レム睡眠行動障害 


 レム睡眠行動障害は、睡眠中に突然、大声の寝言や奇声を発したり、暴力的な行動を特徴とします。

時には、ベッドから転落したり隣で寝ている人を叩いたりして、本人や周囲の人が怪我を負うこともあります。

声をかけると比較的容易に覚醒し、夢の内容を明晰に思い出すことができるのも特徴です。

レム睡眠中は筋肉の緊張を低下させる神経調節が働くため、夢の中で行動しても、実際には身体は動きません。

レム睡眠行動障害は、この筋肉の緊張を下げる神経調節システムが障害されることにより、夢の中での行動がそのまま寝言や体動として現れます。



 レム睡眠行動障害は、50歳以降の男性に多く、加齢に伴い増加します。

現在もしくは将来のパーキンソン病、レビー小体型認知症、多系統萎縮症といった神経疾患と関係すると考えられています。


レム睡眠に影響する抗うつ薬が関係して起こる場合もあります。


 これらの症状を確認するとともに、レム睡眠中に筋緊張の低下が起こらないことをPSGで確認することで診断に至ります。

寝室環境の安全性を高め、ベッドパートナーとの距離を保つ工夫をし、必要に応じて薬物療法が行われます。


国立精神・神経医療研究センター
精神保健研究所
睡眠・覚醒障害研究部








睡眠休養感”アップで健康長寿 
「悪夢で眠れない!」
初回放送日:2022年7月13日




「悪夢」は成人でも約半数が週に1度以上見るとされるが実は重大な病気のサインであることもある。

「悪夢障害」は悪夢によって眠れず日常生活に支障の出る病気。新型コロナ以降、不安の高まりにより急増しているという報告もある。


レム睡眠行動障害」は睡眠中に突然大声で叫んだり暴れだす病気。

実は夢の中での行動をそのまま行っている


「パーキンソン病」や「レビー小体型認知症」の前兆として現れることもあるので要注意



放送内容
目次
はじめに
睡眠を妨げる「悪夢障害」
就寝中 叫ぶ・暴れる「レム睡眠行動障害」



はじめに

強い不安や恐怖を覚える夢が頻繁に現れ、睡眠が妨げられる「悪夢障害」に悩む人が増えています。

また、睡眠中に突然大声を出したり暴れたりする「レム睡眠行動障害」は、背後に重大な病気が隠れている可能性があるため、注意が必要です。







睡眠を妨げる「悪夢障害」




悪夢障害は睡眠障害の1つで、年齢や性別にかかわらず起こります。主な原因はストレスです。


「悪夢がこわくて眠れない」「悪夢のせいで憂うつな日が続く」「日中の行動が悪夢に影響されおろそかになる」などの特徴があります。


悪夢の内容は起床後も覚えているのが特徴で、悪夢をみることで憂うつな気分が続き、日常生活に支障が出ます。




■対処法




ストレスの原因を明らかにして、それに対処することが大切です。

人間関係などストレスの原因を取り除きにくい場合には、日中の散歩などの適度な運動を取り入れたり、気晴らしになる行動を積極的に行うとよいでしょう。

運動は気晴らしになるだけでなく、疲労回復のための眠りの必要性が高まることから眠りが安定すると考えられています。



また、3つの快眠スイッチの「寝る前に副交感神経を優位にする」「体内時計を整える」「眠れなくても焦らない」ことを意識して、睡眠休養感をアップさせることも効果的です。




睡眠の質を上げる「3つの快眠スイッチ」


睡眠中にみる「悪夢」は珍しいことではありませんが、悪夢のせいで慢性的な睡眠不足になって日常生活に支障が出ている場合、精神科やメンタルクリニック、睡眠外来などを受診するとよいでしょう。





