊があった。
物資の少ない中、様々な工夫や整備、そして経験を生かし奮闘した。
そのような事実と比喩するのはどうかと言う方もいるだろうが、
例えるのならそのような気持ちもある。最低限度の整備と演奏者の技量で
こういう楽器がどこまで変わるのか試してみたい。

また定期的に書くと思います。この楽器の記事。

そして改めて思うのは、利益重視のコストダウンに走らず純国産の楽器を提供し
現在も自分をサポートしてくれてる、神田商会の素晴らしさを改めて感じる。

改めて感謝。あのベースもアーニーの弦を張っただけで随分まともになった。
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