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有休、いただいちゃいました。



丸一日はほんとに、久しぶり。

ずっとずっと休みなく、働き続けてきたから。


当初春に予定されていた林間学校は感染症の流行で秋に変更となり、帳の小学校の最後のイベントとなってしまった。


朝、大きなボストンバックを抱えて行く帳を校門まで見送りたかったし、仕事と中受のサポートで、私は少しだけ疲れていたのかもしれない。



「帳も息抜きだね、楽しんできなね」

「うぃ」


絶対ひとつは忘れ物をしていそうな寝癖坊主(ねぐせぼうず)を見送ったあと。


私は、クルンとターンして、子供みたいに、今にもスキップをしそうな気持ちで足を前に踏み出した。いつもとは逆方向の家へ、いつもと違ってゆっくりとした足取りで、戻る事ができるのだから。


たぶんその嬉しさは、“今日だけは家でも仕事はしない”と決めていたから。



思い切って休んだ金曜日は、何だか空気がキラキラしていた。


(専業主婦ってこんな感じなのかな。…なんて)


いつもと違う風に陽がさすリビングの光景は、いつまでも見ていたいほど爽やかでまっすぐで、とても綺麗だった。



最低限、だった家の中を、お昼を食べるのも忘れ、黙々と掃除した。


掃き出し窓の桟を濡らした穴開き靴下でキュッと仕上げた後、やっと顔を上げると黒いデジタル時計の数字がちょうど14:00で白から赤に光りだしたところだった。



ぎゃーと小さく独り言を言いながら、真っ黒になった手を洗い、そのままシャワーを浴びて台所で立ったままスコーンを齧(かじ)った。



スコーンのカケラを見て、ふと思い立ったのがまたB型のだめなところだよね。


私はそのまま首にグリーンのエプロンを引っ掛けて、秤と小麦粉とボウルを取り出すとクッキーを作り始めてしまう。紅茶じゃなく、アイシングでもなく、うーん、ミックスナッツ入れちゃえ。


自分だけの為のクッキーが焼き上がるまで、リビングで音楽を再生し、足のネイルを塗り直していると足首に当たるサワサワとしたそれがやっと乾いてきたことに気づいて手首のゴムでハーフアップをした。




ピンポーン…


玄関のチャイムが鳴った。



多分、16:30くらいで、


たぶん、クッキーが焼き上がった。


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