動画は11分48秒です
 

テレビ山口 2月4日

 

 

 

 

 

 書き起こし


筋萎縮性側索硬化症、ALSという病気をご存じでしょうか。全身の筋肉が少しずつ動かなくなる難病です。この病気を患った男性が山口県宇部市にいます。明るい性格と周りの支えで、アクティブに毎日を過ごす男性に密着しました。



■43歳でALSと診断


宇部市に住む福島雅弘さん、50歳。2017年、43歳のときに筋萎縮性側索硬化症・ALSと診断されました。ALSは、体を動かすための神経が障害を受け、少しずつ全身の筋肉が動かなくなる病気です。国内の患者数はおよそ1万人、進行性の病気で原因は十分解明されておらず、有効な治療法はありません。


現在、雅弘さんが動かせるのは、目や口元など一部の筋肉のみです。年明けのこの日、向かったのは常盤神社。あることをお願いしに来ました。


大阪市出身の雅弘さんは、高校から始めたアメフトに熱中する青春を送りました。大学卒業後、芸能関係の仕事をする中で妻の真理さんと出会い結婚。脱サラして真理さんの地元・宇部市で不動産業を始めようとしていたとき、ALSを発症しました。


雅弘さんは視線でパソコンに文字を入力し、登録していた自身の声を流して会話します。


記者「診断を聞いて?」


福島雅弘さん

「もう頭真っ白よ、あー、僕終わったなぁって思いました」



診断後1週間ぐらいは震えていたといいます。真理さんとの思い出づくりのためニューヨークに東京、大阪…各地へ旅行に出かけました。




■胃ろう・人工呼吸器を装着


その後病気が進行し、徐々に飲み込む力が弱くなったことから、2020年に食べ物を直接胃に入れる胃ろうを造りました。


ヘルパー・村上真里さん

「福島さんがメニューを考えられてお医者さんに相談してるみたいです。栄養バランスがとれているかとか」


1日3回、体調の確認に訪れる訪問看護師が食事を補助します。


サンキ・ウエルビィ訪問看護ステーション宇部 下村恵美看護師

「自分でメニューを考える人はなかなか…私自身は初めてです。みなさん結構、病院で処方されたものを注入されてるかたが多いですね」



この年、呼吸する力も弱くなったため人工呼吸器も装着しました。真理さんは、司法書士として働きながら、雅弘さんのために訪問介護事業を始めました。


妻・福島真理さん

「日本の今の法律は在宅生活、支援できるような法律そのものはあるんですけれども、その支援の体制というか人が足りなかったり、生活までのサポートする人だったり、足りないような状況で」




■学生との会話が楽しみのひとつ


介護ヘルパーに加えて、医療系の学校に通う学生のアルバイトなど10人以上を雇っています。


雅弘さん

「(PC画面)今の地味な子誰?」


アルバイト・重田楓歌さん(YICリハビリテーション大学校作業療法学科3年)

「重田です、重田です、髪が黒くなりました」


他の学生「オレンジ色やめたん?」

重田楓歌さん「オレンジやめた」


学生たちとの会話は、雅弘さんの楽しみの1つです。学生にとっては、先輩ヘルパーや訪問看護師の仕事を生で見る貴重な機会にもなっています。 



アルバイト・福江美里さん(YICリハビリテーション大学校理学療法学科3年)「医療の現場って感じで、覚えることとか日によって体調とか違ったりして大変だったことも多いんですけど、その分知識になることも多かったのでやりがいは感じてます」


雅弘さん

「学生はすごいなと思います。立派やなと思います」




■ 妻への思いは「感謝を超越してる」


風呂は週に3回。業者がリビングに浴槽を組み立て、3人がかりで体を洗っていきます。日中は、ヘルパーや学生アルバイトの基本2人で介護します。夜は、真理さんが雅弘さんの横で寝ます。多くの人に支えられての生活です。



