政争 | オリーヴの森の中で ブルース・モーエントレーナー、QHHTプラクティショナーの日常

オリーヴの森の中で ブルース・モーエントレーナー、QHHTプラクティショナーの日常

ブルース・モーエン・トレーナー協会公認トレーナー
QHHTレベル2プラクティショナー

『γνῶθι σεαυτόν』私自身の魂とは何かを知りたい願望が強くて。そして、真理の探究は続いてゆく…

穏やかな神への愛に生き、そして、信者たちとの愛を実践する生活を求めていた聖職者の私。

あまり自分の出自に関してはわからないが、どうも、東ローマ帝国のそれなりの家の出身のようではあったようだ。
叩き上げたという感じではなく、理想を常に追い求め、清廉潔白という感じの生活を送り、インテリで苦労知らずな印象がある。
また、聖職者の中でもエリートコース的な立場にあったようだった。

穏健派的な感じで、誰とも仲良く付き合っていた感じ。
そういう性格もあったせいか、敵は少なかったようで、適当な年齢になったころには、ミストラの修道院の院長の立場を任されていたようだった。

教会の中で出世したいという野望は全く持っていないから、それ以上の立場になろうとも思っていない。


オリーヴの森の中で
(昼間の絵ですが…)

それは、真夜中。
岩山が黒く見え、修道院の建物も闇の中にそびえている。

明かりは今のように電気がないので、月明かりと手に持ったろうそくとか、ランプ的なものの明かりだけ。
みんなもう寝静まっている。

そして、私は修道院の回廊のような場所にいて誰かがやってくるのを待っている。

入り口の方から、ひと目を忍ぶような感じで別の聖職者が入ってくる。
案内の僧を帰して、二人で私の執務室に入る。

執務室の大きな木の机の上には本がたくさん並んでいる。
その机の向こう側と手前側で二人、向かい合うよう形で座り、声を潜めて話を始める。

私を訪れた僧侶は私に依頼をしに来た。
それを私は受けたくないと思っている。

ミストラは当時の東ローマ帝国でも戦略、政治、文化的に重要な都市で、宗教的にも重要な場所で教会もいくつも存在している。
そのミストラのいくつもある僧院をまとめているトップの僧侶が亡くなろうとしているらしい。
私のもとに来た聖職者は、その次の地位を狙っているようだった。

私は数多くあるミストラの修道院の修道院長だが、政治的なことは興味がない。
信仰に生き、信徒たちと共に生きることに喜びを感じていた。
無私無欲な感じだったから、信徒には愛されていたし、そういうところが逆に、他の教会の上層部に一目おかれ、影響力があったりするようなところがあった。

それにどうやら、もともとの私の家の関係か、正教会の中央ともコネクションがあるようだった。


一方、依頼に来た僧侶と私は、若いころに一緒に学んだことがある。
一緒にいて話をしていて楽しい友達ではあるのだが、彼には野心がありすぎた。
教会の上に上り詰めてゆくことを熱望しているような人。
それが私には苦手な部分だった。

その時、彼は地位を得るために政治的な地固めを必死にしており、私に助けを求めてきたのだった。
私が別の地位の高いものとの間を取り持ったり、私が彼を指示することを表明することで、考えを変えるものもいるかもしれないから。

私は権力闘争とか政治には巻き込まれたくなかった。

しかし、結局、彼は私の足元を見てきた。

私は修道院内で、孤児を集めて育てていた。
その頃、時々、戦争はあったから、戦争で親を亡くした子供などがけっこういたらしい。

私は独身で、自分自身の家族はなかったから、そういう子供を自分の子供のように育て、父親のように慕われ、一緒の時を過ごすことは幸せだったり、人生を充実させている要素だったのだろうと思う。

私の友の聖職者は、自分が望む地位を手に入れたら、私のそういう慈善的な仕事を評価し、援助をするという。
自分のそうした活動に金銭的な問題もあったようで、私は自分の信念を曲げて、それを受け入れて、彼のために手を貸している。