難治性の“がん”は甘いものがお好き!

~膵がんへホウ素を使った新たな治療法開発!~





◆発表のポイント

岡山大学中性子医療研究センターは、ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)の研究する全学センターです。



予後不良の膵がんに対し、甘い砂糖にホウ素を付けた薬に効果があることを証明しました。



がんには色々な好みがあり、遺伝子を調べてから好みに合わせたホウ素薬剤を作る手法が大事であることを示しました。





 岡山大学中性子医療研究センターの道上宏之副センター長・准教授、岡山大学病院低侵襲治療センターの寺石文則講師(消化管外科)、岡山大学大学院医歯薬学総合研究科・消化器外科学の藤本卓也医員(博士課程大学院生)は、京都大学複合原子力科学研究所の鈴木実教授、近藤夏子助教、近畿大学理工学部応用化学科の北松瑞生准教授、富山大学学術研究部都市デザイン学系の高口豊教授との共同研究で、難治性の膵がんを狙い撃ちするホウ素の薬剤を開発しました。


この研究成果はElsevier出版の生物物理学雑誌「Biomaterials」に5月9日にオンライン掲載されました。




 ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)と呼ばれるがん治療法は、がんに集まりやすいホウ素薬剤を投与して、がんに薬が集まったタイミングで、がんの部位に中性子の照射を行い、ホウ素と中性子の反応でがんをやっつける治療法です



治療成功の鍵は、“がん”にたくさん食べてもらえるようにホウ素に味付けをすることです。



しかし、がんの好みはさまざまで、全てのがんに食べてもらえる味付けをすることは難しいです。


そこで今回、がんの好みを知るために、がんの遺伝子を詳しく調査して、難治性の膵がんが、甘い糖を付けたホウ素薬剤を好んで食べることを発見しました。




 BNCTはアメリカ生まれ、日本育ちのがん治療法ですが、これらの研究結果を積み重ねることにより、膵がんで苦しむ多くの人を救うホウ素薬剤の可能性を示しただけでなく、がんの好みを調べて、ホウ素薬剤を創るという新たな薬を作る手順を示しました。




◆研究者からひとこと


岡山大学病院の膵がん治療の専門家にしつこいぐらい繰り返し質問に行って、臨床の現場で何が問題であるか、困っている点を教えてもらいました。


実験のために何度も岡山から関西空港の近くにある京都大学複合原子力科学研究所の原子炉に行き、泊まり込みの実験を行いました。


自分たちが信じる結果を世界中の人に示すことができて、嬉しいです!


道上准教授



素晴らしい👍😉







■論文情報
論文名:BNCT Pancreatic Cancer Treatment Strategy with glucose-conjugated boron drug
(グルコース結合ホウ素薬を用いたBNCTによる膵がん治療戦略)
掲載紙:Biomaterials(バイオマテリアルズ)
著者:Takuya Fujimoto, Fuminori Teraishi, Noriyuki Kanehira, Tomoyuki Tajima, Yoshinori Sakurai, Natsuko Kondo, Masahiro Yamagami, Atsushi Kuwada, Akira Morihara, Mizuki Kitamatsu, Atsushi Fujimura, Minoru Suzuki, Yutaka Takaguchi, Kunitoshi Shigeyasu, Toshiyoshi Fujiwara, Hiroyuki Michiue
DOI:10.1016/j.biomaterials.2024.122605

URL:https://pubmed-ncbi-nlm-nih-gov.translate.goog/38754291/[New window]















岡山大学 6月25日








近畿大学より出典 















近畿大学 6月25日



京都大学 6月26日


がん細胞を選択的に破壊することができる新しい放射線治療「ホウ素中性子捕捉療法(Boron Neutron Capture Therapy:BNCT)」は、2020年から保険適用となっています 

ホウ素と中性子の反応によってガンを破壊するもので、従来の放射線治療と比べて正常な細胞への影響が少なく、これまで治療の難しかったがんにも効果が期待できます

BNCTは日本が世界をリードして開発・発展させた治療法です

もともとはアメリカで研究が進められていましたが、良質なホウ素薬剤と中性子を用いることができなかったことで、良好な治療成績を残せずに研究が中断されていました

その後、アメリカでBNCTについて学んだ日本人研究者が帰国後に原子炉を使ったBNCTの研究をスタートしたことで日本でも開発が始まり、実用化が進められました

日本各地で研究や必要な薬剤の検討などが進められ、2001年に初めて頭頸部がんに対してBNCTが行われました

そのときの成績が極めて良好だったためにさらに開発が加速し、現在に至っています

メリットとしては一度の治療で癌の消失が期待できます

デメリットは約10センチ以上の深い腫瘍には使えません


これからさらにガンの種類に合わせたホウ素薬剤が出来ればいいですね👍