日本映画専門チャンネルの蔵出し名画座で観た。(山田五十鈴の「女優」もこの蔵出し~で前に観た)
1943年の映画で、少女時代の高峰秀子が主演で、原作は佐藤春夫、坪田譲治(あと一人、誰だったか…笑)、演出助手が市川崑、脚本が黒澤明、特殊撮影が円谷英二と若き日の巨匠が参加しているのが凄い。

1942~43年頃の映画は今までにも観たことがあるけれど、これほど戦時下というのが伝わる映画は初めてかもしれない。(今まで観た42~43年の映画は、とても戦時下とは思えないものだった)

主人公の不良少女のとみが東京の少年審判院から田舎の不良少女更生施設に連れて行かれ、やさしい女の先生の愛によって、更生してゆく物語。

<女生徒と女教師の関係は「制服の処女」の影響が見られる>とかいう紹介に興味を持った。

とみは強情を通して、誰とも口を利かず、ほとんど無言の演技というのが凄かった。
それで施設から脱走して、山中をさまようのだけど、始まって一時間近くたって、ようやく声を発する。
それは遭難して恐怖に駆られての叫びと、なぜか唐突に「胸の痛みに耐えかねて」という「湖畔の宿」の一節を歌う。

この映画は意外にも?歌が印象的なのだった。主題歌も綺麗だったし、唱歌のシーンで歌っていた「村の少女(おとめ)」という歌も印象的。

1 
囲炉裏を閉ぢて 早や七日 藪のうぐひす 鳴き初めぬ  納屋の南の 荒壁に もたれて見れば 麦青し

2
都の紅き ともしびの 便り恋しき 春なれど われは少女(おとめ)の 夢捨てて さびしく咲ける 山椿

3
錦の衣はまとはねど 父と母との ふるさとの 村に埋もるる うれしさを 雪どけ水よ 歌へかし

という歌。
それと「お手手つないで 野道をゆけば~」の歌(「靴が鳴る」)を物凄く久々に聞いて童心に返るような思い。

全体に良い映画だった…高峰秀子がやたら走っていた…それも印象的かも笑。