郡山市は国の下請け機関なのか?
――団体自治を理解しない行政運用への重大な疑問
現在、私は陳情案件について郡山市障がい福祉課と交渉を続けています。
しかし、やり取りの中で繰り返し返ってくる言葉は、
「国の指針が…」
「厚生労働省に確認しないと…」
といったものばかりです。
そこで私は、はっきりとこう問いかけました。
「では郡山市は、国の下請け機関なのですか?」
この問いに対し、職員は「それは違う」と否定しました。
しかし、実際にやっていることはどうでしょうか。
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国にお伺いを立てる
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国の通知を絶対視する
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国からの補助金に縛られる
――これでは実質的に下請けと変わらない運用です。
私はこの場で「団体自治」について説明しましたが、
職員の反応は正直に言ってキョトンとしていました。
これは個人の理解不足で済む問題ではありません。
地方自治の根幹に関わる重大な問題です。
そこで今回は、この問題について整理し、
広く市民の皆さんに知っていただきたいと思います。
市町村は国の下請けではない
――「独立した公法人」として保障された団体自治
地方自治には、憲法学・行政法上、次の二つの柱があります。
① 住民自治
誰が意思決定を行うのか
(住民・議会・首長)という民主主義的側面
② 団体自治
何をどこまで決められるのか
(権限・責任)という分権・自立の側面
この二つを合わせたものが、
**憲法92条にいう「地方自治の本旨」**です。
今回は、意図的に軽視されがちな
**「団体自治」**に焦点を当てます。
「団体自治」はどこに書いてあるのか?
よくある誤解ですが、
「団体自治」という言葉そのものは、憲法に明記されていません。
しかし、法的根拠がないわけではありません。
憲法92条
地方公共団体の組織及び運営に関する事項は、
地方自治の本旨に基いて、法律でこれを定める。
この「地方自治の本旨」を、
住民自治+団体自治の二要素から成ると理解するのが
学説・判例上の確立した立場です。
つまり、団体自治は
憲法92条から導かれる憲法原理なのです。
これは義務教育・中学校公民レベルで教えられている内容です。
地方公務員がこれを理解していないとすれば、極めて深刻です。
▼中学生向け解説動画
https://www.try-it.jp/chapters-3376/lessons-3377/
正直に言えば、
郡山市長も、障がい福祉課の職員も、中学校からやり直す必要があります。
団体自治を最も端的に示す「憲法94条」
団体自治を最も明確に示す条文が、次です。
憲法94条
地方公共団体は、法律の範囲内で条例を制定することができる。
ここが極めて重要です。
条例とは何か。
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国会ではなく
-
地方公共団体が
-
自らの判断と責任で定める
法規範です。
もし市町村が国の下請けにすぎないなら、
独自のルールを作る権限など与えられるはずがありません。
憲法94条は、
地方公共団体を
国とは別個の「独立した公法人」として
想定していることを明確に示しています。
地方自治法は「団体自治の具体化」
地方自治法は、団体自治を
絵に描いた餅にしないための法律です。
市町村には、次のような権限が与えられています。
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条例制定権
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予算編成・財産管理権
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契約締結権
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課税権(法定外税を含む)
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組織編成・人事権
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自治事務の処理権限
これらはすべて、
「国の指示を処理するだけの存在」では説明不可能です。
市町村は、
自ら決め、自ら責任を負う主体として位置づけられています。
判例も認める「団体自治」
最高裁判所も、地方自治について
地方自治の本旨は
住民自治と団体自治の双方を含む
という理解を取っています。
代表的判例
最高裁大法廷判決(昭和38年3月27日)
(特別区長公選制廃止事件)
この判例は、
地方公共団体が単なる行政機関ではなく、
実質的な住民共同体であることを前提に判断しています。
地方自治は、
国の都合で自由に縮小できるものではない
という立場が、判例上も繰り返し示されてきました。
なぜ「国の下請け論」が問題なのか
現実の行政運用では、
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国の通知
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省庁マニュアル
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補助金による誘導
によって、
市町村が自ら考えることを放棄している場面が多く見られます。
その典型が、郡山市障がい福祉課です。
障がい福祉課は保健福祉部に属し、
その保健福祉部は市長の統括下にあります。
市長は「市民の声を聞く」と言いながら、
実際には
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国の指針
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国からもらえるお金
を基準にした、
極めて「幅の狭い」市政運営しかできていません。
しかし、これは制度の問題ではありません。
政治と行政の運用の問題です。
結論は明確です
憲法と地方自治法の建前は、はっきりしています。
市町村は、国の下請けではない。
独立した公法人として、自らの権限と責任で地域を運営する存在である。
おわりに――地方自治を取り戻すということ
地方自治を本気で機能させるとは、
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誰が決めるか(住民自治)
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何を決められるか(団体自治)
この両方を回復することです。
市町村が
「国の顔色を見る下請け」から脱し、
地域の現実に即した判断を下す。
そのとき初めて、
地方自治は名目ではなく実体を持ちます。
地方自治の主役は、中央ではありません。
地域であり、市町村であり、そこに暮らす住民です。















