国の指定難病の患者らが、福祉や就労支援のサービスを使いやすいように、厚生労働省は4月から、難病患者であることを証明する「登録者証」の制度を始めた。


難病法の改正に伴うもので、各自治体は申請に従って電子的に登録。今月中旬以降は、マイナンバーカードから登録情報を呼び出すことで、難病であることを証明するシステムが順次稼働する。

カードのない人には紙の登録者証が発行される。


 「登録者証の実現に向け、会で要望を重ねてきた。待望の発行」。難病関係の団体で作る日本難病・疾病団体協議会(JPA)の大坪恵太事務局長は話す。



◆軽症者にも対応


 これまで医療費助成の対象になる重症などの難病患者には「受給者証」が発行され、在宅介護などの障害福祉サービスや就労支援のサービスを受ける際の確認書類としても使われてきた。

一方、難病患者でも助成の対象外の軽症者らは、病気と証明するものがなく、これらのサービスを利用する際に、医師の診断書が必要になるなど支障が出ていたという。

「軽症といっても症状に波があり、福祉サービスを必要とする人もいる」と大坪さんは話す。






 新たに認められた登録者証は、難病の患者であれば、軽症者も入手できる。

医師の診断書などを添付し、都道府県や政令市の窓口で申請することで、難病患者である事実が国のシステムに電子的に登録される。


障害福祉や就労支援の窓口に、患者がマイナンバーカードを持っていけば、端末で情報を呼び出し、難病患者であることを証明できる。厚労省によると、このシステムは6月16日以降、順次稼働していくという。

「病名は、知られたくない人もいるため登録しない」と担当者。

有効期限はなく、カードのない人らには、紙の登録者証を発行する。



◆登録者増と予測

 ハローワークで難病患者の就労支援を担当した経験もある「就労支援ネットワークONE」代表の中金竜次さん(53)は、「ハローワークで難病患者の相談に乗る際、職員は難病患者である事実を確認することになっている。登録者証は、その第1ゲートをクリアする手段になる」と評価する。


 東京都や岐阜県などは、4月以降、難病の医療費助成の受給者証を申請するための書類に、登録者証を申請するかどうか書き込む欄を設けた。助成の基準を満たせずに受給者証を得られなくても、登録者証を希望すれば作成されるという。

中金さんは、こうした取り組みで徐々に登録者が増えると予測している。
      

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 難病法の改正では、昨年10月から、難病の医療費助成が、申請日から認定基準を満たした日まで最長3カ月間、さかのぼって受けられるようになった。

また、今年4月から、医師や研究者が使う難病のデータベースに登録する対象者を、軽症の患者にも拡大。登録者証などの手続きの中で、患者の同意を得る。

軽症時の症状や病気の経過などを知る手がかりになり、難病の研究が進むことが期待されている。



<指定難病>   

発病の仕組みが明らかでなく、治療法が確立していない長期の治療が必要な病気で、国が難病法に基づき指定する疾患。診断基準があり、患者数が人口の0・1%程度を下回ることが、指定の条件で、341が指定されている。

重症度が一定程度以上の場合、医療費の助成を受けられる。

現在助成を受ける患者は約100万人。


東京新聞 6月4日




一般社団法人 日本難病・疾病団体協議会(JPA)

就労支援ネットワークONE