ツイッターでご紹介しましたレ・ミゼラブル 「民衆の歌 (フィナーレ)」の歌詞ですが、書き足りないのでブログで書くことにしました。重複する内容もありますが、許してください。

 

 

◉原詞

 

Do you hear the people sing

Lost in the valley of the night?

It is the music of a people

Who are climbing to the light

 

For the wretched of the earth

There is a flame that never dies

Even the darkest night will end

And the sun will rise

 

 

◉対訳

 

貴方には聞こえるだろうか?

人々の歌う声が

夜の淵で彷徨える者達の声が

それは 光を目指して

這い上がろうとする人々の奏でる調べ

 

この世に生きる哀れな者たちの心には

決して絶えない炎が在る

最も暗い夜でさえ やがては終わり

いつか 太陽が昇るのだ

 

 

◉日本語詞

 

(現行版)

若者たちの歌が聞こえるか?

光 求め高まる歌の声が

世に苦しみの炎 消えないが

どんな闇夜も やがて朝が

 

(初演版)

皆 聞こえるか? 消えた歌声が

光 求め這い上がる人の歌

世に哀しみの炎 消えないが

どんな闇夜も やがて朝が

 

 

◉コメント

 

レミゼの最後を飾るコーラスナンバー。歌い出しが初演と現行版で違うのですが、どちらも原詞より「散っていった者達」というイメージが前に押し出されており「若者たち」あるいは「消えた歌声」みたいな言い方をしてます。

 

前者は、the peopleを限定的に「若者たち」とし、後者は「Lost」を「消えた」と訳すことで、作品の筋そのものと密接に繋げているわけです。原詞だと、もう少し人類全体っていうイメージがあるので、これは好みだと思います。日本人にとっては、若くして散っていった若者たちの姿の方が、多分印象に残りやすいから。

 

次の一節、私個人としては初演時の「這い上がる」というフレーズが好きですね。エッジが効いてて良い。人間の歴史は、やはり苦難の積み重ねの中で、人間たちが立ちはだかる壁を一つ一つ乗り越えてきた部分があると思うので、それが良く出ていると思います。

 

一点、英語で語られているa flame that never dies、日本語だと「苦しみの炎」「哀しみの炎」というネガティブなものとして解釈されていますが、英語の場合、その後のEven the darkest night will end and the sun will riseが逆説で繋がっていないことから、このa flameはポジティブなものとして描かれています。つまり、人々の心の中には命や希望や勇気を象徴する「炎」が絶えることなくゆらめいている、ってことですね。

 

これを誤訳として指摘するのは簡単ですが、レミゼのようなプロダクションで原詞を書いた人たちからチェックが入っていないとは考えにくいので、このイメージの逆転は公認されたものだと思われます。意図的にやったのか、それとも誤訳したものが「それイイね!」になったのか、岩谷先生にお訊きしたいですね。