報道向けなので記録として



乳がん、前立腺がんの患者さんの新たな治療選択肢
PARP阻害薬「ターゼナ®カプセル」発売



~2つの作用機序でBRCA遺伝子変異の乳がん、前立腺がん治療に~



報道関係各位

2024年4月23日
ファイザー株式会社

ファイザー株式会社(本社:東京都渋谷区、代表取締役社長:原田明久)は本日、抗悪性腫瘍剤「ターゼナ®カプセル0.1mg、同0.25mg、同1mg」(一般名:タラゾパリブトシル酸塩。以下、本剤)を発売しました。




ターゼナ®カプセル製剤写真




本剤は1日1回投与の経口治療薬です。DNA修復など細胞内で重要な役割を果たす酵素のポリアデノシン5'二リン酸リボースポリメラーゼ(PARP:poly ADP-ribose polymerase)の触媒活性抑制とトラッピングという2つの作用機序によりPARP1とPARP2を強力に阻害することで、相同組換え修復(HRR:Homologous Recombination DNA Repair)遺伝子に変異を有する腫瘍細胞で合成致死を誘導します。BRCA遺伝子変異がある腫瘍細胞ではHRRが十分に起こらないため、本剤のPARP阻害作用により腫瘍細胞死を誘導し、治療効果を発揮すると考えられています。

 



本剤は本邦において、単剤による「がん化学療法歴のあるBRCA遺伝子変異陽性かつHER2陰性の手術不能又は再発乳癌」、および本剤とエンザルタミド※との併用による「BRCA遺伝子変異陽性の遠隔転移を有する去勢抵抗性前立腺癌」の治療薬として2023年2月24日に製造販売承認を申請、2024年1月18日に承認を取得、4月17日に薬価基準に収載されました。

本剤の承認は、乳がんはBRCA遺伝子変異陽性かつHER2陰性の手術不能又は再発乳がん患者を対象とした海外第3相試験(EMBRACA試験)および国内第1相試験等、前立腺がんは転移性去勢抵抗性前立腺がん患者を対象とした、国際共同第3相試験(TALAPRO-2試験)の結果に基づいています。
※ 本邦では、アステラス製薬株式会社が製造販売業者です。


ファイザー株式会社 取締役 執行役員 オンコロジー部門長のジョンポール・プリシーノは次のように述べています。
「今回のターゼナの発売により、乳がんと前立腺がんの患者さんへ新たな治療法をお届けし、アンメットメディカルニーズに貢献し続けられることを嬉しく思います。当社はこれまで、乳がん、腎がん、肺がん、血液がんを含むさまざまな種類のがんに対する治療薬や重要かつ有益な疾患情報を提供することで、患者さん、ご家族、医療従事者の皆様に貢献したいと考え、オンコロジー領域の事業を展開してまいりました。今後も関連学会や医療機関と連携し、自社医薬品の適正使用推進に努めるとともに、がんと闘う患者さんとそのご家族に新たな希望をお届けできるよう、今後も新薬の開発に取り組んでまいります」



<参考情報>

ターゼナ®カプセル(一般名:タラゾパリブトシル酸塩)について



本剤は2023年11月時点で、相同組換え修復遺伝子の1つであるBRCA遺伝子の変異を有するHER2陰性の局所進行または転移乳癌の成人患者の治療を適応として、80以上の国や地域において承認されています。米国では2018年10月16日に「生殖細胞系列BRCA遺伝子変異陽性かつHER2陰性の転移乳癌」を適応症として、2023年6月20日に「HRR遺伝子変異陽性の遠隔転移を有する去勢抵抗性前立腺癌」を適応症としてそれぞれ米国食品医薬品局(FDA)から承認されています。また、欧州では2019年6月21日に「化学療法歴のある生殖細胞系列BRCA1/2遺伝子変異陽性かつHER2 陰性の局所進行または転移乳癌」を適応症として、2024年1月8日に「化学療法が臨床上適応とならない転移性去勢抵抗性前立腺癌」を適応症として欧州委員会(European Commission)からそれぞれ承認されています。



BRCA遺伝子変異を有する転移乳癌について

BRCA1とBRCA2遺伝子は二本鎖DNA切断の修復経路で主要な役割を果たす遺伝子で1、遺伝性乳癌の20%~25%、およびすべての乳癌の5%で遺伝子の変異が認められると報告されています2。


一般的に、BRCA1またはBRCA2遺伝子変異のある乳癌はその他の乳癌と転帰が類似しています3が、患者さんは、より低年齢で発症する可能性が高いことが報告されており4, 5、生殖細胞系列BRCA遺伝子変異を有する乳癌の治療には高いアンメットメディカルニーズが存在します。




