『 脆弱なディフェンス 』


君が襲ったように見えて

随分と前からわたしは

脱ぎはじめていた

ひとつ ひとつ

傍輩を裏切るように


やっと君が攻めてきた

あの瞬間には もう

目も当てられぬほど

脆く、弱い、



君はもらった

もう私のもの



え 言っちゃだめ?

もう 時効だろ



あの日


君の段階としては まだ

探り、探りだったはず


ほんとはたぶん

私が先に

君を好きになってた



あなたのは のめないわ



【 娘のはなし 】


“ひかりと空が 付き合いはじめた”

“ひかりと空が 別れたらしい”


なんて詩的なの

それより、いい名前ね



あなたのストイックなところを

めちゃくちゃにしてみたい


そんなに鍛えて

そんなに詰め込んで

ね どうするつもり


見てないわ 

そんなとこ


お腹の脂肪なら可愛いから


醜く早く馬鹿みたいに

わたしに狂って



【 ficthion 】


水槽が にごっていたの

濃い緑色だった


MDプレーヤーが再生中で

赤い方はダビング中だった


幾何学的な模様って辞書を引くと

やかんの笛が鳴った


遠くでは

タイプライターの音がしていて


朝に似た 水曜の午後だった



ギャップでしょ

沼ってきたの?

かわいそうに



【 佐藤リーダー 】


全館空調が切れて

汗だくで残業をしていたら

なぜか

ナカノッチを思い出したの


書いてもいい?


身体が極度に疲れると

反動で襲ってくる

あの衝動のこと


もう時効だし

もう怒ってもないでしょ


サトリーとは

ほんとに なんにもなかったの



そんなことってあるの


想い出が

想い出を

忘れさせてくれるなんて


馬鹿みたいって思いながら

頼んでもいないのに

20年前の白い断片が

仮のピースを塞ぎはじめた


ねぇコタ

そろそろ後書き


書いてみようと、思ってる