精神科で本当にあった怖い話
 

 

精神科で働く看護師タナトスです。

 

新卒で配属された精神科で今年4年目を迎えました。

 

入職時にいた先輩たちは全員退職し、中途で入ってきたおばさん看護師と後輩たちと力を合わせて、いかれた患者昇天のお世話をする気が狂いそうな毎日です。

 

 

精神科の夜は心霊現象だらけ

 

精神科がホラー映画ホラーゲームの舞台になっていることって多いですよね。

 

元々、ホラー系が好きな私は、以前はよくそんな映画やゲームを楽しんでいましたが、精神科で夜勤をするようになってからは、そういうのは一切見なくなりました。

 

というのも、やっぱり真っ暗な病院って怖いんです……真顔

 

しかも精神科となると、患者が予想できない行動をしていることが多々あるので、心臓に悪いです。

 

病院に関する心霊現象は、よくテレビでも取り上げられているかと思います。

 

夜勤をする人ならば、誰しも一つや二つ、怖い経験をしたことがあるのではないでしょうか。

 

今回は、精神科で働く私が体験した、血の気が引いた怖い夜をご紹介します。

 

 

精神科の夜勤で体験した話

 

その日も私はいつも通り夜勤をしていました。

 

夜勤中、職員は交代で仮眠を取ります。そのため、一時的に病棟に職員が自分一人だけになる時間がありました。

 

一人でも定期的に病棟内を見回りして、異常がないか確認します。

 

その体験をしたのも、ちょうど職員が私ひとりのときでした。

 

その日は、いつもなら誰かしら叫び声をあげたり壁を叩く人がいるのに、やけに静かな夜でした。

 

明け方まで持つかどうか、という患者がいて、いつ呼吸が止まってもおかしくない状態でした。

 

家族もそれは了承済みで、このまま自然に任せて看取りになる予定でした。

 

この亡くなりそうな方をAさんとします。

 

落ち着いてる夜だなぁとナースステーションに座っていると、突然

 

「うがああああ!!!」

 

という叫び声が聞こえました。

 

患者の叫び声はよくあることなのですが、その声が普段大声を出す人ではない人の声だったので、

 

(もしかしてベッドから落ちた!?)

 

と焦って病室を見に行きました。

 

この人をBさんとします。

 

Bさんは錯乱していて、今にも病室から走って出て行こうとしていました。

 

「どうしました?」

 

と声をかけると、ギンギンに目を見開いて目

 

「心臓の音が聞こえないんだよ!!心臓が……心臓が……!!」

 

と何回も繰り返します。

 

夜間せん妄かな、と思い「大丈夫ですよ、夜だから寝ましょうね」と臥床を促しました。

 

意外とすんなり寝てくれましたが、Bさんがそんな風に錯乱するのは珍しかったので、少し驚きました。

 

Bさんの病室まで来たし、ついでに他の部屋も見て行こうと見回りを始めました。

 

真っ暗な病院内を懐中電灯で照らしながら、患者たちが寝ているか、生きているかなどを一人ひとりそーっと確認していきます。

 

すると、いつも妄想発言ばかりで会話が成立しない高齢女性の患者が、静かに目だけをガッと見開いていました。

 

寝ていると思って顔を覗いたので、バチッと目が合って少し驚きました。

 

私に気づいたその患者は、口を開けばいつも「お前が財布を盗ったんだろう!」「泥棒!早く出ていけ!」と怒鳴るのですが、そのときは珍しく普通の声のトーンで

 

「あら、ずいぶん大勢で来たのね。背中に乗ってるのはあなたの子?看板持ち

 

と近所のおばあちゃんのような話し方で言いました。

 

「え?」

 

さっきのBさんのことがあったので、心臓がキュッとしました。なんだか心なしか体も重くなったように感じました。

 

「私の背中にどんな人がいるの?」

 

と思わず聞き返しました。しかし、

 

「大変だねぇ大変だねぇ」

 

としか答えてくれませんでした。

 

「黒い男の人だよ」

 

突然そう言ったのは、隣のベッドの患者でした。

 

脳梗塞の後遺症で普段滅多に喋らない患者だったので、急に声が聞こえて驚きました。

 

「え?」

 

と聞き返すと、私の方をじっと見ながら

 

「黒いのが2人」

 

と言いました。しかも、よく見ると私の方を見ているというより、私の頭の少し上の方を見ていました。

 

「怖いこと言わないでくださいよ笑」

 

と笑って返しましたが、その人は無表情のまま、それ以上なにも言いませんでした。

 

見回りを終えてナースステーションに戻ってくると、さっき錯乱していたBさんが廊下に出てきていました。

 

「怖ぇよ……怖ぇよ……」

 

とボソボソ言っていました。

 

いや、あなたの方が怖いよ……。と内心思いながら、Bさんをベッドに寝かせて、ナースステーションに戻りました。

 

しばらく座ってボーッと仕事をしていると、誰かがAさんの部屋に入って行くのが見えました。

 

私は咄嗟に、さてはBさんだな!?と思い、すぐにそのあとを追いかけました。

 

でも、Aさんの部屋には、Aさんしかいませんでした。確かに黒い影が入って行くのが見えたのに。

 

うわぁ、嫌なもの見ちゃったなぁ……。

 

と思いながら、ナースステーションに戻ろうとすると、今度はBさんの叫び声が聞こえました。

 

「うがああああ!!!」

 

と先程と同じBさんの声に、急いで部屋を見に行くと、Bさんはベッドの上でうずくまって泣き叫んでいました。

 

「ごめんなさいッ!ごめんなさいッ!怖い!怖いよおお!」

 

と叫ぶので、近づいて声をかけます。

 

するとBさんは壁を指差して、

 

「黒いの!黒いのがいる!」

 

と言いました。

 

ゾクッと血の気が引いたのは、その指をさしている方向が、まさしくもうすぐ亡くなりそうになっているAさんの病室だったからです。

 

どうにかBさんをなだめてナースステーションに戻ってからは、早く職員が仮眠から戻って来ないかな、とドキドキしていました。

 

それから1時間くらいして、Aさんは静かに息を引き取りました。

 

黒い影は、Aさんを迎えに来た人だったのかなぁと今では思います。

 

認知症の患者は普段から支離滅裂な発言をよくするので、脈絡のないことを言われてもあまり気にしていませんでした。

 

でも、同じ時間に別々の3人から同じようなことを言われたので、かなり怖かったです。

 

あの黒い影がもし死神とか、そういう類のものだったなら、是非とも今後は他の患者には見えないようにお迎えに来てほしいですし、私の背中に乗るのはやめてほしいものです。

 

 

いかがだったでしょうか。

 

精神科ならではの、ちょっと怖いお話でした。

 

好評だったら、他にも怖い体験が色々あるので、第2弾を書こうと思っています。

 

良ければ他の記事でも精神科病院の日々を綴っているので、暇つぶしに読んでいただけたら嬉しいですにっこり

 

ここまで読んでいただき、ありがとうございました。

 

 

 

地獄の精神科看護師タナトス