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本当にあの日が、最初で最後になった。
セックスは一度きりだったけれど、洸太と私は、やはり家と時間の死角で時折隠れて浅いキスや深いキスをしてその欲望を塞ぎあった。
違う。
理性を塞ぎあっていた。
その時毎回決まって千手観音(せんじゅかんのん)コタの掌が前から後ろから色んな手法で、色んな手段で、私の少しだけ膨らんだ部分やその三十センチ下辺りを確認する為にヌッと降臨するので、私はちゃんとその腕に爪を立てて罰(バチ)を与えたし、数回だけどその逆もあった。
「帰れなくなるから」と大袈裟に両手で下肢の間を押さえたのはとても可愛かった。
未来のない私たちにとって、このひとときは限りなく限りある未来だった。
その浅い欲望の「瞬間」にしか、私たちの「未来」など存在しなかったのだ。
逆を言えば、
決して溺れることはなかった。
正直、もう一度くらいはあるのかなって、あの季節外れの秋のオルレアが小雨に踏まれた夕方、私も、それから多分、コタも思っていた。
だけど私達はそれ以上に真面目で、
その一億倍、帳(とばり)の未来を愛していた。
鏡に時折映る見覚えのない「女」に毎日ビンタをするように、過去問を添削して、点数に泣いたり、泣いたり、泣いたりした。
そして、冬を、迎えた。
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