BRCA遺伝子変異を有する去勢抵抗性前立腺癌について

前立腺癌の中で、去勢抵抗性前立腺癌はアンドロゲン除去療法を行っても腫瘍が進行する状態と定義され、治療がより困難な進行癌とされています。


転移性去勢抵抗性前立腺癌におけるBRCA遺伝子変異の保有率は10%~15%と報告され6, 7, 8、既存の治療薬の治療応答性は遺伝子変異のない集団と比較して不良との傾向が示されており9、BRCA遺伝子変異陽性の転移性去勢抵抗性前立腺癌の治療には依然として高いアンメットメディカルニーズが存在します。




EMBRACA試験について
転移乳癌に対する化学療法歴があり、生殖細胞系列BRCA遺伝子変異を有する局所進行または転移乳癌患者を対象に、本剤と治験責任医師が選択した化学療法を比較する第3相、非盲検、無作為化、並行、2群、多施設共同試験です。タラゾパリブ群は治験責任医師が選択した化学療法群と比較して、主要評価項目の無増悪生存期間の延長を示し、忍容性は良好でした。


国内第1相試験について
BRCA遺伝子変異陽性HER2陰性の局所進行または転移乳癌の日本人患者を対象に、本剤の有効性および安全性を評価し、臨床的に意味のある抗腫瘍効果が示されました。

TALAPRO-2試験について
去勢抵抗性前立腺癌に対する全身抗悪性腫瘍療法歴がなく、相同組換え修復遺伝子変異の有無を問わない転移性去勢抵抗性前立腺癌患者を対象に、本剤とエンザルタミド併用投与を評価する第3相、二重盲検、無作為化、プラセボ対照、多施設共同試験です。本剤とエンザルタミド併用投与群は、プラセボとエンザルタミド併用投与群と比較して、主要評価項目の画像診断に基づく無増悪生存期間の延長を示しました。また、本剤とエンザルタミド併用投与群に新たな安全性の懸念は認められず、本剤単剤投与およびエンザルタミド単剤投与の安全性プロファイルと一致していました。



ターゼナ®カプセルとBRCA遺伝子検査について

本剤の「がん化学療法歴のあるBRCA遺伝子変異陽性かつHER2陰性の手術不能又は再発乳癌」、および「BRCA遺伝子変異陽性の遠隔転移を有する去勢抵抗性前立腺癌」の適応においては、コンパニオン診断(CDx)でBRCA遺伝子変異を有することを確認する必要があります。


CDxとは、患者さんに特定の薬剤の使用が計画される際、薬剤の適応有無を確認するために行われる検査10です。乳癌のCDxとしてミリアド・ジェネティクス合同会社(本社:東京都新宿区、代表:倉岡俊介)の「BRACAnalysis®診断システム」、前立腺癌のCDxとして中外製薬株式会社(本社:東京、代表取締役社長CEO:奥田修)の「FoundationOne® CDx がんゲノムプロファイル」が保険適用されています。


また、「FoundationOne® CDx がんゲノムプロファイル」など、包括的ゲノムプロファイリング検査(CGP)によってBRCA遺伝子変異が検出された場合には、エキスパートパネルと呼ばれる専門家会議で、本剤を含めた適切な治療薬が選択される必要があります11。なお、CGPとは、複数の遺伝子変異を同時に調べ、治療に役立てられそうな情報を選別するための検査です10。


【製品概要】

製品名

ターゼナ®カプセル0.1mg、同0.25mg、同1mg

一般名

日本名:タラゾパリブトシル酸塩
英名:Talazoparib Tosilate

効能又は効果

〈ターゼナカプセル0.1mg〉
〇BRCA遺伝子変異陽性の遠隔転移を有する去勢抵抗性前立腺癌
〈ターゼナカプセル0.25mg〉
〇BRCA遺伝子変異陽性の遠隔転移を有する去勢抵抗性前立腺癌
〇がん化学療法歴のあるBRCA遺伝子変異陽性かつHER2陰性の手術不能又は再発乳癌
〈ターゼナカプセル1mg〉
〇がん化学療法歴のあるBRCA遺伝子変異陽性かつHER2陰性の手術不能又は再発乳癌

用法及び用量

1.BRCA遺伝子変異陽性の遠隔転移を有する去勢抵抗性前立腺癌
エンザルタミドとの併用において、通常、成人にはタラゾパリブとして1日1回0.5mgを経口投与する。なお、患者の状態により適宜減量する。
2.がん化学療法歴のあるBRCA遺伝子変異陽性かつHER2陰性の手術不能又は再発乳癌
通常、成人にはタラゾパリブとして1日1回1mgを経口投与する。なお、患者の状態により適宜減量する。

製造販売承認取得日

2024年1月18日

薬価収載日

2024年4月17日

発売年月日

2024年4月23日

製造販売元

ファイザー株式会社