記者

「奥さんへの感謝は?」

雅弘さん


「そんなん言葉にでけへんし、言葉にしたとたん嘘っぽいし、感謝とかの次元超越してると思います」



雅弘さんは、3か月に1度大学病院に通院します。外では透明な文字盤などを使って、意思を伝えます。




山口大学医学部神経・筋難病治療学講座 竹下幸男教授

「あと呼吸器とかのトラブルはどんなですか?」


妻・真理さん「トラブルはないです」


山口大学医学部神経・筋難病治療学講座 竹下幸男教授

「本人は実は初めは気管切開に関してはあまり前向きじゃないところはあったんですけれども、幸せに過ごされてるってところがあるので、今思うとあの時ご家族含めてみなで話し合って決断したことっていうのは間違いではなかったんじゃないかなという風に感じております」




 ■コーヒー店や焼き肉店へ、外出も楽しむ


雅弘さんは週に3回はコーヒーを飲みに出かけたり、イベントに出かけたりとアクティブに過ごしています。焼き肉店にもよく足を運びます。



妻・真理さん

「(文字盤で雅弘さんに確認しながら)ご飯は?って」


アルバイト・福江美里さん

「白米ってことですか?食べま~す」



ほかの人が食べる様子を見守りながら…ビールを胃ろうへ。


妻・真理さん

「入れま~す」


大人数での食事に、この笑顔。


妻・真理さん

「最高ですと言ってます」


 ウイスキーが好きで、ときには二日酔いに苦しむこともあるようです。さらに真理さんの会社が主催の交流会に参加したり、医療従事者向けの研修会に顔を出したり。




■大学アメフト部のコーチに


およそ3年前からは山口東京理科大学・アメフト部のコーチも務めています。この日は中四国のリーグ戦。広島で行われた試合に参加しました。


妻・真理さん

「やっぱり練習見たりとか外出の機会にもなりますし、たまにラインとかでアドバイス送ったりとか、アメフトと接点持てたのは、私も本当によかったねって思っています」


月に1度、人工呼吸器の管の交換に訪れる医者は。


西川医院・西川雅裕院長

「アメフトのコーチに行ったり、公園行ったり、スタバ行ったりっていうのをブログで見るのが非常にうれしいんで、うれしかった様子をこっちから聞いたりもしています。本当つらいことばかりではもちろんなくて、ちょっとしたことにも喜べる…んですよね。元気をもらって帰って行きます」




■迷ったら「人工呼吸器つけて」


ALSは、積極的に延命治療をしなければ多くの人は数年で死に至ります。人工呼吸器をつければ延命できますが、家族の負担が大きくなります。人工呼吸器をつけているALS患者は3割ほどです。雅弘さんは延命治療を選びました。


先月、雅弘さんは日本ALS協会県支部の支部長に選任されました。真理さんが、メッセージを代読しました。


妻・真理さん

「診断されて間もない患者さんへ、将来もし選択に迷われたら、人工呼吸器をつけてくださいね。あとから振り返ったら、『そんな大したこととちゃうやんけ』と思える日が必ず訪れますから」


日本ALS協会県支部原田典子 事務局長

「福島さん若いので。一緒にいろんな所に行くとか、県内のALSの人の生活をより向上させるためには、制度をやはり少しずつ充実していかないといけないので」




■「人の役に立ちたい」初詣のお願いは?


現在、県内でALSの患者や家族を支える施設やヘルパーの数は、圧倒的に足りていない状況です。


 雅弘さん

「これまで人のお役に立てるようなことあまりした記憶がないから、なんかできたらいいなと考えてるところですわ」


患者が抱えている困りごとを解決していきたいといいます。初詣でお願いしたのは…


雅弘さん

「今年はハワイに行ってきますわ」


アルバイト・福江美里さん

(文字盤示しながら)「あ、り、が、と、う。行きましょう、みんなで!」



お願いしたのは…まさかのハワイ行き。


病気に負けずに元気にアクティブに。


そして、人のためにも生きる。


雅弘さんの新たな1年が始まりました。

 

 

 


旅を諦めちゃいけない



あなたの心の中にある旅を思い出してください。

病気があっても

障がいがあっても

高齢になっても

こわがらないくていい。

なんとかなる。

旅は、体を元気にしてくれる。

旅は、心に自信をくれる。

旅は、あなたの人生を豊かにしてくれる。きっと。


鎌田實




第1回
鎌田實と行くドリームフェスティバル イン ハワイ


 





第2回
鎌田實と行くドリームフェスティバル イン ハワイ