就寝中 叫ぶ・暴れる「レム睡眠行動障害



睡眠は、レム睡眠とノンレム睡眠という2つの睡眠状態を周期的に繰り返しています。

レム睡眠は体が深く眠っているのに対し脳が軽く覚醒している状態で、ノンレム睡眠は体も脳も眠っている状態です。

夢はレム睡眠の状態で多くみるといわれています。



レム睡眠行動障害は、レム睡眠中に

「大声で叫ぶ」
「悲鳴を上げて飛び起きる」
「腕を振り回す」
「隣に寝ている人をたたく・殴る・蹴る・首を絞める」

などの症状が起こる病気です。



誰かと争ったり、追いかけられているなどの悪夢をみているときに現れることが多く、夢の中で行っている行動が現実にも現れてしまいます




通常、レム睡眠中は筋肉の緊張が緩んでいるので、夢の中で行動しても実際には体は動きません。

しかしレム睡眠行動障害では、何らかの原因で筋肉の緊張を緩める機能が妨げられて、夢の中での行動がそのまま寝言や行動として現れると考えられています。


男性に多く、加齢とともに増加していきます。


初めは言葉を発する程度なので周りの人に気づかれにくく、病気に気づいていないケースもみられます。

進行すると徐々に激しい行動が増え、暴力的な行動がみられるようになることがあります。




■原因

α(アルファ)シヌクレインという脳内物質が関係していると考えられていますが、明らかな原因はわかっていません


αシヌクレインは、パーキンソン病やレビー小体型認知症などと関係があるとされている物質です。

これらの病気の初期症状としてレム睡眠行動障害が生じることがあります。

また、レム睡眠に影響を与える作用のある抗うつ薬などが原因になる場合もあります。



パーキンソン病の症状や原因とは?早期発見のための検査・治療法






■診断




睡眠中の様子は本人だけではわからないことが多いので、同居する家族などからの情報が重要です。

病気が疑われる場合は、入院して検査を受けます。

睡眠ポリグラフという機器で脳波や心電図を測りながら睡眠中の様子を動画撮影し、レム睡眠中に異常な行動が生じるかどうかを調べます。


また、パーキンソン病の特徴である手足の震えやぎこちない動き、自律神経症状、レビー小体型認知症による認知機能の低下などがないか確認します。




■治療

抗てんかん薬のクロナゼパム(のみ薬)を使って治療します。症状を抑える対症療法です。多くの場合で改善が期待できます。
 




投薬治療と同時に、けがを防止するために寝床をベッドから床に敷く布団に変更する、ほかの人と同じ部屋で寝ないなどの工夫が必要です。



将来パーキンソン病やレビー小体型認知症につながる可能性があるので、定期的に医療機関を受診する必要があります





NHK
きょうの健康“睡眠休養感”アップで健康長寿 「悪夢で眠れない!」から




こころみクリニックより一部抜粋


レム睡眠行動障害の症状

この病気の症状は、睡眠中、見ている夢に合わせて体がうごいてしまう
ことです。

ですので、具体的な症状は見ている夢によって様々なパターンがあり、日によっても違います。


症状は

行動中に起こすとすぐに起きる

覚醒後意識はしっかりとしている

見ていた夢の内容をはっきり覚えている

という特徴があります。意識が混乱していたり、もうろうとしていることはありません。




軽い症状では

睡眠中に手足をバタバタさせる

何かを食べたり書いたりするように手を動かす

誰かと会話しているようなはっきりとした寝言をいう

睡眠中、急に笑い出す

などがあります。この程度ならそう大きな被害はありませんが、


周囲のものを突然投げる

急に外へ飛び出そうとして壁にぶつかる

こぶしや足を振り回す

となりに眠っている人に暴力的な行為をする


など、見ている夢の内容が激しいものになると、その行動が患者さん自身や一緒に寝ている人に被害をおよぼしてしまいます。



レム睡眠行動障害のチェック

一緒に寝ている人がいれば指摘されて気づくことができますが、1人で寝ていると外から自分の行動を知ることは難しいですよね。そのときは以下のような状態に思い当たるかをチェックしてみましょう。


自分の大声で目が覚めることがよくある

睡眠中ベッドから落ちたり、壁を蹴ったりして目が覚めることがある

朝おきたらケガをしていた

いつの間にか周囲のものが壊れていた

などの状態があれば、レム睡眠行動障害の可能性が考えられます。



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