東野圭吾著『手紙』を、今さらながら読んだわけですよ。
正直、これほど感銘を受けた作品はないかも知れませんね。
というわけで、既に140万部も売れて映画化もされている作品を、
今さらご紹介させていただきく思い、はせ参じた次第であります候。
使い方がたぶん違うのは気にしない候。早漏って変換したらアウトだな候。
余計なこと書いてしまった……!(´Д`;)

で(おふざけTIME終了)。

主人公、直貴の不遇ぶりには、読んでいて痛々しいものがあります。
しかし、学校や教科書では教えてくれない、“現実”がそこにはある気が
します。だれだって、強盗殺人犯の弟とは関わりたくないでしょう。
俺も「そんなのは兄のしたことで、本人は関係ねえじゃん!」とは思う
のですが、……うーん。実際そういうことになったことがないので、
あんまり適当なことも言えないですね。そして、直貴が働くことになった
電気屋の平野会長。このじいさん(?)のセリフは実に残酷で、しかし
それが正論であるのでしょう。胸が痛みながらも、頷かざるを得ない
説得力がありました。このじいさんの金言は、はっきり言って読む価値が
あります。これは、“新・道徳”として、教科書に載せても良い気が
しました。いや、載せるべきだね。綺麗ごとだけでは通用しない、現実の
生々しさ、痛々しさ、そして“罪を犯す”ということの重大さ……。
(主人公の兄は強盗殺人という、まあ極悪非道なことをしてしまっているので、
全ての罪に適応は出来ないとは思いますけど……)

獄中の兄からの変わり映えのない『手紙』がたまに挿入されます。
そしてそのたび、その内容とは裏腹に、兄の存在を邪見に思ってゆく直貴。
直貴が絶望に打ちひしがれながらも必死で生きている中、この能天気とも
思える兄からの『手紙』は、見ていてこっちも「なんなんだこいつは!!」
と怒りを覚えました。が、しかし……。が、しかし、ですよ。
この一つ一つの兄からの想いが、最後の『手紙』の……。なんていうんです
かね。ちょっと表現出来ませんけど、とにかく“重い”んです。ヘヴィ過ぎます。
あんまり安易な言葉では表現したくないですね。

レビューになってねえなおい!(;°皿°)

ラスト数ページは、自分が今まで読んできた本の中でも、かなり印象深い内容
になっていました。直貴の『答え』はまだ出ていません。東野さんも、あえて
出さなかったんだと思います。消化不良とも思える終わり方が、余韻を永遠に
続かせるわけです。さすがです。答えは出しちゃいけない気もしますね。
本人たちにしかわからないし、きっと死ぬ時までわからない、いや、死んでも
わからないのかも知れません……。

登場人物のほとんど誰もが現実という枠の中での“良い人”なわけですが、
直貴は献身的に自分を支えてくれる由美子と、純粋に友人としての絆を大事に
する熱い男、寺尾というかけがえのない存在と出会っています。そして彼らが、
兄との縁を切ると決意した主人公の、心の奥底の何かを揺さぶり、また大切な
ものに気付かせてくれるのです。いや、俺はいいと思いますね。このくらい
のことが無ければ、直貴が救われません。そして俺は、寺尾のような人間に
憧れるわけです。彼はROCKだね。熱いよ。熱過ぎるよ……。こういう人間も、
居て欲しいと願うばかりです。

泣けるかどうかはわかりません。私は泣きませんでした。が、「非常に得難い
作品に出会えた」という感想です。今でもモヤモヤが消えません。
でも、それでいいのかな、と思います。世の犯罪者、または犯罪予備軍の
みなさんには、ぜひ読んで欲しい作品です。……そういう人らはこんな作品
読まねえかヽ(;´ω`)ノ