日経の経済教室の面に中央大学の山田教授が「消費停滞と家族衰退」と題して数回にわたり、述べておられました

消費停滞が何故止まらないかという問題意識は私と同じであるが、アプローチの仕方が家族衰退という面からなされている

趣旨は、消費停滞に対し影響を与えている、家族衰退現象はいくつかあり

一つは未婚率の上昇

パラサイトシングルの増加と非正規化

フルの共働き世帯が減少傾向

老人世帯の消費抑制

等が原因として挙げられている

私は消費停滞の原因は将来不安であり、将来不安の原因は社会システムの公平性劣化に起因していると見ているが、家族衰退と社会システムの公平性劣化は如何なる関係にあるのか

家族衰退は現象として事実であるが、家族衰退は何故生まれているのか

未婚率の上昇は、多分、個人の嗜好もあろうが、基本的には、非正規の賃金格差、地価高騰、年金等世代間格差等社会システムの公平性劣化が背景にあると見られる

また、パラサイトシングルの増加と非正規化についても、非正規賃金格差、地価高騰等が背景にある

また、老人世帯の節約志向も、年金等世代間格差を背景とした社会保障制度への信頼感の低下が背景にある

これらは、概ね、社会システムの公平性劣化を背景にしていると言える

詰り、家族衰退という形をとって、社会システムの公平性劣化が機能しているということである

教授の指摘していることは基本的に私が述べている社会システムの公平性劣化と根源的には同じことということになる

更に、フルの共働き世帯が増えない、むしろ、減少していることも、その消費性向の高さから、消費停滞の面から問題視されている

ただ、フルの共働きが消費にブラスであっても、少子化には却ってマイナスの可能性もある

育児の在りかたにも関係する問題であり、結婚の推奨のように必ずしも政府が推奨すべき性格の問題ではなかろう

教授は家族衰退の中での消費停滞の解決策として

結婚しやすい環境

安定的な社会保障制度

フルの共働きを増やす

を挙げられている

結婚しやすい環境というのは、個人の嗜好を除けば、先に述べた通り、結婚しにくい原因は社会システムの公平性劣化にあると考えられる

また、老人世帯の消費停滞の解決策として、安定的な社会保障制度が挙げられているが、私はこれについてはマイナンバー資産課税により子育て世代への再分配を挙げている

資産課税による再分配を挙げている趣旨は、我が国の年金制度は、既に少子化の進展や経済成長の停滞により、世代間格差がいかんともしがたい状況になっており、現行制度による調整では対応しきれなくなっているからである

年金制度における調整を超えた、再分配の導入による調整が必要との趣旨である

また、先に述べた通り、フルの共働きについては、政府が先導して推奨すべきかどうかは議論がある

消費停滞には効果があるが少子化には逆行するという見方もある

少子化への影響、育児の在りかた等、議論が必要であろう

現在の政府の少子化対策も保育所に片寄っている

保育所は、フルの共働きを増やす為には有効であろう

しかしフルの共働き以外の、パート世帯や専業主婦世帯の消費を増やし、出生率を上げることも重要である

それは保育所だけでは解決できない

それらの世帯の消費停滞解消や出生率向上の為には、国の財政が厳しい現状では、劣化した社会システムの公平性を回復することしか方法はない

教授も指摘の通り、家族の衰退という形も通しながら、社会システムの公平性劣化は、地価高騰、塾依存教育による弊害、年金等世代間格差、非正規賃金格差という面から、作用している

それらは、潜在的窮乏を少子化で帳尻合わせさせ、機会の公平性劣化のリスク感をもたらし、将来不安を形成し、消費停滞を促している

消費停滞について、日銀の議論ばかりしても意味がないということは累次述べている

その点で今回、教授が家族衰退という観点から消費停滞を取り上げられたのは適切である

このような観点からの議論を行うことが、消費停滞、引いては、少子化の解決に繋がると思われる