俺は介護の仕事を長年やってきているが、患者には極力思い入れを入れないようにしている。真面目な話をすれば、自分の好き嫌いで対応の差が出るのは論外……というのは実はどちらかといえば建前で、本音は別のところにある。要は「別れがキツくなるから」。


基本的に、この世界には"お別れ"の概念しかない。昨日までは意志疎通が取れていても、急に状態が落ちて、何も言えなくなったり。久々に同じ人を見たら、全く歩けなくなって、表情も変わっていたり。そしてある人は永眠したり……。


正直、そんなことにいちいち思い入れを入れていたら、仕事として続けられない。しかし対応は機械的に、ではなく、いかに自然に、さも「すごく心配していますよ」という雰囲気を出す。しかし裏では、ドライに割りきっている……はず。そうでないと続けられない。……はず。


仕事だからやっている。別に個人に思い入れなんて思わない。なるようになるしかない。人はいずれ死んでしまう。


……そういうポリシーだったんだけど。


今日、患者の婆さんと話したときに、思わず言葉に詰まってしまった。


その人は、脚を悪くしてしまったんだけど、いつも前向きな言葉を話している人で。認知症ははし。最近入ってきて、一緒に働いている外人の青年のことを気に入って、可愛がってくれていて。


なんか、そういう光景が一気にフラッシュバックしてしまい……。


今度の退院日には自分は出勤でないことを伝えると、両手を差し出してきて、「本当に色々お世話になったね。頑張ってね!」と。


……。



……………。




お礼を言うのはこちらの方……。

あなたが優しくしてくれたから、彼もたぶん続けられている。自分の母親とさほど変わらない年齢で、……。……だめだ、これはアカン。


この仕事をしていて、泣いたのは二回目。最初は介護を初めて間もない頃、もう看取りレベルの婆さんが入ってきて、朝のオムツ交換をしたときかな? 「もう死んでしまいたい」と、寝たきりで何も出来ず、介助される辛さをポロっと話したときに、居たたまれなくなり……。「そんなこと言わないでください」と言いたいのに、言葉にならない。そういう自分の様子を見て、「あんたは優しいのね」と言われ、……。数日後くらいに、その方は亡くなった。当日担当した介護士は、まだ始めたばかりで、相当堪えたらしく、結局辞めてしまった。



で、何が言いたいのかというと?



なんだろうね。ようわからん(笑)。



介護士で、「頑張って仕事しよう!」という人達は、俺はあまり信用ならんと思ってるよ。介護なんて、相手に合わせることしか出来ないんだから。ちゃんとやる、なんてそもそも当たり前のこと。頑張るのはおめーじゃねえよ、と。大体思いが強すぎてバーンアウトしたり、思うようにならずに勝手にイライラしたり。お前が主体じゃねーんだよ。……別に誰に言ってるわけでもないんだけど(笑)。たまにいるのよ、本当に。


ま、この考え方が正しいのかどうかも、わからんけどね。